「はっ、ふ……ぁ」
  投げ出したサンジの足がカクカクとなっている。必死になって膝を立てようとするが、どうにも力が入らない。気付いたゾロは、サンジの股間で緩慢な動きをしていた手を止めた。
「あっ、やめるな……んんっ」
  言った瞬間、サンジの膝の裏側に腕を通したゾロの手が再び高ぶりをぎゅっ、と握った。
「やめねぇよ。だけど、このほうが……な？」
  そう言ってゾロは、肘にひっかけたサンジの足を揺さぶりながらペニスを扱きだした。胸を這う手はこりこりとした感触を楽しんでいるのか、執拗なほどに先端の突起を擦り上げる。
「あっ……はっ、はっ……」
  追い上げられる感覚に、サンジの神経は今にも焼け切れそうだ。
  身体中どこもかしこも敏感すぎるほどで、耳や肩にかかるゾロの吐息にすら、反応してしまいそうになる。
  ゾロの手の中でサンジのペニスは白濁した液をとめどなく溢れさせている。先端の括れを指の腹で擦り上げられ、ついで溝の部分に爪を立てられると、あっけなくサンジは果ててしまった。
  溢れ出した精液の生臭いにおいの中で、サンジは物足りなさを感じている。これだけでは、足りない。前だけでは。
  突然、耳元でゾロが低く呻くのが聞こえた。
  朦朧としかかった意識の中ではあったが、サンジの後ろはそれだけでゾロの声に反応する。
「はっ、ああ……」
  サンジの中を突き上げてくる感覚が強くなった。
  内臓が迫り上がりそうになるほど、ゾロは強く突き上げた。サンジの胸をいじっていた手はいつのまにか尻の肉を掴んでおり、激しく揺さぶっている。
「ああっ、あ、はぁ……」
  尻の筋肉が強張ってしまったかのように、ゾロを締め付けている。自分では力の加減をすることも出来ず、ゾロに抱えられたまま、好き勝手に揺さぶられるだけだ。
「キス、しろよ……」
  何とか言葉を繋げてサンジは言った。
  苦しい体勢で振り返り、ゾロの唇に噛みついていく。
  ドクン、と。
  身体の奥深いところで、ゾロが弾けた。



  目が覚めると、すぐ目の前にゾロの顔があった。
  あまり表情のないゾロの顔が心配そうにサンジを覗き込んでいる。
「──…血が……」
  そう言ってサンジは、ゾロの口元に指を這わせた。
  おそらく最後にキスしたあの時に、できたものだろう。
「あ？」
  怪訝そうにゾロは拳でごしごしと口元を拭った。
「いてぇ」
  にやりと笑い、それから床に転がるサンジへと視線を落とした。二人とも、まだ裸のままだ。どうせ今夜は二人だけなのだから、しばらくこのままでいても構わないだろうと、ゾロはそんな風に思っている。
「キス、しろよ」
  掠れた声で、サンジは言った。
  散々声をあげたおかげで、喉が痛い。
  ゾロの顔がそっと寄せられて、サンジの唇を優しくついばんだ。
「キス、好きか？」
  低く尋ねられ、サンジは目だけで笑って返した。
  キスは、好きだ。
  ゾロとするキスは、サンジの心をあたたかくする。身体中が火照りだし、その後に訪れるものを考えるとゾクゾクすることもある。
  だけど、いちばんは……。
「オマエが好きだからキスしたいんだよ」
  そう返すとサンジは、ゾロの頭をぎゅっと抱え込んだ。
「おいっ、あぶねぇって。ひっくり返ったらどうすんだよ！」
  言いながらもゾロは、床に手をついてサンジのしたいようにさせている。
  それから。
  二人は裸のままでじゃれ合い、遅い時間までキスを交わし合った。
  太陽が水平線の向こうに沈み、星々が暗闇を照らすようになるころまで。



  暗くなってから二人は軽い夕食をとった。
  それから今度はシャワールームでじゃれ合い、抱き合った。
  誰にも邪魔されず、誰にも気兼することなく。
  ゾロの唇の端の傷は乾いてかさぶたになりかけていたが、それでもサンジの身体中余すことなくキスをしてくれた。
  キスの後は、やはり再び格納庫で組んず解れつ抱き合った。
  これだけ抱き合えばしばらくは枯れてしまって使い物にならないのではないかと思うほどだったが、結局、ゾロは何も言わずにサンジのしたいようにさせてやった。
  サンジが疲れ果てて先に寝入ってしまうのを見届けてからゾロは、さらさらとした金髪に唇を寄せた。
  今日、最後のキスだ。



「──なあ、キス、好きか？」