「お弁当がついてるよ、つつじ」
不意に桜井に声をかけられ、つつじはきょとんとした。
「えっ、どこに?」
今の今まで、桜井が作ってくれたカップケーキを食べていた。夢中になって食べていたから気付かなかったが、きっとクリームか何かがついているのだろう。 慌てて唇の端を拭うと、桜井は小さく笑った。
「そこじゃないよ、こっち」
そう言うなり桜井は素早くつつじの顔に自分の顔を近付けてくる。
ぽやんとした表情でつつじは、桜井のすることを眺めていた。
桜井の赤い舌がつつじの唇の端をペロリと舐め上げた。
「甘いお弁当だね」
にこりと笑って桜井が言う。
「んー……と、カップケーキ、甘くておいしいよ」
頓珍漢な言葉を返すとつつじは、ふわん、とした笑みを浮かべた。
(2015.2.28)
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