『ひとつ、オトナに 1』



「ん……んっ、ぅ……」
  優しく腰を揺さぶられ、サンジはつい、声を洩らしてしまった。
  焦らすようなゾロの動きに、噛み締めた唇の端からつい声が洩れてしまう。甘く痺れるような感覚がサンジの下腹部を支配し、身体中へと広がっていく。
  身体を捩ると、その拍子にチャプン、と浴槽の湯が跳ねた。
  ホテルのバスルームは広くて、豪華で、つい開放的な気分になってしまう。
「はっ……ああ……!」
  声をあげた瞬間、慌ててゾロの顔を覗き込むと、口元だけでにやりと笑って返された。
  鮮やかな蒼に彩られた湯は、入浴剤の色だ。ほんの数時間前、ナミとロビンの二人から手渡された。ロビンは、誕生日のプレゼントだと言っていた。
  今日が自分の誕生日だということは自覚していたが、まさか彼女たち二人からプレゼントをもらうだろうとは思っていなかった。せいぜい、船の上でいつもより数倍豪華な料理を食べて、飲んで、騒いでおしまいだと思っていた。航海の状況によっては、そうのんびりと構えていることのできないこともあるから、皆で騒ぐことができればそれで充分だと、そんな風にサンジは思っていたのだ。
「クソ熱ちぃ……」
  気怠く呟いたが、ゾロが離してくれる気配は微塵もない。背後から抱きしめられるような格好でサンジは、ゾロの膝に乗り上げている。湯の熱さよりも、身体の中に入り込んだゾロの熱さで今にものぼせてしまいそうだ。
「せっかくもらったプレゼントなんだ。有効活用してやれよ」
  耳元で、からかうようにゾロが囁く。
  それも一理あると、サンジはゾロの腕にしがみついた。



  湯船の中で、サンジは焦れったそうに声を洩らした。
  今すぐにでもイきたいのに、なかなかゾロは終わりにしてくれない。ゆるゆるとしたゾロの愛撫は、サンジの神経をより鋭敏にしていく。
  胸の突起を摘み上げられただけで、股間の高ぶりをやんわりと扱かれただけで、それだけでサンジの足はカクカクとなってしまう。
  浮力で不安定な体勢を立て直そうとすると、身体のあちこちに余計な力が入り、結果、身体の中に入り込んだゾロをいっそう締め付けることになってしまう。
  悪くはない。
  こういう時間も、たまにはいいものだ。
  恋人……と呼べるかどうかはわからないが、身体の関係があって、そこそこ互いのことを解り合えている二人が同じ時間を過ごす。こんな風にゆったりと、誰かの目を気にすることもなく、心ゆくまで抱き合って。
  確かに、悪くはない。
  しかしそれよりも何よりも、目の前の肉欲だけに集中したいとサンジは思っていた。
  せっかくの誕生日。運良く陸に上がることもできたし、ナミが特別にホテルをとってもくれた。ゴーイング・メリー号の仲間たちは同じホテルのどこかの部屋にいるはずだが、それぞれ好き勝手に久しぶりの陸の生活を堪能しているはずだ。もちろんサンジも、自分の誕生日を心ゆくまで堪能するつもりだ。せっかくゾロと同じ部屋で過ごすことができるのだから、少しでも長く楽しまなければ。
  はぁ、と息を吐き出すと、ゾロの胸に背を預けた。
  手を、自らの股間へ滑らせると、サンジは勃起した自分のものを扱き始める。
  湯の中で陰毛がゆらゆらと漂って、サンジの色白の腕に触れた。



  背後からの愛撫は、いつも以上に物足りない。
  ゆっくりと追い上げられることで焦れてしまったサンジの身体は、急速的な疼きを感じていた。
  壊れるほど強く抱かれたい。激しく揺さぶられ、泣いても喚いても離してはもらえない。そんな荒々しい抱かれ方でイかされたいと、そうサンジは思った。
  自分のペニスを擦り上げながらもサンジは、ゾロの唇がうなじや耳たぶを甘噛みしてくるのを感じている。
「…はっ……ぁ……」
  浴槽の縁に掴まると、サンジは膝立ちになってゾロから離れた。サンジの中に入り込んでいたものが抜け出て、勢いよくブルン、と震える。
「どうした?」
  ゾロの声にサンジが振り返る。
  潤んだ蒼い瞳が、じっとゾロを見つめる。上気したサンジの目元はやけにエロティックで、ゾロはごくりと唾を飲み込んだ。
「もっと……強く突けよ、クソヤロウ」



  浴槽の縁に掴まったサンジは、後ろからゾロに突き上げられた。
  湯が大きく跳ねて、床へと零れ落ちる。
  熱いのは湯の中だからか、それとも日頃から高いゾロの体温のせいなのだろうか。サンジは突き上げられながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
「は……ぅあっ……」
  不意に、前をぎゅっ、と握り締められた。ごつごつとした大きなゾロの手がサンジの竿を手のひらに包み込み、強く締め付けるようにして扱き始める。
「はっ、あ、あぁ……」
  サンジの腕がカクカクとなった。浴槽の縁を掴む指に力を込めると、身体全体でしがみつく。そうしなければ、湯の中に沈んでしまいそうだ。腰が、ゾロのほうへといっそう突き出される格好になった。
「まだ足りないか?」
  ぐい、と突き上げながら、ゾロが尋ねる。
  サンジの身体の奥深くを抉り上げたゾロのペニスは、とても熱い。大きく抜き差しされると、結合部から湯が入ってきてさらに身体の中が熱くなるような気がする。いつも以上にサンジが反応しているのは、腹の中に入り込み、いつの間にか満ちてしまった湯のせいだ。
「あっ、あ……──」
  ゾロの言葉に返事をすることもできず、サンジは翻弄されている。   少し前からサンジの頭の中では、白く眩しい火花が飛び散るような感覚がしていた。こめかみがズキズキと痛み、しかしそれは不快感ではなく、どちらかというと何かに期待をしているような感じで。
  ゾロの動きに合わせてサンジが大きく腰を動かすと、二人はより深く繋がった。
  二人の荒い息遣いと、湯の跳ねる音だけがバスルームに反響する。
「もっと……」
  掠れたサンジの声が、ゾロの耳に届いた。






END
(H16.2.22)



ZS ROOM