『寝酒 1』



  真夜中のキッチンで、ゾロとサンジは抱き合った。
  酔った勢いでこうなったのかもしれないし、自ら望んでこうなったのかもしれない。どちらにしても、あまりいい経験でなかったことは確かだ。
  きっかけは、ベンチに腰掛けたゾロが今夜、三本目の酒瓶をすっかり空にしてしまおうとしたのを止めたところから始まる。
「寝酒にしては飲み過ぎなんじゃないのか?」
  煙草を吹かしたサンジがそう尋ねた瞬間、ギロリ、と鋭い眼差しで睨み付けられた。
「お前には関係ない」
  あっさりそう言い捨てられて、サンジは眉間に皺を寄せる。
  いつものような他愛のない喧嘩で済ませるにはいかないと、何故だかその時のサンジには思えたのだ。



「おい飲兵衛。いいか、よく聞け」
  そう言うとサンジは、テーブルの端に軽く腰かけてゾロを見下ろす。
  いつもはほぼ同じ視線のゾロの目が自分よりも下にあることで、サンジは何となく気をよくした。
「酒ってのはな、適量飲めばこれほど健康にいいものはないが、度を超えると毒になるんだ。今夜はお前、これで三本目だろう。いい加減にお開きにして、とっとと部屋に戻れ」
  腕組みをしてサンジが言うと、ゾロはもうほとんど空になってしまっている酒瓶をドカ、とテーブルの上に置いた。
「俺が酒に飲まれるような飲み方をするわけがないだろう」
  にやりと笑って、ゾロ。
  そう言われると確かに酔っているようには見えないのだが、それでも飲み過ぎなのは分かっていた。そもそも、寝る前に一口だけと言ってキッチンに来たまま、もうかれこれ数時間は居座り続けているのだ、ゾロは。
  その間、サンジは夜食を作って女性陣の部屋に届けたり、翌日の料理の下ごしらえをしたりで慌ただしく立ち働いていた。
  そんなサンジを横目に、ゾロは手酌で酒を飲んでいたのだ。
「……そりゃそうだろうさ」
  サンジはぽそりと呟くと、おもむろに酒瓶を引き寄せた。それから口にしていた煙草を指先でつまみ、瓶の口からポトリと落とし込む。
  底に残っていた透明なアルコールの中に灰が舞い落ち、ジュッ、という小気味よい音と共に、煙草の火が消えた。
「──…どういうつもりだ、ああ?」
  上目遣いにゾロはサンジを睨み上げた。
「飲み過ぎだからやめとけ、って言ってんだよ」
  と、サンジの手がゾロの頬をそっと包み込む。
「寝酒より、こっちのほうがもっと効くぜ……」
  そのままサンジは顔を近づけると、ゾロの唇を軽く噛んだ。



  サンジが唇をうっすらと開くと、すかさずゾロの舌が侵入してきた。
  ざらりとした舌の感触に、サンジの背筋がぞくりと粟立つ。
「んっ……ん、ふっ……」
  歯の裏をなぞられ、舌をきつく吸われると、それだけで声が洩れてしまう。サンジはゾロに覆い被さるようにして唇を合わせた。角度を変え、浅く、深く。
  ゾロの手はやんわりとサンジの腰をまさぐっている。
  布地の上から軽く触れられただけなのに、サンジの中心は硬度を増しつつあった。
  唇を離すと、ちゅ、と湿った音がした。
「もう、こんなになってるぞ」
  ゾロはまっすぐにサンジの目を覗き込みながら、にやりと笑う。
  指先はするりとサンジのシャツの下に潜り込み、滑らかな肌を伝い下りていく。
「苦しいだろう?」
  尋ねられて、サンジは頷いた。
  ゾロの指は布の上からサンジの股間をまさぐっている。的確に感じる部分に触れてくるくせに、緩やかな刺激しか与えてもらえず、サンジはつい自ら腰を揺すっていた。自分と同じ男を相手に感じてしまうことに、少しばかりの罪悪感を感じながら。
「…ん……ぁっ……」
  ジッパーをおろす微かな音が聞こえた。
  ゾロが、布地に隠されたサンジのものを灯りの下に晒したのだ。
  ピン、と勃ち上がったそれは先端に透明なものを滲ませ、ドクン、ドクン、と脈打っていた。



「ぁむ…ん……」
  躊躇うことなくゾロは、サンジのものを口に含んだ。
  痛いほどにざらついたゾロの舌でサンジは舐め上げられ、思わずテーブルに手をついてしまった。そうすることでサンジの腰は自然とゾロのほうへと突き出され、いっそう深く口の中に押し込まれることになった。
「あっ……ああっ……」
  ともすれば腰が跳ね上がりそうになるのをぐっと堪えながらサンジは、ゾロの緑色の頭をに愛しそうに見つめる。
  手を伸ばしてちくちくする短い髪ごと頭を抱えるとゾロとの密着度が増し、その瞬間、根本のほうを強く吸われた。
「……ひっ……」
  ビクン、とサンジの背がしなる。
  ゾロはサンジの足を肩に担ぐと、ピチャピチャと卑猥な水音をたてながらサンジのものを吸い上げる。先端の括れを舌先でチロチロとつついてやると、サンジは掠れた声で鳴いた。
「へぇ。こりゃ、いい寝酒になりそうだ」
  ゾロは低く呟くと、サンジをテーブルの上に仰向けに寝かした。
  肩に担いだサンジの足が、所在なげに震えている。太股のあたりから股関節のあたりへとかけてすーっ、と指先でなぞると、サンジの足は大きく引きつり、痙攣する。
「誰かさんが盗み食いにやってくる前に、さっさと終わらせちまおうか」
  そう言うとゾロは、サンジの後ろの窄まりへと指を這わせた。



to be continued




ZS ROOM         1         2         3