二重奏

「……ハル」
  耳元で名前を呼ばれ、ハルの肩がピクリと跳ねる。
「もっと、見せて。いつも獄寺くんとどんなふうにエッチなことしてるのか、教えてよ」
  優しく命令されると逆らうことができなくなるのはハルだけではない。
  獄寺の腹の上に乗り上げたハルは恥ずかしそうに身を捩りながらはふっ、と息を吐き出す。
  背後から抱き締めてくる綱吉の腕は火照り、炎のように熱かった。
  ハルの乳房を両手で揉みしだきながら、臀部に硬いものを押し当ててくる。
「んぁっ……ふっ……ぅ」
  乳首が硬くしこってくると、てのひらで包み込むようにしたり、爪の先でカリカリと引っ掻いたりして焦らしてくる。
「ダメっ……それ、ダメ…で、す」
  軽く身を捩ると、既にハルの中に突き立てられた獄寺のものをきゅうっ、と締め付けてしまう。
「あぁ……」
  こんないやらしい姿を恋人の獄寺だけでなく、初恋の相手である綱吉にまで見せている自分が、ハルは信じられない。
「ダメじゃないだろう、ハル?」
  気持ちいいんだよね、と耳元に息を吹き込みながら綱吉は、ハルの右脚に手を這わせ、ゆっくりと立て膝にさせる。
「ほら、獄寺くんが見てるよ」
  そう言いながらハルのもう片方の足も同じように立て膝にさせると、両手でぐい、と膝を開く。
「やっ……あ……」
  首を横に振って抵抗するものの、綱吉はさらに強引にハルの足を開き、左手で大陰唇を広げる。 ぱっくりと開いた肉厚の襞の真ん中は淡い緋色をしており、ヒクヒクと震えている。
「ツナさ…ん……」
  ヒクン、とハルの中が蠢くと、尻の下に横たわる獄寺が苦しそうに息を吐き出す。
「ハル……」
  獄寺の手が伸びてきて、小さな突起になった部分に触れてくる。
「十代目のお手を煩わしてんじゃねぇよ」
  指先が突起に触れたかと思うと、くにゅっ、と押し潰される。
「んぁっ……あぁ……」
  指の腹がぐりぐりと押し潰し、やや乱暴に擦られ、ハルは喉を引き攣らせて声を上げた。ヒリヒリとした痛みと、こそばゆいような気持ちのよさとが入り混じり、膝がカクカクと震えて揺れる。
「ここ、触られると気持ちがいいんだね、ハル」
  綱吉の唇がハルの耳たぶをかすめ、首筋に舌を這わす。ねっとりと舐められ、ゾクゾクと身体が痺れを感じる。
  気持ちがいい。
  恋人である獄寺に抱かれる時とは違い、怖いほどに感じてしまう。
「ほら、こんなに濡れて……いやらしい汁が出てきてるよ」
  と、綱吉の指先がハルの膣口に触れてくる。
  獄寺のものを飲み込んだ薄い皮が、ヒクン、ヒクン、となっている。見られている。それも、綱吉と獄寺の二人から。
  獄寺は下から見上げるようにして、自身のものを挿入した部分を熱っぽい眼差しで見つめている。
  綱吉のほうは、背後から覗き込むようにしてハルの目線で見つめていくる。結合部の奥へと飲み込まれていく獄寺の性器と、肉の隙間からたらりとと溢れ出したハルの愛液が、綱吉の視線をいっそう強いものへと変えている。
「ぃや、あぁ……ダメです……そんな……見ちゃダメです……」
  身体を捩ると、ハルの中で獄寺の性器が内壁をごりごりと圧迫するのが感じられる。
「あ、あぁ……」
  臀部に当たる綱吉の性器が硬く張り詰め、先端から溢れる先走りでハルの肌を汚している。熱くてドロリとしたものが擦りつけられているのだと思うと、ハルの身体ははしたなくも歓喜にうち震える。
  本当は、ずっとずっと、こうなることを願っていた。
  憧れの綱吉と、恋人の獄寺。どちらも選ぶことができず、ずっと優柔不断なままで二人を天秤にかけるようなことをしてきたのは、誰でもないハル自身だ。
「……ダメ」
  はふぅっ、と甘い息を吐き出しながらハルは、獄寺の上で腰を揺らす。
  くい、と腰を前へ突き出し、それから綱吉の性器を煽るように背後へ身体を揺する。もっと熱を感じたい。二人の熱。二人の性。獄寺はいつも優しくハルを抱いてくれるが、綱吉はどんなふうにハルの身体を暴くのだろう。
「ツナさ……ツナ、さ……ん、ん……」
  にちゃっ、と尻のあたりでぬかるんだ音がしている。綱吉のペニスがハルの臀部に押し付けられている。中に挿りたがっている。
「ハル……挿れても、いい?」
  内緒話をするように、こっそり耳の中に吹き込まれた綱吉の言葉にハルは、恥ずかしそうに頷く。
  獄寺は好きだ。恋人として、申し分ない相手だと思っている。普段はぶっきらぼうだがここぞという時に気を遣ってくれるし、何より、二人きりになると優しい。
  一方の綱吉にハルは、昔からずっと憧れていた。出会った時から一途にハルは、いつか自分はこの男のものになるのだと思い込んでいた。その願いが今、叶うのだ。
「挿……れて……挿れてくださ、ツナさ……ハルの中、に……」
  うわごとのように呟きながらハルは、軽く尻を上げた。
  するりと綱吉の性器がハルの臀部を撫で、ついで鋭い痛みが尻の窄まったところを抉じ開けようとする。
「く、っん、はっ……」
  獄寺の腹に両手をつくとハルは、さらに腰を上げた。
「ハルを、奪って……大丈夫だから、奪って……」
  頬が熱いのは、恥ずかしいからだ。
  恋人以外の男にこんなあられもない姿を見せることなど、ありえないと思っていた。だが、相手が綱吉なら話は別だ。そもそもこれは、恋人の獄寺と二人して望んだことなのだから。
「本当にいいの、ハル?」
  触れるだけで許してあげようと思っていたのに、と綱吉が呟いたような気がする。
  もう、触れているのに、とハルは朧げな意識の中でぼんやりと思う。
「いいから。来て……ください、ツナさん」
  ハルの決心は固かった。
  いつか綱吉に全てを奉げようと思っていた。純潔は、恋人である獄寺に奉げた。だけどそれ以上のものを綱吉には捧げたいとハルは思っていた。獄寺を好きな自分をも含めてすべて綱吉に捧げることで、この気持ちは満たされる。ハルの想いは果たされるだろう。
  にちゃっ、ぬちゃっ、と湿った音がしている。
  ハルの臀部をなぞりながらも綱吉の性器は、ハルの蜜壺を探している。
「こ…こ……ツナさん、ここ、に……」
  軽く浮かせた尻の狭間に、獄寺の性器が突き立てられた箇所がある。ハルは結合部に指を這わせると、両側へとぐい、と引っ張る。
「……十代目、いいから挿れてやってください」
  躊躇うことなく獄寺が告げる。
  こんな不埒なことを考えつく自分たちは、もしかしたら頭がおかしいのかもしれない。
  だけど、身体が求めているのだから仕方がない。
  獄寺の腹の上に這いつくばり、いらやしく秘部を広げるハルの痴態を綱吉が見つめている。
  舐めるようにねっとりとした視線が、ハルの身体を隅々まで見渡していく。
「来て……ツナさん、来て…くださ…っ……」
  焦れたようにハルが腰を揺らすと、結合部から覗く獄寺の性器がゆるゆると蜜壺を出入りする。湿った音を立てながら、時折、ぬぷっ、ぐぷっ、といらやしいぬかるんだ音を交えて二人の男を誘っている。
「ハル、いつもこんないやらしい格好で獄寺くんとエッチしてるんだ?」
  骨ばった男の手が、ハルの臀部にかかる。肛門から膣口にかけてをぺろりと舐められ、思わずハルは声をあげていた。
「ひあっ、んんっ……」
  獄寺の身体に自身の乳房を押し付け、ハルは身を揺さぶる。胸も、蜜壺も、男に触れられて気持ちいい。
「い、ぃ……」
  はふっ、と息を吐きながらハルは獄寺の唇を求める。恋人の唇は甘い。互いの唾液を啜りながら深く唇を合わせる。
「気持ち、ぃ……ツナさ……」
  ぬるん、と綱吉の舌がさらにハルの膣口を舐め上げる。獄寺のペニスごと舐められ、薄い皮を舌先で擦られると腹の底から愛液が滴り下りてくるのが感じられる。
「ツナさっ……来、て……」
  振り返り、ハルは綱吉を見遣る。
  ずっとずっと憧れていた、愛しい人は恋人ではないけれど、それでも、こうしてハルを求めてくれる男だ。
  綱吉は熱っぽい眼差しでハルを見つめていた。
「……ハル」
  優しく名前を呼ばれ、ハルは「はい」と貞淑に返事をした。
  臀部を掴んでいたハルの手を取り、綱吉はそっとキスをする。
「挿れるよ」
  そう告げると綱吉は、ハルの蜜壺にゆっくりと性器を押し付けてきた。
  既に獄寺のものが納められた蜜壺がぎちぎちと引き伸ばされていく。薄い皮が限界まで伸ばされ、少しずつ綱吉のものが押し込まれていく。
「んぁっ……ふ、ぅ……」
  獄寺の腹の上に這いつくばったハルの痴態を、綱吉は背後からどんな想いで見ているのだろう。
「ツナ、さ……」
  上目がちにハルは綱吉へと視線を向ける。
「ぁ、あ……」
  しがみついた獄寺の身体から、汗の混じったコロンの香りがハルの鼻をつく。
「奥、まで……」
  全部、奪ってほしい。身体の隅々まで触れてほしいとハルは切望した。
  きっと、この一度きりになるだろうから、綱吉の思うように抱いてほしかった。
「……ハル」
  熱っぽい綱吉の声が名前を呼ぶ。
  背中に覆いかぶさってくる男の重みと重なる肌に、ハルはゾクゾクと身を震わせる。
「もっと……いっぱぃ、シて……」
  ぐぷっんっ、といやらしい音がして、綱吉の性器がハルの中に埋められていく。
  獄寺のものでいっぱいになったハルの蜜壺がさらに引き伸ばされ、みちみちと肉棒が押し込められる。
「ん……んっ、……ひ、ぅ……っ」
  腹の中に男の肉塊が満ちていく。
  二人分の性器を埋め込まれ、ハルは眩暈を感じた。
「き…きもちっ、いぃっ」
  ひしゃげた蛙のようなみっともない姿のままハルは、獄寺にしがみついた。
「獄寺…さ、ん」
  名前を呼ぶと、優しく唇を塞がれる。口の中に挿し込まれた舌がハルの歯列をなぞり、唾液ごと舌を吸い上げてくる。
「んー……ぅ、んっ」
  ちゅぱっ、と音を立てて唇が離れると、今度はすぐさま綱吉が腰を押し付けてくる。
「ひぅぅっ……ダメっ、壊れちゃぅ……」
  ぐりぐりと中を抉るように突き上げられ、ハルは背後を振り返る。
「ツナさんっ……ツナさ、激し、っ……」
  ぐい、と肩を引かれてやや乱暴に唇を奪われる。
  息つく間もないほど激しく口の中を蹂躙され、互いに唾液を啜り合う。
  獄寺の優しいキスとは比べ物にならないほど激しく、痛いキスにハルの目の端に涙が浮かぶ。
  苦しいのはきっと、綱吉のことが好きだからだ。
  誰のものでもない綱吉だから、憧れてやまないのだろう。
  それは何も、ハルだけではない。他にも、綱吉に憧れ、触れられたい、抱かれたいと思っている人間はいるはずだ。
  綱吉の舌に自身の舌を絡めながらハルは、この瞬間がずっと続けばいいのにと思った。
  この情事は、一夜限りのものだ。
  夜が明ければまた、綱吉は誰のものでもない憧れの男に戻ってしまう。焦れてやまない憧れの、男。決してハルの手に入らない、孤高の存在。
「ぁ、ふ…ぅ……」
  ハルの中に突き立てられた獄寺の性器が、不意にぐりゅん、と腹の奥を抉る。
「こら、こっちにも集中しろ」
  ぶっきらぼうな言い方ではあるが、獄寺の声はやや掠れて優しい。
「ひうっ……」
  逃げようとハルが身じろぐと、背後から綱吉がごりごりと中を擦り上げてくる。
「あぁ、ぁ……中、で……混じってる……ツナさんのと、獄寺さんのとが……っ!」
  蜜壺の中いっぱいに押し込まれた性器が薄膜を圧迫している。みちみちと蜜壺を押し広げ、子宮口を突き上げるかのように二人の性器が膨張し、どちらが先にハルの中に精を放つか競い合うようにビクンビクンと蠢いている。
「……うん。エロいね、ハル」
  背後から綱吉が囁きかける。
  一方の獄寺は事が始まってからずっと言葉少なだが、特段怒っている様子でもない。
「ダメ……ダメ、イッちゃぅ……」
  二人の男に体を優しく揺さぶられ、ハルは身悶える。
「ぁひっ……あっ、あっ……イく……」
  両手で獄寺の肩にしがみつくとハルは、ぐい、と尻を背後の綱吉のほうへと突き出した。もっと突いてほしい。二人の男の性をお腹の中にたっぷりと迸らせてほしい。愛されていると、感じたい。
「……ハル」
  ハルの体の下で、獄寺が名前を呼ぶ。
  嬉しい、とハルは口の中で呟く。
  二人の男に同時に愛され、そして翻弄され、ハルは幸せの絶頂にあった。
「獄寺さん……好き」
  全身でハルはさらに強く獄寺にしがみついていく。
  背後の綱吉が、腰を揺らした。強く、深く、ハルの蜜壺を擦り上げ、抉ろうとしてくる。
「ツナ、さ……ツナさんも……好、き」
  綱吉のほうを振り返るとハルは唇を突き出した。今なら、大っぴらにキスをねだることができる 。
  綱吉の唇がハルの唇を掠めた瞬間、ハルはペロリと綱吉の下唇を舐めた。
「ふっ……ぁくっ……ぅ、ぁあ……」
  普段、獄寺と抱き合う時以上に気持ちがいい。二人とも、気持ちよくなってくれているだろうか。自分の体に満足してくれているだろうか。そんなことを考えると、自然とハルの蜜壺は二人の性器を締め付けていた。
  体の下では、獄寺が眉間に皺を寄せている。必死に何かをこらえているような様子がハルの目には愛しく映る。
「……っ」
  蜜壺に熱いものが溢れ出す。
  獄寺だろうか、それとも綱吉だろうか。そんなことを思う間もなく、背中に綱吉の体がのしかかってくる。
  背中を大きく反らせ、いやらしく腰をくねらせながらハルは蜜壺の中に二人の男の性が注がれるのを感じた。熱くドロリとしたものが身体の中に満ちていく。
「あっ、あっ……」
  蜜壺が恥ずかしいほどに収縮を繰り返し、二人の性器をきつく締め付ける。二人からたっぷりと性を搾り取ろうとしているのを感じてハルは、恥ずかしさを誤魔化そうとぎゅっと目を閉じる。
  獄寺の腕が、ハルを抱きしめる。背中の温もりは綱吉のものだ。
  三人はベッドの上に転がり、互いの体を抱きしめ合う。
  ハルは男たちの温もりに身を寄せると、幸せそうに吐息をついた。
「ツナさん……獄寺さんも……ハルは、お二人のことが大好きなんですよ」
  これからも、ずっと。
  ハルは口の中でそう呟くと、二人の体をもう一度強く抱きしめた。



(2021.9.10)
END



もどる