畳の上に着ていたものをはらりと脱ぎ捨てると女審神者は褥に四つん這いになった。
すぐに男の逞しい体が覆い被さってきて、肌と肌とが密着する。
「もう、濡れてるね」
耳元で低く燭台切が囁く。
女審神者が小さく頷くと、了承の印と受け取ったのか、いきなり蜜壷にズプリと男の竿が突き立てられた。
「んっ……ぁ……」
一瞬、反射的に抵抗しそうになったものの、燭台切の硬く逞しいものが中を擦りあげていく感触に、女審神者は小さく腰を揺らしていた。
彼が初めての男ではないことは、燭台切も知っている。これまでは、そんなことは気にしない、自分には関係のないことだと言ってくれていたが、本当にそうなのだろうか。疑心暗鬼のまま抱かれてしまうのは少し怖いような気がすると、女審神者は自分の褥に忍び込んできた燭台切にそう告げた。燭台切は自分たちの気持ちこそが大事なのだと言ってくれたが、果たして本当にそうなのだろうか。
ちらりと背後を振り返ると、神妙な顔つきの燭台切が腰を打ち付けてきているところだった。 「あっ……ぁ……」
男の動きに合わせて女審神者が腰を動かすと、焦れたように腹の中の竿が大きく膨らんで、根本までぐい、と突き入れられた。パン、と音が響き、腰骨がぶつかる。
衝撃で女審神者が上体を褥に沈み込ますと、燭台切の手がほっそりとした腰を掴んできた。
ぐい、と引き寄せられ、高く腰を掲げされられたかと思うと、激しい抽送が始まった。
壊れそうなぐらいに強く突かれ、そうかと思うと先端が抜け落ちそうなほど勢いよく引きずり出され、中の襞は男の熱で熔けてしまいそうなほどだった。
女審神者の口からはひっきりなしに矯声があがり、唇の端からは涎が滴った。
「主……僕が、君の初めてだったなら……」
掠れて上擦った燭台切の声が、女審神者の耳に響く。
「光忠さん……」
褥にしがみついたまま女審神者は小さく男の名を呼んだ。
やはり燭台切は、女審神者に生娘であることを望んでいたのだろう。
喉の奥で低く呻くと女審神者は大きく息を吐いた。
互いに望んで肌を合わせたはずだが、やはり生娘ではないという事実が燭台切を失望させたのだろう。
「やっぱり……」
もう、やめましょう。そう言いかけた瞬間、男の手が女審神者の腕を掴み、ぐい、と体を引き起こした。急に体勢を変えられたことで、女の蜜壷がきゅう、と中の竿を締め付ける。
背後で燭台切が呻くように囁いた。
「違うよ、主。僕は君の初めてを奪った男に嫉妬しているだけだ」
そう言うと燭台切は、激しく女審神者の蜜壷を下から突き上げ始めた。
乱れた褥の上で睦み合う二人の影が揺らいでいる。その様が淫靡に思えて、女審神者ははっ、と息を飲んだ。
「光忠さ……」
ああ、とか細い声をあげながら、女審神者は体を震わせた。
男の大きな手が前へと回り、両手で乳房を揉みしだく。時折、その手が止まると乳首をきゅっと捻ったり押し潰したりと忙しそうな動きを見せる。
「主……」
耳元でねっとりと囁かれ、女審神者は首を竦めた。逃げようとしつつも男の手に自身の手を重ねて、自らも腰を揺らしてみせる。そのうちに女審神者は両膝を立てて股を大きく開いた。爪先で褥をもどかしげに蹴ると、腹の奥が熱いものが込み上げてきて、蜜となって結合部から滴り落ちた。トロトロと溢れだす蜜のぬめりが、女審神者の白い股の間でてらてらと光っている。
「あっ、ぁ……光た、だ……」
もっと、と女審神者は何度もせがんだ。
背後の燭台切が首筋に唇を押し付けてきた。べろりと項を舐め上げられ、ついでちゅくっ、と音を立てて吸い上げられる。
緩慢な動きで互いに腰を揺らしながら、唇を合わせた。舌先で相手を誘い、唾液を交わし合うと甘露の味がした。
微かな笑みを浮かべ、燭台切りが告げた。
「主の中、ぐちょぐちょになっちゃったね」
一心に胸をまさぐっていた手をするりと下へ滑らせると、燭台切は女審神者の濃い陰毛を掻き分け、淡い緋色の陰核に触れてきた。
「んっ、ん……」
女審神者が身を捩ると、燭台切の指は陰核をやんわりと押し潰し、そのさらに奥の結合部へと触れてくる。
「ほら、びしょびしょだよ?」
言いながら男の指は、結合部から滴る女の蜜を掬い取った。その様子を見せつけるかのように主の目の前で指の腹で擦り合わせると、ねっちょりと蜜が糸を引く。
溜め息をつくように、燭台切は呟いた。
「いやらしい……」
言いながらも燭台切の腰はゆるゆると女審神者の蜜壷をかき混ぜている。
「こんなにもいやらしくて綺麗な蜜を見るのは、初めてだ」
女審神者は振り返り、男の頬を手の甲で撫でた。
「光忠さん……」
愛しい気持ちが込み上げてきて、その刹那、もっと激しく抱き合いたいと女審神者は思った。 自然と腹の中がきゅうぅっ、と収縮して、中に納めた燭台切の竿を締め付ける。
「中に……あなたの子種を、私の中に出してください……」
「……いっぱい出しても?」
女審神者の腹の中で燭台切の竿がふるっと震えたかと思うと、わずかに嵩を増した。
「いっぱ、い……ドロドロに……して……」
爪先で褥を蹴るようにして女審神者はのびあがった。華奢な手が燭台切の腕にしがみつく。
燭台切はほっそりとした女体を片腕で抱きしめ固定すると、もう一方の腕で白い太ももを抱えあげた。
女の体が浮き上がり、次いで張り詰めた剛直の上に落とされる。
「あっ、あぁ……っ!」
白い体がしなり、反射的に男の膝の上で跳ね上がる。
逞しい男の腕が女審神者の体を強く抱きしめ、思うままに揺さぶった。下から突かれるたびに、ぐちょぐちょと湿って泡立つような音が響いた。
「光忠さん……光忠さ……」
あふっ、と女審神者は喉を鳴らして男にしがみつき直す。
燭台切はさらに強い力で蜜壷をかき混ぜ、突き上げた。
互いの体に汗の粒が浮き上がり、甘ったるく淫靡なにおいがあたりには漂い広がっていく。
潤んだ瞳で女審神者が燭台切を見上げると、彼は愛しげに主の体を強く強く抱きしめた。
二人同時に高みへと駆け上がった後は、褥の上で裸で過ごした。
互いの体に腕を回して、時折、相手の頬や髪に何とはなしに触れては睦み合った。
幸せを感じながら共に時を過ごした。
身体中が穏やかな気持ちでいっぱいになり、満たされた気持ちに女審神者はほうっ、と息をつく。
男の頬に、そして右目の眼帯にそっと指を滑らし、その跡を唇で辿った。
燭台切は少し不安そうな笑みを浮かべた。
「満腹になったかい?」
そう尋ねられ、女審神者は恥ずかしそうに頬をほんのりと朱に染める。
それでも、愛しそうに男の瞳を真っ直ぐに覗き込むと彼女はにこりと笑った。
「今夜のところはもう充分。たいへん美味でした」
言いながらも女審神者は、そう遠くないうちにまたこの男と肌を合わせるだろうことを予感している。
「それじゃあ、次は…──」
燭台切の唇を指でそっと押さえると、女審神者は神妙な顔をする。
「次は、戦で誉を五つ取ったらね」
一瞬にして彼女は女の顔から女主の顔へと表情をかえたのだった。
(2015.12.12)
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