『PIERCE 1』



  ピアスを開けた。
  本当は、どうしようか迷っていた。
  痛いのは嫌だったし、何よりもサンジは、自分の身体の一部に傷をつけることに対して躊躇していたのだ。
  サンジが躊躇してただ黙っていると、ゾロはこう言った。
「大丈夫だって。ンなの、初めての時よかずっと痛くないんだぜ?」
  無茶苦茶な理論だと思ったが、ゾロが言ったから。
  だから、サンジはピアスを開けた。
  痛くないと、ゾロが言ったから。
  鏡に映る自分の顔と耳たぶの下でぽつりと光る琥珀色のピアスとを見比べながらサンジは、気に入らないとでも言うかのように顔をしかめて立ち尽くしていた。



「気に入らないのか?」
  すれ違いざま、サンジはゾロに尋ねられた。
  酒瓶を物色しようとキッチンに入ってきたゾロが、もの問いたげな眼差しでサンジを見つめている。
  気に入らないも何も、じくじくと倦んだような痛みが前の晩から続いており、サンジは耳が気になって仕方がない。ピアスの傷自体はたいしたものではない。これしきのもの、唾でもつけておけばすぐにどうということもなくなるだろう。気に入らないのは、無理矢理ゾロにピアスを強制されたことだ。
  きっ、とゾロを睨み付け、サンジは言った。
「お前のせいでクソ痛てぇんだよ、傷が」
  言った瞬間、ゾロに髪をがしがし、と掻き乱された。
「そんな小せぇこと、いちいち気にしてるなよ。俺が添い寝してやるから」
  そう言うとゾロは、唇を軽くサンジの額に押し当てる。
  乾いたゾロの唇は、思ったよりも体温が低く、肉が薄い。唇の肉が薄い人間の性欲は人並みかそれ以下しかないと聞いたことがある。そういえば、ゾロはどちらかというとあっちのほうは淡泊なほうだった──と、心の中でサンジは納得する。
  それからゾロのがっしりとした首に腕を回し、しがみついていく。
「それでは、未来の大剣豪サマに今夜の添い寝をお願いするとしようか」
  サンジは、おどけたように言葉を返した。




to be continued
(H15.7.28)



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