子猫日和

  ナッツとふざけあっているうちに綱吉の胸の内に、獄寺に会いたいという気持ちがこみ上げてくる。
  声を聞きたい。会って、話をしたい。自分の胸の内を伝えたい。
  獄寺は、どう返してくるだろう。
  猫じゃらしを手にしたまま綱吉は、ゴロン、と床の上に転がった。
「……獄寺君、今なにしてんのかなぁ」
  思わずポロリと呟きが洩れる。
「ガウ?」
  首を傾げたナッツが近づいてきて、綱吉の鼻に自分の鼻先をすり寄せてくる。
「くすぐったいよ、ナッツ」
  小さく笑うと綱吉は、ナッツの体を抱きしめ、自分の腹の上に乗せた。
  獄寺に会いたい気持ちはいまだ胸の内でグルグルと渦巻いている。
  今から会いに行ってみようか。いきなり行ったりしたら獄寺は迷惑がるかもしれないが、それでも、自分の気持ちを確かめるために会いに行ってみてもいいかもしれない。
「どうしよう……」
  呟いて、はあーっ、と溜息を零す。
  心配そうな顔をしたナッツが綱吉の頬をペロペロと舐めてくる。
  会いたい気持ちはあったが、獄寺に迷惑がられたらどうしようと、そればかりが気にかかる。
  実際には、そんなに心配する必要はないのかもしれない。だいたい獄寺は綱吉第一で、綱吉が呼べば真夜中でも駆けつけてくれるだろうことはわかっていた。だが、それだけに獄寺の本心が今ひとつ掴むことができず、あれやこれやと綱吉が悩んでしまう原因にもなっていた。
「会いたいな」
  呟くと、会いたいと言う気持ちが増大するような感じがした。
  会って、気持ちを伝えたい。できることなら、今すぐにでも。
  ナッツを抱きしめたままコロコロと床の上を転がってみる。目を閉じると、獄寺のことばかりが綱吉の頭の中でグルグル回りだす。
  そのうちに綱吉は床の上で寝入ってしまっていた。