『Oneness』



  気が付くと、サンジは脱ぎかけのシャツの裾で後ろ手に縛られていた。
  心臓がドキドキと鳴っている。
  このドキドキは、これからされることへの期待と、わずかな羞恥心のあらわれだ。
  不安は、ない。
  サンジは顔をあげると、正座した足を崩し気味にピンと背筋を伸ばした。フローリングの床が、少し痛かった。
  背後のエースが、声もなく笑うのが感じられる。
「寒い?」
  問われて首を縦に振ると、裸のエースの体温がほんのりとサンジに伝わってくる。
「これで少しはあたたかいだろ?」
  尋ねる声は、少し鼻にかかったような甘ったるい声だ。
「ん……あったかい」
  幼い子どものようにサンジは返した。
  エースがまた、ひっそりと笑った。



  サンジの白い背中にピタリとエースが寄り添う。
  大きな手が、ゆっくりとサンジの脇腹をなぞり、胸の突起にたどり着いた。
「エース……」
  呟いて、サンジは唇を噛み締める。
  いくら恋人同士とはいえ、サンジはまだ、何もかも全てをエースにさらけ出してはいない。許したのは、体だけ。
  普段、仲間たちに見せる何気ない表情や、養父ゼフやバラティエのコック仲間に見せる少し大人びた表情。女の子の前で笑ったり、格好をつけたり、おどけてみたり。そんな当たり前の表情ですら、エースにはまだ一部分しか見せてはいない。
  敵同士の二人が会えることは、滅多にない。恋人同士になってから会ったのも、片手で数えられるほどの回数しかない。
  全てを見せるには時間が足りなくて、サンジは、いつも背伸びをした子どものような顔をしてしまう。
  抱き合うことも平気な仲なのにと思うと、サンジは溜め息を吐いた。
  あたたかな手が、サンジの乳首をクニャリと押し潰し、サンジの口から微かな喘ぎ声が洩れた。首筋にかかるエースの熱い息が、くすぐったい。
「エース……」
  掠れた声でサンジが名前を呼ぶ。
「うん?」
エースが体をずらすと、後ろに回したサンジの腕に、エースの勃起したものが押し付けられた。
「手、はずせよ」
  もぞもぞとサンジは動いた。エースのペニスに自らも腕を押し付け、先端に指をひっかける。
  腕の自由を奪われてはいるが、拘束は甘い。少し力を入れるだけで、おそらくこの腕は自由になるだろう。それでもサンジは、自ら腕の拘束を外そうとはしない。自分からこの拘束を解きたくはなかった。エースに外してほしいのだ、サンジは。
「後でな」
  耳元に熱い吐息ごとエースの囁きを吹き込まれ、サンジはビクンと体を反らした。



  背中に熱い痛みを感じて、サンジは咄嗟に唇を噛み締めた。すぐにエースの唇が、痛みの中心から離れていく。
  声が洩れないように、サンジがそうやってじっとしていると、まだ身につけたままだったスラックスの前を開けられた。カチャカチャという金属音がして、手際よくベルトが抜き取られた。
  するりとエースの手が下着の中に潜り込んできて、あたたかな手の感触に、サンジはほぅ、と息を吐いた。
「んっ……」
  体温の高いエースの指は、躊躇うこともなくサンジのペニスに絡みついた。陰毛の中でクニャリとなっていたものが、エースの手で何度か扱かれると、それだけで固く勃ちあがりだす。
「ぁ……」
  膝を広げると、サンジは腰を前へと突き出すような格好をした。
「エース……」
  会えば時間が惜しくて抱き合うばかりの付き合いだが、互いの環境を辛いと思ったことはない。むしろ、自分の恋人が敵としてはるか先を歩んでいく姿を眺めるのは、どこかしら誇らしくもあり、小気味よく感じられさえした。
  あの背中を、サンジなりのペースで追いかけていけばいい。いつか追い越してしまう日がくるかもしれないが、それはそれでいいかもしれないと、サンジはそんなふうに思っていた。
「……なあ。手、外せよ」
  甘えるように囁くと、するりとシャツを脱がされた。
  自由になった手でサンジは、エースの腕を掴んだ。



  膝立ちになったままの姿勢で、サンジは後ろからエースの指が潜り込んでくるのを感じていた。
  ぬるりとした感触は、サンジの先走りか、それともエースの先走りか。
  自分の溜息ですら、熱く思われた。
  体の中に埋め込まれたエースの指が蠢くたびに、眩暈を感じる。
  ともすれば崩れ落ちてしまいそうな膝に力をこめると、体の中のエースの指をよりリアルに感じて、サンジの口から小さな喘ぎ声が洩れた。
「なに、ココが気持ちいい?」
  耳元で尋ねられ、サンジはビクビクと体を震わせる。
  クチュクチュと湿った音がするたびに、サンジの体が傾ぐ。エースの太い腕がサンジの腰を抱き寄せ、太股に竿を押し付けてきた。
「んっ……ソコ……」
  ぐい、と背を逸らしてサンジがエースの頬に頭をすり寄せた。
  熱いものがサンジの太股になすりつけられ、白濁したエースの先走りが糸を引いてサンジの肌を汚していく。
  何度かエースのペニスがサンジの太股を行きつ戻りつした。なすりつけられた先走りがサンジの太股を伝い落ちていく。それからゆっくりと、高ぶったエースのペニスがサンジの尻の挾間に押し当てられた。
「もう、入れる?」
  尋ねながらもエースの指が、サンジの中をぐい、と引っ掻く。
「あっ……」
  上擦った声がサンジの口から洩れる。エースがぐりぐりと内壁を引っ掻きながら指を引きずり出そうとすると、サンジは啜り泣くようなか細い声をあげた。
「入れ……エース、入れ、ろ……」
  何度も首を横に振りながら、サンジが喘いだ。





To be continued
(H19.12.1)



      

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