カナリヤの囁き 2

  熱く火照った竿を唇でゆっくりと扱き上げてやると、先端から苦みのある精液がじわりと滲み出てくる。
「ぁ……」
  はぁ、と溜息をついて雲雀が人差し指を口元へ持っていく。ほっそりとした指を噛み締め、じっと声を堪えている。
  出会った頃から艶っぽい表情をする男だった。
  あれから十年経ったが、その色香は今も褪せることはない。
「声、出せよ」
  口の端をつり上げ、ディーノが笑ってそう告げると、ギロリと睨み付けられた。
  この反抗的な目が、いい。
  体をしならせながらも無言の抵抗を試みる、強気なところが何とも言えない。
  竿の先端に唇を押しつけて、割れ目の部分を強く吸った。
「ぁ……」
  微かな声と、身じろぎと。くぐもった声は、指を噛んでいるからだろう。ちらりと視線をあげると、女とは違う色香を纏った雲雀が喘ぎ声を押し殺してドアに背を預けている。
  ピチャピチャと音を立てて先端のぬめりを舐め取ると、雲雀の膝がカクカクと揺れた。
「このまま、ここでしてもいいか?」
  尋ねると、ぐい、と耳たぶを引っ張られる。耳がちぎれそうだと文句を言いかけて、ディーノはやめた。切羽詰まっているのは、自分一人ではないのだ。
  見上げた雲雀の表情がどことなく中学生時代の雲雀の冷たい表情に重なって、ディーノはこっそりと笑った。



  人差し指を唾液で湿らせると、ディーノはその指で雲雀の後ろをまさぐった。
  柔らかな肉の狭間で、ディーノの指を待ち受けているものがある。指の先でそっと触れると、ヒクン、と蠢いた。まるで、ディーノの指を待ちわびていたかのようだ。
  ゆっくり指を差し込んでいくと、雲雀の体が微かに震えた。
「んっ……」
  足下がふらふらとして不安定な体を支えるように、雲雀の両手はドアに押しつけられている。ディーノの指がクチュ、と湿った音を立てると、そのたびに雲雀の体は大きく揺らいだ。
「ディーノ……」
  甘えるような眼差しで、ディーノは雲雀を見上げる。うやうやしく雲雀の性器に唇を寄せ、パクリと口にくわえた。百合の芯のような香りが口の中に広がる。
「ふ……ぅ……」
  勃起した先端から先走りがたらたらと溢れ出していた。ピリッとしたえぐみの混じる先走りを吸い上げ、飲み込んだ。雲雀は、息を殺してじっとディーノを見おろしている。
  音を立てて竿の先のほうを吸い上げると、雲雀の足がカクカクと揺れた。
  中に突き立てた指を抜き差ししながら、ディーノは再度、ちらりと雲雀の顔を窺った。
  相変わらずの怜悧な眼差しだが、口元にはうっとりとした笑みを浮かべている。
「ディー…ノ……」
  掠れた声で名前を呼ばれ、ついで腕を掴まれた。
「──早く」
  焦れったそうに雲雀が言う。
  ここで機嫌を損ねるわけにはいかないと、ディーノは立ち上がり、雲雀の腰をしっかりと掴んだ。



  腰を密着させると、互いの熱が感じられた。
「早く、しなよ」
  上目遣いに睨み付けられた途端、ディーノの下肢にさらなる熱が集まっていく。煽られているのだろうかと思わずにいられない。
  やや乱暴に雲雀の片足をぐい、と自分の腰にまといつかせ、腰を押し進めた。
「ぁ……」
  グチュリ、と音を立てて、ディーノの性器が雲雀の中に入っていく。前回、抱き合ってから少し期間があいたからだろうか、いつもよりきついくらいに感じられる。痛くはないのだろうかと、少しばかり心配に思いながらもぐい、と根本まで一気に突き入れた。
「キョウヤ」
  耳元に囁きかけると、冷たい眼差しに睨み付けられる。
「無駄口叩いてないで、さっさと終わらせてよ」
  素っ気なく告げる雲雀の首筋に、ディーノは唇を押し当てた。
「わかってるって」
  甘く囁いてやると、それだけで雲雀の喉がヒクン、と蠢く。昔の雲雀は、黙っていればとかく愛らしいの一言に尽きた。つっけんどんな態度も、気のない返事も、何もかも許すことができるとディーノは思っていた。今だってそうだ。冷たい態度を取られても、その裏にある雲雀の想いをわずかなりとも感じ取ることができるから、自分の想いを雲雀に向けていることができた。
  雲雀のほうからは、特に言葉にする必要もない。態度で示す必要もない。自分だからできることなのだと、ディーノは思っている。若い雲雀の家庭教師役を務めた自分だからこそ、言葉や態度で示されなくても相手のことを理解することができるのだ。
  おそらく、綱吉と獄寺の間にあるような恋愛感情とはまた違った形の愛情が、ディーノと雲雀の間にはあるのだろう。



  ゆっくりと腰を押しつけ、雲雀の中を蹂躙した。
  ドアをなぞる雲雀の手が、支えになりそうなものを探してさまよう。
「ディ…ノ……」
  唇を舌で湿らせて、雲雀が囁く。
  赤い唇が艶めかしく、小さく開いた。
「キョウヤ……」
  どちらからともなく顔を寄せ合うと、唇と唇を合わせた。
  やんわりと相手の唇に触れるだけのキスを繰り返す。
「ん、ん……」
  下から力任せに突き上げると、雲雀の手がディーノの肩にしがみついてくる。もう片方の手は、ディーノが掴んでドアに押しつけた。
「あ、あぁ……」
  はあ、と息を大きく吐き出し、雲雀は唇を噛み締めた。
  赤い唇がますます赤く、艶めかしく見える。
「中に出してもいい?」
  尋ねると、ギロリと睨み付けられた。
「──あなたが、後始末をしてくれるのなら」



  立ったまま、ディーノは雲雀を犯した。
  そのまま最後までしてもいいとお許しが出るとは、実のところ思ってもいなかった。いや、これはお許しではない。面倒だからさっさとすませろという雲雀の意思表示なのだと、ディーノはふとそのことに思い当たった。整った顔立ちに似合わず、雲雀にはものぐさな一面がある。こういった色恋に関しては特にそうだ。自分以外の他人に対してはムードの欠片もない、朴念仁だということをこの十年間でディーノは学んだ。あまり過剰な期待をすることは、もうとうの昔にやめてしまっている。
  大きく体を揺さぶると、途切れ途切れに雲雀の口から喘ぎ声が洩れ出した。啜り泣くようなか細い声に、ディーノの熱が体中を駆けめぐる。
「っ……」
  片方の太股を抱え上げたディーノは、ぐいぐいと腰を押しつけていく。
  この体の奥までもが自分のものだと主張したくてディーノは、雲雀の頬をぐい、と掴むと乱暴に唇を合わせた。
  満足そうに雲雀の喉が鳴る。
  ディーノの腹にあたる雲雀の性器が、先走りでぬめっている。腰を押しつけるたびに先端がディーノの腹にこすれて、ぬるぬるしている。
「なあ、キョウヤ。後で一緒にシャワー浴びようぜ」
  そう言った途端、鼻先に噛みつかれた。
「痛っ……」
「あんまり調子に乗ってるようなら、それなりの対応を考えなくちゃね」
  ふふん、と鼻で笑って雲雀は告げる。
「調子に乗ってるわけじゃないって……」
  鼻を押さえながらディーノが言い訳をするのに、雲雀は素っ気なくその鼻を指で弾いた。
「ねえ、早く終わらせてくれない?」



END
(2009.5.30)


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