男の高い体温が心地よくて、思わずサンジはしっかりと目の前の体を抱きしめた。
大きく開いた足の間で、エースがリズミカルに腰を打ち付けてくる。
奥のほうをゴリゴリと抉るように擦りあげたかと思うと、先が抜けそうなほど竿を引きずり出し、また奥へと収める。ジェルでベトベトになった下肢が気持ち悪かった。だが、それ以上にエースの触れる場所はどこもかしこも気持ちがよくて、たまらない。
「ん……ん、ぁ……」
互いの腹の間に挟まれたサンジのペニスが、硬く張りつめて先走りでドロドロになっている。もう少し強い刺激があればイけるのにと手を伸ばしかけたところで、エースの手に阻まれた。
「ダメ。ここは、俺が可愛がるからお前は触んな」
ニヤリと含み笑いを浮かべると目の前の男は、片手でサンジの竿を強く扱き始める。先端から滴る先走りであっという間にエースの手はドロドロになった。エースが手を動かすのに合わせて、グチグチと湿った音が腹の間で響いている。
「……ん、く」
ブルっと体を震わせてサンジが片足をエースの腰に絡めると、結合がいっそう深くなった。
「……っ、と……もっと……」
はふ、と息を吐き出し、サンジ自身も腰を揺らした。
貪欲に男の唇に何度もくちづけた。舌を突き出し、唾液ごとざらついたエースの舌を吸い上げ、歯列を舐めた。
もっと、と手を伸ばし、程よく筋肉のついた背中に爪を立てた。
「っ……なに? 何かあったのか?」
舌っ足らずな甘い声で尋ねられ、サンジはほうっ、とため息をつく。
「なにも……」
返しながらサンジは、今日、一番最後にバラティエを後にしたカップルのことを思い出していた。
幸せそうなカップルだった。
自分はおそらく、あの名前も知らないカップルに嫉妬している。身内の視線のない場所で心行くまで二人きりで過ごすことのできる彼らがサンジは、羨ましいのだ。
「じゃあ、もっと集中しろ」
めっ、と子供を叱る時のように少し怖い顔をしてエースは、サンジの額に自分の額を押し付けてくる。
「集中、して……る……」
ムッと唇を尖らせてサンジが返すと、そこへエースはキスを落としてくる。
チュ、と音を立てて唇をやんわりと吸い上げてからエースは、サンジの両足を肩に抱えた。
不意に結合が深くなった。
足の自由がきかない状態で大きく中を突き上げられ、激しく揺さぶられた。
エースの肩にかかった足が不安定にゆさゆさと揺れているのが、サンジの潤んだ瞳に映る。
「や……ぁ、ぁ……」
がつがつと打ち付けてくるエースの欲望の塊が、熱くてたまらない。サンジの体の奥底が火傷しそうなほど熱くて、そのくせ気持ちいい。後孔がきゅうっ、とエースの竿を締め付けると、深いところを大きく突き上げられる。
「も、や……」
声が部屋の外に洩れたりしたら、明日の朝、仲間と顔を合わせ辛いのはサンジだ。慣れてしまえばどうということもないだろうし、その時の気分によっては気にならないこともある。だが今日は……いや、ここしばらくはエースとゆっくり触れ合うこともできなかったからだろうか、妙に気恥ずかしくてならなかった。
「すごいな、前。このまま潮でも吹くんじゃねえの?」
ぬちゃぬちゃと音を立てて前を扱かれると、熱の塊が腹の底でくつくつと煮え滾るような感じがした。
「っ……イく……」
片手を伸ばすとサンジは、エースの手の上から自身の竿を握りしめた。
「ここ……擦って……」
言いながら恥ずかしさがこみあげてきて、もう一方の腕でサンジは顔を覆った。
腰を捩り気味にして自分で自分の性器を扱くと、何とも言えないほど気持ちいい。自分の手の下でエースの手が動いていることで、快感はいっそう増している。
「こう?」
前を擦りながらエースは、不規則に腰を揺さぶる。
「あっ、ぁ……」
サンジが声を上げると同時にジワ、と先走りがまたしても溢れる。
「すげー、いやらしい声」
ぽつりと呟くとエースは身を屈めてサンジの胸元に唇を這わせてくる。舌先で乳首をヌルン、と舐め上げ、それから唇できゅっと挟んで扱く。硬くなった乳首をチュウ、と強く吸われたその瞬間、サンジの腹の底で燻っていた熱がドクン、と大きく脈打った。
パタパタと自身の腹に熱いものが滴った。
「ひぁ……っ、あ……」
目の前がぼやけて、白濁で手がドロドロになった。
それでもエースは腰を揺さぶり続けている。
最奥を何度も突き上げられ、サンジは息も絶え絶えになりながらエースの背中に手を回した。
しがみついて嬌声を上げているうちに、再び前が硬く張りつめてきた。
「もっかいイけそーだな」
ニヤリと笑ったエースの意地の悪い表情の男臭さにドキリとした途端、サンジの後孔がきゅぅ、と締まる。
「ばっ……」
馬鹿なことを言うなと反論しかけたところで、腹の中に収めたままのエースの竿がズン、と嵩を増した。 「あ、ぅ……っ」
トク、トク、と脈打つ様が伝わってくるほどぴっちりと隙間なく収められた竿が、サンジの奥深くを何度も抉るようにして突き上げてくる。そのうちに、気持ちいいのか痛いのかもわからなくなって、四肢を絡めたまま艶めかしい声をサンジは上げていた。
「も、ムリだ……中、に……」
絡めた足でエースの腰をぐい、と引き寄せる。
「……は、ぅ」
ガツガツと奥を突かれてサンジのペニスが白濁を迸らせる。と、同時に、きゅう、と締め付けた内壁の奥になまあたたかいものが放たれるのが感じられた。
「あ……あ……」
軽く二度、三度と体を震わせ、サンジはエースの迸りを搾り取ろうとした。
「おいおい、まだがっつくのか」
呆れたようにエースが声をかけてくる。
サンジは腕を伸ばすとエースの体を抱きしめた。
エースに抱き上げてもらってシャワーを浴びた。
ベッドに戻ると、シーツが新しくなっていた。バスタブに浸かっている間にエースが交換してくれたらしい。
糊のきいた新しいシーツにくるまると、すぐにあたたかな体が背中から抱きしめてくる。
ああ、これでやっと忙しいのともおさらばだ。そんなふうにサンジは何となく思った。
腹のほうに回されたエースの手に自分の手を重ねると、首の後ろに唇が押し付けられる。チュ、と音を立ててうなじに唇がおりてきて、ついで鼻先が髪の中に押し付けられる。
「シャンプーの香りがしてるな」
さらりとそんな気障なことも言えるようになったこの男が、たまらなく愛しく思える。
「アンタもな」
そう言うとサンジは、男の腕の中で体の向きをぐるりと回転させた。裸の胸にチュ、とキスをしてから、エースの体に腕を回す。
ふと気付くと、少し前までの苛ついて沈み込んだ気分はどこかへ消えてしまっていた。きっと、この男がそばにいるからだ。
そばにいて、自分を愛してくれているからだ。
「明日っからはもう少しゆっくりできればいいな」
まるでサンジの気持ちを読んだかのようにエースは言ってくる。
「ああ……そうだな」
エースに身を寄せると、自分よりも高い体温が心地いい。サンジは男の体にしがみついたまま目を閉じた。
すぐにエースの鼾が聞こえてきて、目を閉じたままサンジは小さく笑った。
至福の時というのはきっと、こういうのを言うのだろう。
バラティエにやってきたカップル客と自分たちとを比べるつもりはなかったが、きっと彼らも今頃はこんなふうに二人だけの時間を過ごしているのだろう。
甘い甘い、至福の時を。
口元に笑みを浮かべたままサンジはうとうととした。
惚れた相手の体温を間近に感じながら眠ることができるのは、幸せなことだ。それに、こんなふうに欲望のままに相手と抱き合うことができるのも。
明日からは通常のバラティエの営業形態に戻るはずだから、少しは時間に余裕もできるだろう。
仲間の目を盗んで、物陰でキスを交わすことができるぐらいには。
「おやすみ、ハニー」
口の中でぼそぼそと呟くサンジの声も、少しずつ小さく弱々しくなっていく。
すぅ、と寝息を立てて寝付いたサンジの体を、エースは眠いながらも優しく抱きしめた。
「おやすみ、サンジ」
眠っているのか、それとも起きていたのかはわからないが、舌ったらずな甘い声でエースはそう返すと、再び鼾をかきだした。
END
(H26.10.20)
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