ゆっくりと呼吸をすると、優しい手が女審神者の背中を撫でてくる。
「大丈夫だ」
耳に心地のよい低い声で囁かれ、女審神者はほぅ、と息を吐く。
ゆっくり、ゆっくり……囁き声に合わせるように、女審神者は息を深く吸う。
「そうだ。うまいぞ」
また、声がかかった。
背中から肩甲骨を辿って肩口をなぞり、優しく大きな手は女審神者の胸へと下りてくる。
「あ、そこは……」
泣きそうになるのは、どうしてだろう。
女審神者は頭の隅で考える。怖いからだろうか。それとも、触れられるのが嫌だからだろうか。
「んあ?」
別の声が背後でした。
二人の刀剣男士に挟まれて、女審神者は戸惑うばかりだった。二人の男から求愛されるのも初めてなら、二人の男と肌を合わせるのも初めてで、どうしたらいいのかかわらない。
背後から肩に触れてくるのは、同田貫の唇だ。少しかさついており、触れられるたびに肌がチリチリと痛む。
正面から胸に触れてくるのは御手杵だった。柔らかな手と滑らかな舌が、女審神者の胸を弄りまわしてくる。
「ダメ……」
御手杵の肩口をやんわりと押し返すと、背後の同田貫が女審神者の耳の中へと舌を差し込んでくる。くちゅくちゅと水音が耳の中で大きく響き、女審神者は思わず肩を竦めて二人の男から与えられる快感から逃れようとしていた。
「おっと。逃がさねえぞ」
ぎゅっと抱き締められた途端に、女審神者の臀部に同田貫の昂りが押し付けられる。はっと息を飲んだ拍子に、正面の御手杵が乳首を痛いほどに吸い上げた。
「ん、あ、あぁ……っ」
ヒク、と喉を震わせ、女審神者は声を上げる。
二人から与えられる快感に、先程から体はもどかしいほどに火照っている。腹の底、子宮の奥のほうがきゅうきゅうとなって、この先の行為を待ち構えている。
「あんた、気持ちいいんだろ?」
女審神者の乳首をきゅっと摘まみ上げながら、御手杵が尋ねてくる。
女審神者はふるふると首を横に振ると、口を開いて否定の言葉を口にしようとする。
「……言えよ」
そう言って背後の同田貫が、またしても昂りを押し付けてくる。先走りで濡れた先端が女審神者の臀部をなぞり、ヌルヌルとした感触を残していく。
「やっ……」
はふっ、と女審神者は息を零す。
目尻に涙が滲み、男たちの姿がぼんやりと紗がかかったように見える。
二人のことは、仲間として好きだった。二人に対して好意を持ったのは、たぶんほぼ同時だったように思う。
好きになって、こっそりとくちづけを交わした時に女審神者は思ったのだ。一人ではなく、二人ともを手に入れたい、どちらの男も自分のものにしたい、と。
だから二人の男から同時に求愛されて嬉しかった。なのに、自ら望んでする行為のはずだというのに、どうしてこんなにも戸惑いを覚えるのだろう。
「御手杵……」
名前を呼ぶと、御手杵は顔を上げ、女審神者の唇に自身の唇で触れてきた。
焦れたように背後の同田貫が低く呻き、女審神者の胸に手を回した。乳房を下から揉みしだきながら時折、乳首をきゅっと摘まんだり引っ張ったりされると、女審神者の胸には痛みとも快感ともつかない感覚がじんじんと伝わってくる。
「ああ……」
甘い声が女審神者の唇からいくつも零れた。
体をくねらせ、二人の男によって与えられる快感をやり過ごそうとすると、さらに深くくちづけられる。
「んっ、ふ……」
くちゅ、と淫猥な音が響いた。
いつしか御手杵の指が女審神者の股の間に差し込まれていた。指先を小刻みに動かして、女審神者の陰唇の奥や陰核を何度もなぞっていく。
女審神者の腹の奥から濡れた感触が伝わってくると、御手杵が指を動かすたびに蜜壺からは透明な蜜が滴ってきた。
「あ、ん……っ」
くちゅ、とまた音が響く。今度は股の間からだった。
「や、ダメっ……!」
ヒク、と喉をひきつらせて女審神者が身を捩ろうとすると、すかさず同田貫の手がほっそりとした腰を掴んでくる。
「ダメじゃねえんだろ?」
言いながら同田貫は女審神者の腰を浮かしぎみにさせ、素早く股の間に昂りを押し込もうとした。
御手杵の手が女審神者の陰唇をくい、と広げ、同田貫の竿に手を添えてくるのが感じられる。 「やっ……やめて、御手杵!」
声を上げた女審神者が膝立ちになるのを待っていたかのように、やや強引に同田貫が竿を蜜壺に押し込んだ。
「あっ……あ、あ……!」
大きく背を反らして女審神者は声を上げた。
ズブズブと埋められた竿は硬くて熱かった。女審神者は正面の御手杵の胸にもたれかかると、肩口にしがみついた。
「あぁ……」
尻を同田貫のほうへと突き出した姿勢のままで、女審神者は蜜壺の中を硬い竿で何度もかき混ぜられた。
突き上げに合わせて腰を揺らすと、同田貫の竿が蜜壺のさらに奥のほうを擦り上げてくる。
その間にも御手杵の手が、女審神者の陰唇の少し上、小さな豆粒ほどの突起状の陰核を執拗に擦ってくる。指先でこりこりと引っ掻いたり、やんわりと押し潰したりされるとそのたびに、女審神者の体は快感にうち震え、新たな蜜を滴らせた。
「気持ちいいか?」
同田貫が耳元で囁きかけた。
女審神者はこくこくと首を縦に振り、何度も頷いた。
「じゃあ、俺も一緒に気持ちよくさせてくれよ」
反対側の耳朶を甘噛みしながら御手杵はそう言うと、女審神者の体を軽々と抱えて自分のほうへと向き直らせた。
女審神者の蜜壺に挿入されたままの同田貫の竿が、内壁をぐりん、と圧迫する。
「ひっ、ああっ……!」
まるで玩具のように易々と同田貫のほうへと向き直らされた女審神者は、今度は御手杵のほうへと尻を突き出すような格好を取らされた。
「綺麗な肌だなぁ」
感心したような声で御手杵が呟いた。するり、と腰のあたりを撫でられて女審神者はビクビクと体を小刻みに震わせる。御手杵の指先が腰から尻へと這い回り、ゆっくりと後孔の縁へと引っかけられる。
「御手、ぎ……」
女審神者の制止を振り切るかのように、御手杵は白い肌に優しくくちづけた。それから蜜壺から滴る蜜を指で掬うと丁寧に女審神者の後孔に塗り込めていく。
「ダメ、やめて……!」
これまでに何人かの人と付き合ったことはあったが、肌を重ねた相手は一人としていない。いつもそこに至るまでの間にこの人ではなかったと後悔するのが常だった。それなのに、初めての相手が二人だなんて自分はどうかしていると、女審神者は胸の内で思う。
御手杵の指が女審神者の後孔に中に潜り込み、クチュクチュと音を立てながら怯えて硬く閉じた蕾を解していく。
「違うだろ、主。あんたはこうなることを望んでいた。俺たち二人からこんなふうにして抱かれることを期待していたんだ。違うか?」
同田貫が尋ねてくる。
女審神者は「ああ……」と声を洩らした。
そうだ。心の奥底では自分は、二人とこうなることを望んでいた。女審神者は小さく喘いだ。 「同田、貫……」
同田貫の体にしがみつくと、背後の御手杵がゆっくりと竿を後孔に押し当ててきた。
「主……」
熱っぽい御手杵の声が耳のすぐそばで響き、ついで同田貫の唇が女審神者の唇を深く吸い上げる。
酩酊した時のようなふわふわとした感覚が女審神者の全身を包み込み、思考力を奪っていく。 「御手杵……」
声をかけると、御手杵の竿がぐい、と女審神者の後孔を深く貫いてきた。こんな質量のあるものを後孔に収めるのは生まれて初めてのことだ。異物感と痛みとに、女審神者はだらしなく口を開けたまま声をあげ続ける。
「ひっ、あ、あ……!」
ごりごりと女審神者の中を擦り上げるのは、同田貫と御手杵の竿だ。日本の硬い竿が内壁を圧迫し、薄い膜越しに擦れ合っては女審神者に痛みと快感とを与えてくる。
「苦、しっ……」
同田貫の胸にすがりついた女審神者は、涙で潤んだ目を見開いた。
「も、やだ……」
力の入らない手で同田貫の肩につかまろうとしたが、爪を立てただけだった。がりがりと皮膚を引っ掻いた手を同田貫は優しく掴むと、その指先に唇を押し当てた。
「もっと声を出せ、主。苦しいのも気持ちいいのも、三人一緒なら怖くはないだろう?」
尋ねられ、女審神者はコクコクと頷いた。
この痛みと圧迫感から助けてくれるのなら、何だって構わない。
ぎゅっと同田貫の体にしがみついて、かさついた唇に自身の唇を強く押し当てた。ゆらゆらと体が揺さぶられるのは、同田貫と御手杵の二人が交互に腰を押し付けてくるからだ。
二本の竿を蜜壺と後孔に一本ずつ咥え込んだ女審神者の体には、いつしか汗の粒が浮き上がっていた。
膜を挟んで擦れ合う二本の竿に翻弄され、女審神者は目を閉じた。
二人の男の吐息が、うなじや耳元にかかるのすら気持ちいい。
「……ん、ぁ」
女審神者の蜜壺と後孔が同時にきゅうぅ、と締まった。二度、三度と軽く痙攣を繰り返すと、体の中に潜り込んだ竿をきつく締め付ける。
小さく啜り泣きながら女審神者は呟いた。
「あ……やだ、イく……」
同田貫は息を荒げて笑った。
「いいぜ。イけよ」
背後の御手杵が女審神者の体を抱きしめてくる。
「一緒にイこう」
熱い吐息と共に耳の中に言葉を吹き込まれ、女審神者は大きく体を震わせながら達した。
すぐに同田貫と御手杵も達した。二人の精が女審神者の腹の中をたっぷりと濡らしていく。
「大好きよ、二人とも」
呂律の回らない掠れた声で女審神者は呟いた。
三人の汗と精液の匂いが混ざり合って、自分がたった今しでかした背徳的な行為のことが、女審神者の頭の中を駆け巡っていく。
それでも、自分が間違ったことをしているとは思えない。
女審神者は同田貫も御手杵も、どちらに対しても好意を抱いている。
「ずっと一緒にいてね」
女審神者がそう言うと、二人の男はそれぞれに彼女の体を力強く抱きしめてきた。
(2015.9.22)
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