好きにしていいの?

「おいで、ペティト」
  ブルローズが声をかけるとペティトは素直に彼の足元に跪く。
  顔を上げて、小首をやや傾げ気味にして、「好きなようにしていいの?」と眼差しで問いかけてくる。
「いつもみたいにしてごらん、ペティト」
  自我を持ち始めた最初の頃はまだたどたどしかったペティトだが、この頃は随分と慣れてきたようだ。
  ブルローズのお許しを得たと知ると、嬉しそうに主の下衣をまさぐりだす。丁寧に股のあたりを何度も指で辿っていたかと思うと、前を寛げる方法に気付いたらしく、焦らすようにファスナーを下ろす。
「マスターは、どうしてほしいの?」
  ちらりと見上げるペティトの眼差しは悪戯めいてキラリと光を放つ。
「ペティトの望むことが、俺の望んでいることだよ」
  そう告げるとブルローズは椅子の背もたれに背を預け、ペティトをじっと見つめる。
「さあ、好きにしていいんだよ」
  わずかに顔を天井のほうへと向け、ブルローズは目を閉じた。



  ペティトの指先が、ゆっくりとブルローズの下着を探り当てる。
「マスターのこれ、もらってもいい?」
  上目遣いにブルローズを見上げる瞳はピンク色のインペリアルトパーズだ。妖しく煌めいては、見る者を一瞬にして惑わす。
「もちろんだよ」
  目を閉じたままブルローズは、歌うように囁いた。
  ペティトは素早くブルローズの性器を下着の中から取り出した。さっき、ペティトが服の上から触れた時にはまだくたりとしていたそれは、少しばかり芯を持ち始めている。
  顔を寄せ、竿の裏側にペティトは舌を這わせた。眉間にシワを寄せて、鹿爪らしい顔をしている。
  ブルローズの手による人形であるペティトは、細部にわたって人間と瓜二つの状態に作りこまれている。震えるまつ毛の先も、柔らかなビロードのような舌も、真珠のような白い歯も。すべてブルローズの手と、彼の一族だけが扱うことのできる魔法のレシピによって、人形たちは作られていた。
「ん、ん……ぅ」
  じゅるっ、と音を立てて竿の側面を吸い上げたかと思うと、先端からぱくりと飲み込んで口の中で竿を愛撫すた。口全体で竿を扱き、唾液をたっぷりと絡めてから吸い上げると、チュウ、と音がする。
  目を閉じたままのブルローズが、喉の奥で低い呻き声を上げた。
「気持ちいいですか、マスター」
  淡々とした様子でペティトが尋ねるのに、ブルローズは微かに頷いた。
「では、続けますね」
  今度は両手で竿の根本を大切そうに抱えて支えると、先端をまたぱくりと口に入れる。口角を締めて先の方を何度も扱き上げると、ブルローズの性器は先走りをじわりと滲ませ始める。
  不意に、ブルローズの手がペティトの頭を撫でた。柔らかな髪に指を絡み付かせ、愛しげに何度も弄ぶ。
「マスター、気持ちいいのですね」
  いったん口を離してペティトが問うと、ブルローズは頷いた。
「うん。気持ちいいよ、ペティト」
  主の優しい低い声に、ペティトはゴクリと喉を鳴らした。
  胸の内から柔らかなあたたかい気持ちが込み上げてきて、もっとブルローズを喜ばせたいと思う。自分は人形なのに、どうしてそんな感情が込み上げてくるのか不思議でならない。人形に感情なんて、必要のないものなのに。
「ん、ふ……」
  湿った音を立てながらブルローズの性器を愛撫し続けていると、硬くなった竿の先から本格的に青臭いトロリとした精液が溢れてくる。
「ああ……ペティトは上手だね」
  掠れた声でブルローズが呟く。その声が好きだとペティトは思った。こんなにふうに少し掠れた声で名前を呼ばれるのは、何よりも嬉しい。
「ん、んんっ……ぅ」
  クチュ、と音を立てるとペティトの口の中に苦いものがじわりと広がる。これを、口の中に欲しいとペティトは思った。熱い迸りを口の中で受け取って、飲み干したい。そうすることで自分が人間になれるような気がする。
「ぁ……んっ……」
  頭を大きく動かして、竿全体を何度も舐めしゃぶる。ペティトの口の端からたらりと零れたものは、先走りと唾液が入り混じっているように見えないでもない。
「ん、んく……」
  大きく口を開けて竿を飲み込もうとしたところで、ブルローズの手がペティトの髪を鷲掴みにした。
「んー……んっ!」
  驚いてブルローズの手から逃れようとすると、いっそう深く喉の奥まで竿を銜え込まされた。
  ブルローズの手は、銀糸の髪を掴んだままペティトの頭を激しく動かした。喉の奥を突き上げる竿が苦しくて、ペティトは何度もえずいた。それでもブルローズは、掴んだ髪を離そうとはしない。
「っ……く、ぅ……」
  ガシガシと喉の奥を何度も突き上げられ、口の中がブルローズの竿でいっぱいになる。歯を立てないように必死になって竿をしゃぶっていると、そのうちにブルローズの手がペティトの頭をぐい、と抱え込む。
  さらに喉の奥のほうを突き上げられたと思った瞬間、口の中の竿が膨張してひときわ大きくなったように感じられた。
「……っ!」
  ブルローズが低く呻くと同時に、つんとしたエグみのあるものが、勢いよくペティトの口の中を犯していく。
  これがブルローズの精液、ペティトが欲しいと思っていたものだ。
「ん、ぁ……」
  そっと頭を動かすと、ペティトの口からブルローズの性器がぷるん、と抜けた。まだ放出されていた白濁がペティトの顔に飛び散り、綺麗な顔が白濁に汚されていく。
「……マスター」
  顔にも髪にも白濁を飛び散らしたまま、ペティトがブルローズを呼ぶ。
  その表情はどこか恍惚として、妖しい美しさを湛えていた。



(2015.1.18)


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