『愛について』



  愛について考えてみた。
  恋とは違う、ほの暗い欲望の源流。
  相手を欲し、征服せんとする熱い熱い生命の滾り。
  深く静かなよどみの淵で、シュウシュウと音を立てて熱煙を吹き上げながら、ソイツは、獲物が罠にかかる瞬間を今か今かと待ち構えている。
  もしも、罠にかかった獲物がいるとするならば。
  それはきっと、憐れむべき存在の、生命力に満ち溢れた真の野生の獣なのだろう。



  恋について考えてみた。
  甘く、切なくて……指先まで痺れるような恋を、してみたい。アイツのにおいをかいだだけで、眩暈がしてくる。そんな、幸せな恋…が、始まるのを待っている。
  ──そう、待っている。
  自分から行動を起こすのが怖くて、俺は、待っている。
  アイツのぎらついた眼差しが、俺を捕える瞬間を。
  その瞬間がやってきたら、俺はただ受け入れるまで。自分勝手な想いを昇華させるための手段として、アイツの言うがままに我が身を与えてやろう。
  ああ、そうだ。骨の髄まで俺は、アイツに恋している。
  愚かでケツの青い小僧のような、一途で未熟な気持ちを持っている。
  だとしても、構うものか。
  アイツもきっと、俺と同じ気持ちを胸に秘めているはずだから。



  胸の内の秘密を、曝け出す瞬間を待ち望んでいる。
  誰に?
  俺は、誰に、この秘密を伝えたい?
  何を、伝えようとしている?
  溜息を吐いて、愛について考えてみる。
  心から欲しいと思える相手がいることに感謝して、今日も一人、眠りにつく……。






END
(2007.6.6)



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