後背位

  その日、ソトバはいつになく強引だった。
  寝台の上でボタンは四つん這いにさせられた。まるで犬か猫のような格好だと思うと、恥ずかしくてたまらない。
  そのままじりじりと逃げようとすると、腰を掴まれた。
  ソトバの大きな手ががしっとボタンの華奢な腰を掴んだかと思うと、尻に硬くて熱いものを押し付けられた。
「ボタン様、じっとしててください」
  掠れて上擦った声が、耳元で囁く。
「い……いや、だ……」
  弱々しく首を横に振るが、ソトバは聞き入れてはくれなかった。
  性急な動きでソトバは腰を押し付け、先走りに滲む先端でボタンの窄まりを何度か行き交った。
「っ……」
  ブルっとボタンの身体が慄き、恐怖にかくかくと四肢が震えた。
  怖いのは、ソトバの様子がいつもと違うからだ。
  いつもより強引で、どこかしら怒っているような感じがする。
「……大丈夫ですよ、ボタン様。ゆっくりしますから」
  そう言うとソトバは、性器の先端で窄まりを小刻みに突いてきた。先走りが襞の隙間を潤すと、先端が当たるたびにくぷっ、と音がする。ずかしくて、もどかしいような気持ちのよさがボタンの身体を走り抜けていく。
「ほら、腰が揺れてるじゃないですか、ボタン様。気持ちいいのでしょう?」
  そんなことをわざわざ口にしないでほしかった。確かにソトバの言う通り、ボタンの腰は揺れていたかもしれない。だが、四つん這いになったままで手足が疲れてきたからであって、決して気持ちがよくて腰を揺らしたわけではない。
「ちがっ……」
  言い訳をしようと背後を振り返ると、唇をぺろりと舐めたソトバの扇情的な表情がボタンの目に飛び込んできた。
  まるで獰猛な獣のような眼差しで、じっとボタンの後孔を見つめている。ぎらついたその瞳が、やけに愛しく思える。こんな鋭い目つきをする男が自分のものなのだと思うと、ボタンは嬉しくてたまらない。彼は自分のものなのだ。自分を愛してくれる、ただ一人の男なのだ。
「……ソト、バ」
  掠れた声で名前を呼ぶと、ソトバはちらりとボタンの目を見た。
  微かな笑みを口元に浮かべたかと思うと、ぐい、と腰を押し付けられた。熱い塊が一気にボタンの中へもぐりこんできて、内壁を激しく擦り上げた。
「あ……ひぁ、あっ……!」
  ぐい、と四肢を踏ん張ってこらえると、後孔が収縮してソトバの竿をきゅう、と締め付ける。
  ごりごりと鰓の張った部分で内壁を擦られ、足の先から頭の天辺まで突き抜けるような快感が駆け抜けていく。
  上体を寝台にぺたりとつけるとボタンは、は、は、と息をした。
  休む間もなくソトバの竿がボタンの中を掻き混ぜた。奥のほうを激しく突き上げたかと思うと、入り口の浅い部分を何度も小刻みに突いてくる。
「も……も、嫌だ、ぁ……」
  口の端から涎を垂らし、ボタンはグズグズと泣き声を上げた。
「でも、気持ちいいでしょう、ボタン様」
  言いながらソトバの手が、ボタンの前に回される。
  半勃ちになった性器を掴まれ、やや強く扱かれると、それだけでボタンの内壁はソトバの竿をきゅうきゅうと締め付ける。
「いい……けどっ、嫌だ……」
  ひくっ、としゃくりあげると、ソトバの唇が宥めるようにボタンの首筋を彷徨う。
「後ろからは、お嫌でしたか?」
  嫌ではないと、ボタンはふるふると首を横に振る。
  ただ、ソトバの顔が見えないのが不安なだけだ。
「ボタン様は、甘えたですね」
  フフッ、と微かに笑うとソトバは、今度は時間をかけてゆっくりとボタンの中を突き上げ始めた。



(2015.5.4)


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