さっきまでうるさいほど賑やかに喋っていたハルが、急に静かになった。
ナッツの毛繕いに夢中になっていた綱吉は手を止めて顔を上げ、背後のサンルームにいるはずのハルを見遣る。
サンルームのあたたかな陽射しの中で、お気に入りのクッションを抱えたハルが眠っていた。
フローリングの床の上でコテンと寝入ってしまった恋人の姿に、綱吉は柔らかな笑みを口元に浮かべる。
「風邪ひくぞ、ハル」
少しずつ陽射しはあたたかくなってきてはいたが、窓の外の風はまだまだ冷たい。
綱吉は、おもむろに自分が着ていたカーディガンを脱ぐと、眠ったままのハルの肩にそっとかけてやる。
うたた寝から目が覚める頃には、朝から彼女がキッチンで奮闘していた苺のムースもできあがっている頃合いだ。
「楽しみだな」
そう呟くと綱吉も、ハルと同じように床の上にゴロリと寝転がる。
降り注ぐ陽射しはあたたかで、数秒と経たないうちに綱吉もうとうととし出す。
すぐに二人のそばにナッツがやってきた。ゴロゴロと喉を鳴らしながら二人の間に体を落ち着けると、満足そうに前肢の上に顎を乗せ、目を閉じる。
ナッツの喉が奏でるゴロゴロという低い音はまるで子守歌のようにも思えて、綱吉は目を閉じたまま淡く微笑んだ。
(2014.3.24)
END
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