焦らされ上手

  意識が戻ってくると、水無月は自分が温室の続き部屋となっている小部屋の作業台に横たわっていることに気が付いた。
  ひんやりとした天板の上で素っ裸の状態で荒縄で縛り上げられ、身動きすることもできない状態にされている。
  いったい誰が、と水無月は眉間に皺を寄せた。
  意識を失う直前まで自分は、温室で花々の世話をしていたはずだ。
  息子のアルナはいなかった。そうだ、今日はクラスメイトたちとの用事があるとかで、部活を休むと昨日から言っていた。
  だから水無月は一人で、花の世話をしていたのだ。
  そこへ体育教師の獅子がいつものように園芸用品を腕いっぱいに抱えてやってきた。先週、水無月が注文しておいた品物だということは、一目でわかった。
  それから二人でコーヒーを飲んで、軽く世間話をして……その後の記憶が朧気なことに気付いた水無月は背筋をぞくりと震わせる。
  確か、アルナのことを獅子先生と話していたような気がする。職員間でも公然の秘密となっているといったことを、二人で話していたはずだ。
  物思いから我に返ると、獅子の顔がすぐ目の前にあった。
「お目覚めですか、水無月先生」
  嬉しそうに獅子が声をかけてくる。
「獅子先生、これはいったいどういうことですか」
  静かに水無月は尋ねかけた。
  わずかに身動ぐだけで荒縄は水無月の肌のそこここに食い込んだ。ちりちりとした縄の感触が妙に心地よく感じられ、水無月はぎょっとした。
「さっき、水無月先生と話をしてて思ったんです。留学時代に息子を産んだって言うのなら、もう一度できますよね、水無月先生。俺の目の前でやってみせてください」
「やる、って……何を?」
  半ば笑いながら水無月が尋ねると、獅子は「嫌だなあ」と言って水無月の体をぐい、と抱え起こした。少し動いただけでも縄の縛り目が肉に食い込んできて、水無月は背筋をゾクゾクと這い上がる快感のようなものに気が付いた。
「……っ」
  気持ちいいのはどうしてだろう。裸にされて、縄で縛りあげられているというのに、どうして気持ちよく感じるのだろう。
  戸惑いながらも水無月は獅子の腕から逃れようと作業台の上で中腰になった。
  途端に、獅子のごつごつとした大きな手に腰を掴まれた。
「駄目ですよ、水無月先生。目の前で産んでもらいます。今から俺が観察してあげますから、上手に産んでくださいね」
  そう言ったかと思うと、獅子は自身のジャージのポケットから小さなチューブを取り出した。歯で蓋を開けると、中のゼリーをたらりと掌に零し、水無月の尻へと何度も擦り付ける。
「ぁ……」
  ぐちゅっ、と湿った音がして、獅子の骨ばった指が水無月の尻の穴に突き立てられた。縁の皮膚をぐにぐにとマッサージするようにして広げながら、ゆっくりと中へと指を押し込んでくる。
「ん、あ……」
  膝立ちになった足がかくかくとした。後ろ手に縛られ、今にも倒れそうな水無月を支えるように、獅子の手が身体を抱きしめた。
「辛いなら俺にもたれててください」
  耳元で獅子が囁き、ついでとばかりに水無月の耳たぶをぺろりと舐める。舌のねっとりとした熱さに、水無月は体を大きく震わせた。



  獅子の太い指で何度も中を擦られた。
  水無月は今や、尻だけでなく太腿までも潤滑用のゼリーでベタベタにしている。時折、ポタリ、ポタリと溶けたゼリーが作業台の上に滴り落ちる。
「このゴルフボールなら、水無月先生の中にも入りそうですね」
  ほら……と、掠れた声で呟くと獅子は、まるで水無月に見せ付けるかのように手にしたゴルフボールへと舌を這わせた。ジュルッと卑猥な音を立ててゴルフボールを充分に湿らせてから、水無月の後孔へとゴルフボールを近付けていく。
「あ、やめっ……獅子先生、やめましょう、こんなこと」
  慌てて身を捩ったが、獅子の逞しい胸板にいっそう強く抱きしめられるような格好になってしまった。
「大丈夫ですよ。ご子息を産んだ時の痛みに比べたら、これしきのサイズ」
  獅子の片手が水無月の尻の穴をぐい、と広げた。もう片方の手がゴルフボールを後孔に押し当て、窄まった部分を何度かなぞった。
「ゃ……」
  ブルッと水無月が体を震わす。
  窄まった襞の縁をたっぷりとなぞってから、ゴルフボールはくぷっ、と音を立てて水無月の中へと入ってきた。冷たくて硬い感触に自然と震えが走る。いっぱいいっぱいに広げられた襞がピリピリと痛んだが、それ以上の感覚が潜んでいることに水無月は気付いた。
「あ……あ、あ……」
  かくかくと膝が震える。縛られた腕が辛い。肌に食い込む結び目はあちこちに作られており、瘤になった部分が肌を擦ると疼くような痛みが快感となって水無月の体に跳ね返ってくる。
「やめ……獅子せん、せ……」
  たらりと、水無月の口の端から涎が零れる。
「今やめたら余計に辛いですよ」
  そう言って獅子は、時間をかけてゴルフボールを水無月の中へと収めきってしまう。
「どうですか、水無月先生? マンドレイクの種って、こんなもんなんでしょうか、大きさは」
  マンドレイクの種が自家受精可能な存在だということはかねてから獅子も知っていたが、実際に自家受精で出産した同朋にお目にかかるのは初めてだ。もっと歳を経ていればともかく、獅子は若い。どのようにして自家受精して出産するのか、知りたいと思ったのだ。
「ん……ん、ぅ……」
  獅子の胸に体を擦りつけてるうちに、水無月の性器がいつの間にか硬く張りつめていた。勃起した先端を獅子の腹のあたりに押し付けようとするたびに、縄が肌に食い込んで快感を誘う。トロンとした眼差しで水無月は、獅子を見つめた。
「も、助けて……獅子先生……助けて、くださ……」
  はあっ、と熱い吐息をついた水無月の肌は上気して、うっすらと赤らんでいた。荒縄に擦れて赤く色付いた部分と、淡いピンク色をした乳首とのコントラストが綺麗で、獅子は口の中にこみあげてきた唾をゴクリと飲み込んだ。
「中、気持ちいいですか? もっと大きなもので擦ってあげましょうか?」
  尋ねながら獅子は、下着ごとジャージのズボンを膝のあたりまでずりおろす。水無月の痴態を見ただけで昂っていたものを掴みだすと、二、三度軽く扱いただけで目の前の男の尻に押し当てる。
「ゴルフボールで、もっと奥のほうを突いてあげますね、水無月先生」
  焦らすように、ゆっくりと獅子のペニスが水無月の中へ押し込まれた。
  先に中に収められたゴルフボールが、獅子の性器に押されて水無月の腹の中を奥へと移動していく。
「やっ……やめっ……!」
  くぷっ、と湿った音を立てながら、獅子が性器を引きずり出す。そうすると何か物足りない感じがして、水無月の後孔はヒクヒクと収縮を繰り返す。中のほうで内壁が蠕動を繰り返すと、腹の中のゴルフボールはさらに奥へ潜り込もうとする。
「も、取って……取ってください、ゴルフボール」
  自由にならない手が、ひどくもどかしかった。
  水無月は獅子の胸ににもたれかかると、懇願した。
「お願いです、獅子先生……」



  水無月の身体を支えていた水無月の手が、不意に離れた。
  作業台の上で、荒縄で後ろ手に縛られた水無月は膝立ちのまま、すがるように獅子を見た。
「獅子先生?」
  勃起した水無月の性器がふるふると震えている。
「そろそろ見せてもらえますか、水無月先生」
  そう言うと獅子は、水無月の体を抱え上げ、作業台の上で仰向けにさせた。上体は獅子の胸にもたれたままだが、足を大きく開脚させられると勃起した性器どころか、その向こうのヒクつく後孔の縁も見えそうな体勢を取らされる。
「な……?」
  頭を捩り、水無月は何とか獅子の顔を見上げた。
  いつもは爽やかな笑顔の似合う青年だが、今は欲望にぎらついた眼差しで水無月の体を舐めるように視姦している。
「ここで産むんですよ。水無月先生の貴重な産卵シーンを、俺がしっかりこの目で見届けてあげます」
  ニヤリと笑った獅子が自身の唇の端をぺろりと舐める仕草がエロティックで、水無月は唇を震わせる。
「震えてますね、水無月先生」
  耳元にそう囁きかけると獅子は、水無月の唇を人差し指でそっとなぞった。無骨な手が唇の形を辿り、弄ぶように歯列を割って口の中へと潜り込んでくる。
「んっ、ぅ……」
  舌で指を押し戻そうとすると、より深く指が入り込んできた。唾液をたっぷりと絡め取り、ぐちゅぐちゅと音を立てながら口の中をかき混ぜる。
「期待してくれてるんですね、水無月先生」
  上擦った声で獅子はそう呟くと、唾液に濡れた指を口の中から取り上げた。
「ふ……っ、ん」
  身動ぐと、足をさらに大きく開かされ、その奥に指の先が押し当てられる。
「さあ。見せてください、水無月先生」
  無情な獅子の声が耳たぶを掠める。
  水無月は無意識のうちにその声に従い、下腹に力を入れていた。
  ぐっと力を入れていきむと、腹の中のゴルフボールが中を移動する。
  排泄器官をするりとおりてきたゴルフボールが、襞の縁にぽこりと顔を出す。濡れているのは、獅子の唾液と潤滑ゼリーと、それに水無月の腸液のせいだ。てらてらと光り、水無月の尻の間に挟まったようになっている。
「ほら、見えてきましたよ。もっと力んでください!」
  獅子は興奮していた。ぐい、と水無月の肩を抱きしめ、もう片方の手で尻を掴んだ。ゴルフボールを指で押したり、窄まった縁の周辺を爪の先で引っ掻いたりしては、いたずらに水無月を焦らし続ける。
「や、め……」
  放り出した水無月の足がガクガクと震えている。勃起したペニスの先端はいつしか水無月の腹にくっつきそうなほどになっていた。トロトロと先走りを溢しながら、水無月の竿をしとどに濡らしていく。
「ほら、力を入れてください」
  そう言ったかと思うと獅子は、水無月の腹をぐい、と押した。
「出すんですよ、そのボールを。そうでないと、いつまでもこのままですよ、水無月先生」
  ヒッ、と水無月は喉を鳴らした。
  ゴルフボールがゆっくりと水無月の中から押し出されてくる。
「あ、あ……やめっ……」
  つー、と水無月の頬を一筋の涙が伝い降りた瞬間、コロン、とゴルフボールが作業台の上に転がり落ちてくる。
  濡れて妖しくてかるゴルフボールに、ついで羞恥に震える水無月に獅子は、嬉しそうな笑みを向けた。



(2015.1.20)


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