『Leisure 2』
部屋の中にはクチュクチュという湿った音と、切羽詰まったようなサンジの喘ぎ声だけが響いていた。
ゾロの口が、サンジの竿をしゃぶっている。咽頭につきそうなほど奥までサンジの竿を口内に納めてしまうと、唇の端をきゅっ、と窄めてゾロは大きく口を動かした。涎がサンジの竿を伝い、根本へとおりていく。
「あっ、あ……はっ、ぁ……」
鷲掴みにしたゾロの髪をぎゅっ、と引っ張り、サンジは快感に耐えた。カクカクと腰が揺らめくのを堪えようとすると、立て膝にした足が動く。すると、ゾロがにやりと笑ってまたサンジを見上げる。どうした、とでも言いたげな様子の眼差しに、サンジは焦れたような声をあげた。
ゾロは薄く笑って身体をはなした。中途半端に高ぶったサンジのペニスがふるふると震えている。解放されることを待ち望んで、それでもじっと上を向いて耐えている。
「挿れるぞ」
そう言ったゾロの声は掠れており、サンジの耳には心地よく響いた。
フローリングの床にゾロは、胡座をかいて座った。サンジがその上に乗ると、もどかしげにゾロのペニスを後ろ手に探りながら、腰を落としていく。
「ん、んっ……早く……」
片手でゾロの肩にしがみついて、サンジはゆらゆらと腰を揺らした。
「…ぅ……クソッ……」
すでに溢れだしていた先走りのついた手はひどくぬめり、なかなか思うように挿入ができない。早く身体の中に入り込んでほしいと思っているのに、入り口に当たっては、プルン、と震えて先端が逸れてしまう。
身体を捩り、サンジは今にも泣きそうな表情で何度も先端を入り口にあてがっては腰を下ろそうとする。そのたびにゾロのペニスの先端は、襞の縁をなぞっては逃げていってしまう。
気が狂いそうだった。頭を大きく横に振り、サンジが胸を突き出すようにして背を反らすと、ゾロのざらざらとした舌が乳首を刺激してくる。まるで、サンジを焦らすためにそうしているかのようで、酷くもどかしい。
蒼い眼でぎろりとゾロをひと睨みすると、サンジはゾロの肩口を掴んだ。自分のほうへと引き寄せ、耳たぶに軽く噛みついていく。
「てめっ……さっさと挿れろ、マリモ野郎!」
サンジが唸る。どことなく拗ねたような瞳が、真っ直ぐにゾロを見据え、待ち構えている。
「なんだ、自分で挿れるんじゃなかったのか?」
片方の眉をくい、と吊り上げ、ゾロは笑った。
「はっ……ぅぅ……」
唇の端を噛み締め、サンジはゾロの厚い胸板を両手で押し返した。
ゴロリと床に転がされたサンジの後孔に、ゾロのものが勢いよく突き立てられたのだ。いつもより大きく怒張したものが、容赦なくサンジの後ろを責め立てる。反射的にサンジは、ゾロを押し返そうとする。
「っ……痛ってぇ……」
ねじ込まれる感触に逆らうかのように、内壁がゾロのペニスをぎりぎりと締め付ける。
サンジは慌てて腰を浮かせた。それから、再びゆっくりと、ゾロの腰に足を絡めていく。潤滑剤もなく、潤ってもいない後孔に容赦なく侵入してくる熱い塊に、皮膚の裂けるピリピリとした感触がした。
最初は痛みを感じるだけの行為だったが、そのうちに何もかもが一緒くたになって快感へとかわっていく。後孔の痛みも、迫り上がってくる胃袋と微かな吐き気までもが、サンジの身体を満たしていく。今、自分がこの男を抱いているのだという気持ちがサンジの中に広がっていく。
煙草が吸いたいと、ふと、そんなことを思った。しかし煙草を吸う代わりにサンジは、ゾロの唇を吸った。ちゅ、と音を立てて唇を合わせると、口の中に唾液を流し込まれた。甘い……甘い、ゾロの味だ。
そっと、ゾロの背に手を回した。
目をつむると、深く呼吸する。
全身でゾロにしがみつくと、サンジは掠れた声をあげはじめた。
痛みよりも、快楽のほうが大きかった。自らすすんで腰を振ると、内壁を抉るようにしてゾロの竿が圧迫してくるのが感じられた。竿の先端が前立腺の裏側を通過する時には、ゾロは殊更ゆっくりと、焦らすように腰を抜き差しした。焦れたサンジは新鮮な空気を求めて口をパクパクとさせている。
このまま、融けてしまいたいとサンジは思った。
二人の腹の間では、先走りでぐっしょりとなったサンジのペニスが今にも弾けてしまいそうだ。
突き上げられる感触に、何もかもがひとつに混ざり合っていく──
眼を開けると、外はまだ暗かった。
夜中を少し過ぎた頃だろうか、窓から入り込んでくる潮風は肌に冷たく感じられる。
ふと気配に気付き身じろぎをすると、様子を窺うようにしてこちらを覗き込んでいたゾロと目が合った。
「なんだ、起きてたのかよ」
そう言ったサンジの声はひび割れて弱々しい。きっと、散々、よがり声をあげ続けたせいだろうとサンジは密かに舌打ちをする。
ゾロは黙っていた。暗がりの中、ゾロの目だけが、ほんのりと紅い血の色をして光って見える。
「まだ、一日あるな」
囁くようにゾロが言った。
日頃、サンジよりも淡泊に見えるゾロからの誘いのように取れる言葉だった。
「──…だな」
ゴロン、と身体ごとゾロのほうに向き直ると、サンジは目の前の頬にそっと唇を寄せた。
ゾロの身体は体温が高かった。裸で、ケットも下半身を覆うばかりの申し訳程度のかぶりかたをしているというのに、小さな子のように体温が高いのだ。肌寒さを感じていたサンジは、そのままゾロの胸板に身体ごと乗り上げ、しがみついていく。
「せっかくの休暇だしな。限界にチャレンジしてみようぜ」
いいことを思いついたとばかりに、サンジが呟く。
夜明けまでにはまだたっぷりと時間があったし、何よりも、休暇はまだ一日、残っていた。
END
(H16.6.12)
|