「ねえ……ねえ、ツナさん。チュウしてください」
ほんのりと頬を赤らめながら、ハルが迫ってくる。
「えっ、なに、突然どうしたんだよ、ハル」
後ずさりながら綱吉は、抵抗を試みた。
nbsp; つき合って随分になるが、こんなふうに恋人から迫られるのはいまだに苦手だ。自分から迫る分に関しては問題ないのだが、今日のようにハルのほうから積極的にしかけてこられると、いつもと勝手が違って戸惑うばかりだ。
ぐいぐいと体を押しつけてくるハルの吐息はほんのりと甘く、アルコールの匂いが微かに含まれている。さっきからリビングでジュースでも飲んでいるのかと思っていたが、どうやらカクテルだったらしい。頬や目元がほんのりと朱色に染まっているのは、恥ずかしさよりも酔いのほうが大きいかもしれない。
綱吉の腕にむぎゅ、と押しつけられたハルの胸は柔らかくて、否が応でも恋人の体を意識せざるを得ない。
「ほら、早くチューしてくださいよ。綱吉のほうから!」
恥ずかしいんだから、と言外に滲ませつつ、ハルの華奢な手が綱吉のネクタイをぐい、と掴んだ。
艶やかな笑みを浮かべるハルの眼差しは色めいていて、綱吉はいつになくドキドキした。 「たまには、ハルのほうからおねだりしてもいいと思いませんか?」
キュートな唇を軽く突き出して、ハルが囁く。
艶のあるハルの声は魔法のように、綱吉の思考を奪おうとする。この酔っ払いが、と思いながらもドキドキしているからだろうか、ハルの言葉の真意を考えることができない。
「んー……そう、かな?」
軽く首を傾げながらも綱吉は、ハルの唇にチュッ、と音を立ててキスをした。
(2014.3.18)
END
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