勧められるままに弁当を食べた。
こんなにもサンジの手料理を大量に食べるのは、本当に久しぶりで、なんだか臍のあたりがこそばゆいような感じがする。
食べ終わったところでのびをしようとして、胸の傷がひきつれるような感じがして、ゾロはふと動きを止めた。
「あ……」
どうしようかと腕を上げたものの、体を伸ばすと傷が痛むことがわかっている。そのままそろそろと腕をおろして、ゴロリとコンクリートの上に横になった。
「少し休んでから降りる」
言い訳めかして口の中でもぞもぞと呟いて、目を閉じた。
事情を知っているエースは何も言わなかったが、サンジのもの問いたげな眼差しがじっとこちらを見ているのが感じられた。
「ごっそーさん」
昔よりも料理の腕があがっているなと思いながら、ゾロは口の中に残る出汁巻きの味を思い出してみた。
甘くなく、それでいてほんのりとした優しい甘みのする出汁巻きだった。黒豆の煮汁で焚いたチラシ飯はほんのりと桜色をしていて、食べるのが惜しいぐらいだった。椎茸、筍、にんじん、高野豆腐、錦糸卵を混ぜ込んでいて、ゾロの好みの味付けに仕上がっていた。保温ポットに入れてサンジが家から持ってきたみそ汁が赤出汁のいい味だったこともあって、ゾロはいつになく上機嫌だったのだ。
それが、胸の傷のひきつれを感じた途端、シャボン玉のように楽しい気持ちが弾け飛んでしまった。
お前はこの怪我から逃れることはできないのだと誰かに言われているようで、それまでの雰囲気が、急にしぼんでしまったかのようだ。
しばらくサンジの視線を感じていたゾロだったが、ゴロリと体の向きをかえた。
さわさわと頬を撫でていく四月の風は優しく、これからやってくる初夏の香りを含んでいた。まるで風見鶏の見える丘にいるような錯覚に陥りそうだ。そうやって微睡んでいるうちに、いつしかそのまま寝入ってしまっていた。