入学式が始まる直前に、サンジと再会した。
懐かしいという感情が沸き上がってくると同時に、胸の奥が何故だかチリチリと痛んだ。何の痛みだろうかと訝りながらも、言葉を交わした。
色白で、幼い頃には女の子のような顔立ちをしていた同い年の幼馴染みは、自分よりもひとつ上の学年になっていた。
当然だろう。
自分は、怪我のために一年間出遅れてしまった。一年という時間を長いとは思わない。その間にすべきことはそれこそ山のようにたくさんあったから。しかし短いわけでもなかった。一年という時間はゾロにとって、貴重な時間だった。この期間にゾロは、怪我を治し、リハビリを重ねた。この一年がなければ今の自分はいないだろうと、ゾロは思う。
正直なところ、ゾロ自身ですら、自分の体が一年で元に戻るだろうとは思っていなかった。
たまたま通りがかった工事現場で、ビルの屋上から降ってきた鉄骨から見ず知らずの女性を助けたのが運の尽きだった。左腕の開放骨折と内臓破裂とで、一年の大半を病院で過ごした。ようやく退院したものの、ほとんどの期間をリハビリにとられ、この四月に何とか高校に進学することができた。
それでも勉強で困ることはなかった。
ゾロが助けた女性は大学の教授で、受験生の勉強を見ることぐらいたいしたことではなかったらしい。
その彼女の協力をもってしても、ゾロの高校生活が同じ年の仲間から一年遅れたものとなってしまったのは、仕方のないことだろう。
彼女は、ゾロのためにマンションを購入した。事故当時、結婚直前までいっていた婚約者がいたが、婚約解消を彼女のほうから持ちかけたそうだ。今のところ保留という形になっているらしいが、彼女がゾロのために亡き母の遺産を投げ出してマンションを購入し、ゾロと同居することになっても、婚約者は影ながら彼女のことを支えていると聞いた。
それほどまでして誰かのことを想うというのは、どんな感じがするのだろう。
部屋にあがるとゾロは、リビングのソファにゴロリと寝転がった。
階段を駆け上がったからだろうか、心臓の鼓動はまだ落ち着かない。
喉の渇きを感じたが、冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出すだけのことが億劫に感じられた。
目を閉じると、淡い緋色の桜の花びらと、クラスメートとじゃれ合うサンジの姿がまぶたの裏に蘇ってきた。