『なりゆき☆まかせ 1』



  格納庫の片隅で、ゾロはルフィを抱いていた。
  筋肉質な体躯の男を抱くのも悪くはない。華奢なサンジと違い、ルフィの体格はがっしりとしている。決して大柄というわけではないのだが、何よりも骨格がいい。均整の取れた肉の付き具合。上腕や腹についた他人の筋肉が、自分の筋肉よりも柔らかく感じるのは何故だろう。
  ごつごつとしたゾロの指がルフィの肌を滑り、また駆け上がっていく。
「ぁ……はぁ……っ……」
  胸の淡い飾りに口付けられ、ルフィは背をしならせた。
「なんだ、もう息が上がってきたのか?」
  口元に淡い笑みを浮かべながらゾロが尋ねるのに、ルフィは頬を膨らませて返した。
「ばっ……ち、違うぞ、これはだな、その……」
  しどろもどろになりながらあれこれと言い訳を考えるルフィの髪をくしゃり、としてからゾロは、口元に口吻を落とす。
「もういっぺん挿れてやるよ」
  そう言うが早いか、ゾロはルフィの後孔にするりと指を這わせる。ルフィの穴の入り口が恥ずかしそうにきゅっ、と収縮を繰り返した。
「あぁ……っ!」
  身を捩ろうとすると、入り口の部分からルフィの中に取り残されたゾロの精液が溢れ出そうとする。それを知りながらゾロは、骨張った太い指をぐい、とルフィの中へ捻り込んだ。
「いっ……て……」
  ずるり、と中に入り込んだ指が、内壁を擦り上げる。前立腺の裏側を優しく圧迫され、それだけでルフィの股間はいきり立ち、だらだらと白濁した体液を溢れさせる。
「早く……ゾロ、早く……」
  熱に浮かされたようにルフィが口走る。
  ゾロは指を引き抜くと、ゆっくりと腰を押し進めた。
  これが何度目の挿入になるのか、二人ともすっかりわからなくなってしまっている。
  二人は、貪るようにただ抱き合った。



「あー、腹減ったなぁ……」
  呟きと共に、ルフィの腹の虫が盛大に鳴った。
  そう言えば、と、ゾロも裸の腹に手をあててみる。確かに、空腹感を感じる。
  あかり取りの小窓から外を見遣ると、いつの間にか太陽が水平線に沈み始めていた。
  昼過ぎに二人が格納庫にしけ込んでから、少なくとも三時間は経っているようだ。
「そろそろメシの時間かもしれないな」
  ゾロは相槌を打つと、床の上に脱ぎ捨ててあった衣服を着込んで身支度を整えた。
「おい、ルフィ。お前もさっさと服着ろ。メシ食いに行くぞ」
  外の様子からすると、サンジがすでに夕飯の支度を始めているはずだ。うまくいったらつまみ食いをさせてもらえるかもしれない。駄目だと言われたら、その時はその時だ。ルフィと二人がかりなら、一口か二口分ぐらいなら何とかちょろまかすこともできるだろう──そんなことを考えながら、ゾロは格納庫を後にする。
  慌てて服を着たルフィが、後に続く。
  階段を上がっていくと、肉の香ばしいかおりが漂ってきた。
「お、肉のにおいだ!」
  背後のルフィが、涎を垂らさんばかりの勢いで呟く。
  二人してラウンジのドアを開けると、食べ物の濃厚なにおいが部屋には充満していた。
「メシだ、メシ!」
  そう叫んだと思うや否や、ルフィはテーブルに飛びついていた。
「食ってもいひだろ、ハンジ!」
  食べ物を口いっぱいに頬張ったルフィがもごもごとくぐもった声で尋ねる。
  振り返ったサンジは、眉をひそめてルフィと、それからたった今ドアを潜ってラウンジに入ってきたゾロとを順繰りに見遣った。視線はしばらく、二人の上を行きつ戻りつした。口には出さず、しかし不機嫌な表情で最後にサンジは、ゾロをぎろりと睨み付けた。
「俺も何かつまませてくれ」
  そう言ってゾロが席に着こうとした瞬間、鋭いサンジの一言が飛んだ。
「クソマリモ。てめぇはメシの時間までお預けだ。ツマミなら、もう食ってきたんじゃないのか?」



  一瞬、二人の視線が空中でねっとりと絡まり合った。
「あ? どういうことなんだ、それは」
  さも気に入らないといった様子でゾロが低く唸ると、サンジもそれに合わせて声のトーンを落として返した。
「お前らが今まで、どこで何をしていたかぐらい、こちとら既にお見通しなんだよ」
  そう言うとサンジは、忌々しそうにチッ、と舌打ちをした。
「──…ザーメンのにおいがしてるぞ、お前ら」
  その言葉でゾロは、慌てて自分の肩口をにおってみた。わからない。汗っぽいだけのような気もするが、そんなにおいがしているのだろうか。怪訝そうにサンジを見ると、彼はあまりいい顔をしていない。
「とにかく、ナミさんたちが来るよりも先に、シャワー使ってこい。そんなんじゃ、あっという間にバレちまうぞ」
  渋々ながらも頷くと、ゾロはラウンジを出る。サンジに言われた通り、シャワーを使って汗を流すことにした。女はしつこい。バレたところでゾロは一向に構わなかったのだが、ナミにうるさく詮索されるのだけはご免だった。



  シャワーで軽く汗を流してラウンジに戻ると、既に全員が揃っていた。
「何やってんだ。遅いぞ、ゾロ」
  ウソップが冗談交じりに声をかけてくる。
「ああ、ちょっとな」
  軽く肩を竦めてゾロは返した。
  ルフィはいまだにがっついている。いつも以上の勢いで食べているから、よほど腹が減っていたのだろう。
  ちらりとサンジのほうへ視線を馳せると、意味深な眼差しでじっとこちらを見つめていた。ぎょっとして顔をしかめると、サンジは口元の動きだけで「合格」と呟いた。
  何が「合格」なんだとムッとしているところへ、スープが出された。
「ほら、さっさと食えよ、クソマリモ」
  言われなくとも食べるところだ。差し出された皿をひったくるようにして抱えると、ゾロはがつがつとスープを胃袋の中へ流し込み始めたのだった。






to be continued
(H15.10.30)



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