暇潰し

  合戦から戻った同田貫は、怪我人で満杯の手入部屋が空くのを自室で待っていた。肩から臍のあたりにかけて袈裟懸けに斬られ、うっかり受けた投石のせいで前歯を失い、口元には乾いた血がこびりついている。
  だが、他の仲間は自分よりも深手を負っていた。
  京都市中での夜戦に出かけていったら、このざまだ。
  部屋の隅でぼんやりとうずくまっていると、同じように手入部屋の順番待ちをしている鶴丸がやってきた。
  腕を切り落とされた彼の着ているものは、自身の流した血で赤く染まっている。
「待機中か」
  ニヤッと笑って鶴丸が尋ねるのに、同田貫は億劫そうに頷き返した。
  暇で暇で、死にそうだ。
「暇そうだな」
  同田貫の胸の内を読んだかのように、鶴丸は言った。動きにくそうにしながらすぐそばに腰を下ろす。
「まあな」
  同田貫は溜め息をついた。
「この状態でできることなんて限られているから、たいていは待つことしかできないだろ」
  不服そうに告げると同田貫は、前歯のない口元にニッと笑みを浮かべる。
「仕方ないな。暇潰しでもするか」
  鶴丸も溜め息をつく。
  怪我の重い者から優先的に手入部屋に入ることには、異存はない。どちらかというと、順番が回ってくるまでの時間が暇で暇で仕方がないのが実情だ。
「……だったら、やってみたいことがあるんだけどよ」
  不意に同田貫が告げた。鶴丸の様子をうかがいながら「やってみないか?」と、愛嬌のある瞳で問いかけてくる。
  その眼差しは妙に艶のあるもので、鶴丸はまじまじと同田貫の顔を見つめ返した。
「……いったい、何をだ?」
  怪訝そうな様子の鶴丸に、同田貫はまたしてもニヤリと笑いかけた。
「アレだよ、アレ。歯がない状態でアソコをしゃぶられたら気持ちいいって言うだろ? ちょうどいいから、試してみようぜ?」
  一息に捲し立てると同田貫は、あーん、と自分の口を開けて前歯のなくなった口を見せびらかす。それから鶴丸のほうへとにじり寄った。
  もともとすぐ近くに座っていたものだから、鶴丸は後ずさるだけの余裕すらなかった。
「──本気か?」
  同田貫の顔を覗きこみ、鶴丸は尋ねる。
  本当にそんなことをする気なのだろうかと、疑っているようにも見える。
「本気だって。手入部屋に入るまではまだしばらくかかるらしいし、こんなことでもしてなきゃ時間は潰せねえ。やるだろ?」
  一気に捲し立てるように告げると、異存はないなと同田貫は尋ねてくる。
  逡巡することなく鶴丸は行動に移した。



  片手でややもたつきながらも鶴丸は着ているものの前を広げ、同田貫に眼差しを送った。
  まだ萎えたままの性器を手に握った鶴丸は、同田貫に見せつけるかのように軽く手を上下させた。
  同田貫の見ている前で、鶴丸の竿が硬く張り詰めていく。
  先端に先走りが滲み出したところで、鶴丸は手を止めた。
「……ここからは、お前がしてくれ」
  片手では何かと不自由でな、と鶴丸は皮肉めいた笑みを浮かべる。
「そうだな。俺がやる」
  そう返すと同田貫は、鶴丸の性器に口を寄せた。唇で先端にちゅ、と触れてから、ゆっくりと口の中に含んでいく。
  舌を絡め、口の中に込み上げてくる唾液を竿に塗り込めるようにして頭を動かした。
「……っ」
  鶴丸の呻き声が聞こえる。
  傷が痛むのか、それとも感じているからなのか、いったいどちらだろう。
  同田貫は熱心に竿を舐めしゃぶった。じゅるっと音を立てて側面を吸い上げる。歯のなくなった部分で竿を軽く扱いてやると、鶴丸の性器がさらに大きく張り詰めていく。
  鈴口にじわりと滲む先走りを音を立てて吸い上げながら同田貫は、自身の前も同じように硬くなってきたことに気付いた。
「このまま、口の中に出せよ」
  大きく口を開け、同田貫は前歯の欠けた歯茎で鶴丸の竿を扱いた。
  ぐちゅぐちゅと音を立てながら竿を扱くと、喉の奥にあたる先端がさらに先走りを滴らせる。口の中に青臭くて苦い味が広がり、同田貫は喉を鳴らして先走りの混じる唾を飲み下した。
「くっ……」
  不意に鶴丸の手が、同田貫の髪を鷲掴みにした。
  がしがしと頭を揺さぶられると、喉の奥に鶴丸の性器が当たり、えずきそうになる。胃の中から何かが込み上げそうになるのを堪えて、同田貫は鶴丸の手の動きに合わせて頭を動かした。
  すぐに口の中は、先走りの混じった唾液でいっぱいになった。
  口の端からたらりと涎を溢しながら上目遣いに鶴丸を見上げる。
  眉間に皺を寄せた鶴丸の顔を見ていると、同田貫はどうしようもなく体が熱く火照ってくるのを感じた。
「んっ……ん……」
  硬くなった鶴丸の性器が、だらだらと先走りを溢れさせる。同田貫は先端の小さな割れ目に舌先を突っ込むと、じゅるじゅると音を立てて吸い上げた。
  傷の痛みと快感とが入り交じって、神経が異様なほどに昂っているのが感じられた。
「……やっぱ、口の中よりも腹の中に欲しいかもしんねえ」
  一旦、鶴丸のものから口を離すと、同田貫は物欲しそうに呟く。
「腹ン中に、くれよ」
  そうねだると、鶴丸は小さく笑って首を横に振った。
「まずは、口の中だ。俺の体力に余裕があれば、下の口にも注いでやる」
  その言葉に同田貫は、フン、と鼻を鳴らす。
「あんたに余裕がなくても、俺が全部してやるよ」
  そう言うと同田貫は、いっそう口の奥深くへと竿を飲み込む。激しく頭を前後に振り、涎にまみれながら鶴丸の迸りを口中で受けた。



(2015.5.2)


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