『PIERCE 2』



  ちりちりと焼け付くような痛みが耳たぶで燻っている。
  サンジは目を閉じ、唇を噛み締めた。
  骨張ったゾロの手がサンジの身体をまさぐっていた。
  ゆっくりと脇腹のあたりに触れる指先が、次から次へとサンジの体の中心へ熱を送り込んでくる。
「…ぁっ、あ……」
  掠れた声が出た。
  燻り続ける熱に焦れて、苦しそうに顔をしかめたサンジが洩らしたものだ。
「なんだよ。添い寝してほしい、っつーからしてやってんのに一人で善がりやがって」
  ふて腐れたようにゾロが言うと、サンジは唇を噛み締めたまま恨めしそうな眼差しで睨み付けた。
  これが陸の上でベッドの中だったならと思いながら、サンジは気怠い上半身を起こす。ゾロの中途半端な愛撫のおかげで、身体の中に熱がこもって今にもどうにかなってしまいそうだった。
「──…クソッ……気が狂いそうだ」
  呟く声は、暗にゾロを誘っている。
  ここがでなかったならもっと艶めいた声を出して淡泊な大剣豪に迫っていくのにと、サンジは心の中で思った。
  船倉には所狭しと荷物が積んであったが、サンジはいつもこの場所を逢瀬の場に使った。
  食材を始めとする積荷が詰め込まれたこの場所は、サンジのいわばもう一つの城でもある。調理をする時はキッチンがサンジの城だったが、食材を保管しておく倉庫もまた、サンジの城となっていた。ここへは誰も足を向けはしない。あの全身食欲の塊のような大食漢のルフィとて、この倉庫には滅多にやってこない。盗み食いをした後のおそろしさは、サンジとナミによって嫌というほど教え込まれたからに他ならない。
  だからサンジは、この場所でゾロと逢瀬を繰り返した。
  ここにいればまず、人の目を気にする必要はない。余程のことがない限り、ここへは誰も来ないのだから。
  声にさえ気をつけていれば、中で何をしているかなど、誰も気にはしないだろう。
  中の荷を取り出したあとの空になった麻袋を床に敷き詰めただけの即席の場所だったが、サンジにとってはここが、もっとも安心できる場所でもあった。



  唇と唇を合わせると、はやばやと唾液が口の端から溢れてくる。
  ゾロの口の中に自分の唾液を流し込みながら、サンジは鋼のような筋肉にしがみついていった。
「ぁ……ふっ……」
  口づけを繰り返しながら、サンジはゾロの上に跨った。
  ごつごつとしたグローブのような手が、サンジの腰をがっしりと掴む。同じ男でありながら、サンジとゾロの体格には差があった。がっしりとして筋肉質な体格のゾロと、痩身のサンジ。同い年で、同じぐらいの身長だというのに、何故、こんなにも二人は違っているのだろうか。何故、こんなにも互いに惹かれ合うのだろうか。
  後ろ手にゾロのものを探し当てると、サンジはそれを自分の尻に押し当てた。
「……証明してくれよ」
  そう言うと、サンジは微かに笑った。
「何だ?」
  わけがわからずにゾロは怪訝そうな顔をしている。
「証明してみせろよ、つってんだよ、このクソ野郎」
  噛みつくようなキスをして、サンジはゾロにのしかかっていく。
  まだ張りのないゾロの上に無理矢理腰を落とすと、わざと穿たれたものを自分の中で締め上げた。
「ピアスってのは、痛くねぇんだろ、ああ?」



  馬乗りになったサンジの顎を捕らえると、ゾロは唇を軽く甘噛みした。
「……俺は痛くなかったぞ」
  ふてぶてしくそう言い、ゾロはサンジの腰を掴んだ。
「こうしていれば、すぐに忘れるだろう」
  キスの合間にゾロが言う。
「んっ……ぁ……」
  くちゅ、くちゅ、と互いの舌が口の中で蠢く音が船倉に響く。
  もぞもぞと腰をずらしながら、サンジは口腔を貪った。そうしていれば、耳の痛みを忘れられるとでも思っているかのようだ。
  誘うようにゾロの舌に舌を絡めると、乳首をきゅっ、と摘み上げられた。
「ひっ……」
  サンジの背中がエビのようにしなり、ゾロを締め上げる。
「……ほら、な。忘れてしまいそうだろ?」
  悪戯っぽく笑いかけたゾロは、優しい眼差しでサンジを見つめていた。




to be continued
(H15.8.13)



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