サンジは両親に手を引かれ、『ご入園おめでとう』とピンクと白の紙の花を交互に飾り付けられた立て札のある正門を通った。子供たちやその親で賑やかな園庭に心が高鳴る。走り出したくてうずうずとしているのを左右の両親に阻まれている。
晴れ渡った空は優しい光に満ち、春特有の少し土臭い甘い香りで溢れている。花壇の花たちは可憐に揺れる。
あっちこっち振り返り、砂場やブランコを見つけては駆け出そうとする。母親が微笑んで、父親は後でなと頭を優しく叩く。
挟まれるように二人の腕にぶら下がり頭だけ後ろに倒すと、ビックリしたようにこちらを眺める子供がいた。緑色の髪の毛はまるでサンジが大切にしている毬藻だ。それは母の故郷へ旅行したときに買って貰ったものだ。
嬉しくなって、その子供に向かってにこりと笑った。ふわふわとさわり心地が良さそうな頭はひどく興味をそそる。
好奇心旺盛なサンジは繋がれた両手をほどき、毬藻めがけて一直線に走り出した。後ろで母が呼んでいるが聞こえていなかった。飛び跳ねるように地面を蹴って、未だ驚いたままの子供に抱きついた。
「すげー!マリモ!」
両親を見ると、はしゃぐサンジに慌てて駆け寄ってくる。
しかし彼らが来るより先に、バランスを崩して尻餅をついてしまった。何が起きたのか分からなくて、自分を見下ろす毬藻のような子供を見た。
「さわんな、おとこおんな!」
どうやら頬をほんのりと染めて睨んでくる毬藻頭の子に押されたようだ。サンジは驚いて目をぱちりと瞬いた。この日のための洋服は汚れてしまい、白いソックスにも土がついた。
父親に後ろから抱き起こされる。目の前の子供は母親らしき人物に怒られるのも気にせずサンジに言い放った。
「おとこのくせに、おんなみてえなかお!」
それは幼いながらもサンジが気にしていたことだった。皆サンジを女の子みたいで可愛いと褒める。けれど本人にとって、自分は男なのにと釈然としなかったし、可愛いよりもかっこいいと言われたかった。
感受性が豊かで感情に素直なサンジはさっきまでの喜びから一転、怒りに満たされた。そして迷わず仏頂面の毬藻頭に飛び蹴りをしたのだった。
それが取っ組み合いになる寸前に互いの親に止められ、暴れたせいでよれてしまった一張羅で式に出た。
父親に怒られ母親には注意され、せっかくのめでたい日にサンジは泣くのを必死に我慢するはめになった。男なんだからこれくらいで泣くもんかと、こぼれそうな涙を唇を噛みしめてやり過ごした。
(だいっきらいだ!あんなやつ!)
絶対仲良くしてやらないと胸に誓った。