『Wild Doll 1』



  もう、何日も身体を繋げていない。
  欲求不満になりそうだと思ったのはサンジのほうだ。
  半月ほど前に一度、物資の補給に寄った港でセックスをする機会があった。あの時は時間も場所もなくて、たまたま目に付いた酒場の裏にあった汚らしいトイレでこっそりと、セックスをした。立ったままするのは初めてだった。その後、しばらくの間、なかなか気持ちが合わず、互いにじりじりとしながらも様子を窺っているといった状態が続いている。
  今も、そうだ。
  買い出しの荷物を腕に抱えたサンジは、少し遅れて歩くゾロの様子をこそこそと窺っている。
  それは、溜まりに溜まった欲求不満をどう解消しようかと、手ぐすね引いて待ち構えているようなものだった。



  リゾー島での二度目の買い出しでサンジは、大衆食堂に入るふりをしてその裏手にあった木賃宿にゾロと二人でしけこんだ。
  平屋の入り口を潜り、受付で気前よくチップをはずんでやる。廊下の向こうに見えるドアのそこここで、微かな人の気配がしていた。
  突き当たりの奥の部屋に入る。ドアが閉まるよりも早く、サンジはゾロの首にしがみつき、唇を合わせていた。
「買い出しの途中だぞ?」
  放り出された煙草の箱が床に散乱しているのを見て、ゾロはわずかに渋い顔をした。普段は年相応に落ち着いているサンジが、やけに焦っているように見えるのは気のせいだろうか。
「……るせっ。てめぇは黙って俺の言うことを聞いてりゃいいんだよ」
  そう言うが早いか、サンジの口唇が再び、ゾロの唇を塞ぎにかかる。
  部屋の入り口あたりでしばらくそうやって口づけを交わし、互いの身体に腕を回していた。それからどちらからともなく相手の服を脱がせはじめる。
  結局のところ、ゾロも欲求不満に陥っていたのかもしれない。
  どうやらセックスのない期間が少々、長すぎたようだ。



  ベッドの上に、もつれ合ったまま倒れこむ。
  ぎし、とベッドが軋む音にサンジはぞくりと身を震わせた。
  ゾロの筋肉質な身体に、サンジのほっそりとした肢体が絡みつく。
  どれほど自分が餓えていたのか、今になってやっとわかった。ゾロの身体に指先が触れた瞬間、サンジの腹の奥から熱いものが早々とこみ上げてきた。まだ直接、触れられてもいないペニスの先端に先走りの液がじわりと滲み出す。
「あっ……は…ぁ……」
  ざらりとする舌と熱い吐息が、サンジの乳首を嬲っている。舐めあげられ、甘噛みされるたびにサンジの身体はビクン、ビクンと痙攣のように引きつり、しなり、身体の奥で渦巻く波を何度もやり過ごさなければならなかった。
「……見ろよ」
  掠れた声で、サンジが低く呟く。
「ほら、もうこんなにドロドロなんだ……」
  自分で自分のものを扱きながら、サンジは告げた。竿を包む白い手が上下するたびに、くちゅくちゅという湿った音がゾロの耳にも届いてくる。大きく広げた足はすらりと伸びて、時折、爪先が苦しそうにシーツを蹴っていた。
  ゾロはじっと、そんなサンジの様子を眺めていた。自らの股間もいつの間にか固くなり、勃ち上がりかけているというのに、それでもゾロはサンジの痴態を凝視している。
「っ……早く……」
  白く細い指を、サンジはゾロのほうへとさしのべる。
  泳ぐようにひらひらと指が舞い、ゾロの節くれ立った手がしっかりとそれを捕らえ、握りしめた。



「ぁ……あ、あ……」
  指の関節を執拗にねぶられると、それだけでサンジのペニスはだらだらと白濁した精液を溢れさせた。ざらりとした舌が、指の股の肉を抉り取るかのように舐め上げる。大きく開かれたサンジの股の間では、ペニスがひくついていた。精液にまみれた竿を握りこんだゾロの指の腹が、亀頭の部分を小刻みに愛撫していく。
「はっ……ぁ……」
  不意にサンジは足を折り曲げ、胸につきそうなほど身体のほうへと腿を引き寄せた。
  ゾロの視界に、サンジの後孔が飛び込んでくる。
  流れ伝う精液でぐっしょりと濡れたサンジの後孔は、女の穴のように淫らに蠢き、ゾロを誘っている。
「……まだ、挿れるなよ」
  掠れた声が、動こうとしたゾロを押し止めた。
  ゾロはごくりと音を立てて、口の中に溜まっていた唾を飲み込んだ。
  折り曲げた足の間から、ゾロの指がゆっくりと菊門を撫でるのが映った。
  後ろへ垂れたサンジ自身の精液が潤滑油となり、後孔はゾロの指をするすると内側へと飲み込んでいく。蠢き、自ら中へ、中へと誘おうとしているかのようだ。太く節くれ立った指は、サンジの後ろを犯している。くちゅくちゅと卑猥な音を立てて、狭い穴を出入りしている。
  ゾロは、自分の股間が痛いほど張り詰めていることに気がついた。
  そっと唇をサンジの尻に寄せ、後孔ごと舐め上げる。ざらり、と舌が動く。ピリリと青苦い味が口の中に広がった。滴り落ちたサンジの精液の味だ。
「ん……」
  ちゅぅ、と音がした。ゾロの舌が、挿入された指の隙間から中へと潜り込み、内壁を刺激しだす。
「あああぁ!」
  慌ててサンジが下肢に力を込めると、知らず知らずのうちにきゅっ、と穴が閉まる。ゾロの指が舌と共に食いちぎられそうな勢いで締め付けられ、狭い穴がいっそう狭く、動きにくくなった。
「おい、力抜けよ」
  慌てて舌を引きずり出してそう言うと、ゾロは、サンジの陰毛をふーっ、と軽く吹いた。精液にまみれた縮れ毛が怠そうにのそりと揺らぐ。
「まだ、挿れて欲しくはねぇんだろ?」
  にやりと口の端を歪め、ゾロが笑った。



  ぐちゅぐちゅと湿った音がしている。
  何度か、ゾロの手でイかされた。自分の腹に、胸に、口に垂れ落ちる精液が、快感とも不快感ともとれる奇妙な感覚をもたらしている。
  サンジはちらりとゾロの顔を見遣ると、舌なめずりをした。
「まだ……挿れたくはならねぇのかよ、あ?」
  苦しい体勢の下、サンジは何とか声を出し、そう尋ねかけた。
  ゾロのペニスもまた、だいぶん前から天を向いており、だらだらと先走りの液を溢れさせている。今日はまだ一度もイってはいないゾロの表情にはどことなく余裕がなく、苦しそうに見えないでもない。
「ああ? もう、降参か?」
  と、口の端を引きつり上げて、ゾロ。強がっているのか、サンジの後孔に潜り込ませた指を焦れったそうにぐりぐりと動かしながら、彼は言った。
  欲情して掠れた声が、サンジの耳に艶めいて響く──。






to be continued
(H16.7.4)



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