明け方のひやりとした空気に目を覚ますと、すぐ隣にジョットが眠っていた。整った顔立ちは穏やかで、疲れているのかピクリとも動かない。
物音ひとつない世界の中で、恋人は静かに眠っている。
頬にかかる後れ毛を指で掬って撫で付けてやると、くすぐったいのか、物欲しげにふっと唇が開いた。
男の形のよい薄い唇に、Gはそっとくちづけを落とす。音のない世界の中でちゅ、と色めいた音を立ててゆっくりと唇を離すと、焔色の恋人の瞳がぱちりと開いてこちらを見つめる。
「おはよう、G」
艶やかな声で囁かれ、Gは咄嗟に眉間に皺を寄せる。
きっとわざとだ。この男は、自分が後ろめたいことをやらかすだろうことを、知っていた。
そうして、やらかした後でこちらがあたふたする様を眺めて楽しもうとしていたのだ。
「起きていたのなら起きていたと言え」
ムッとして低い声で呟くと、ジョットは爽やかな笑みを浮かべる。
「可愛らしいことを言うのだな」
手を伸ばしたジョットの指先が、するりとGの唇を掠めていく。
その瞬間、いたたまれないような恥ずかしさがGの中に込み上げてきてあっと思った時には顔だけでなく首も耳も発火しそうなほど熱く火照っていた。
「そんなところも、どうせ無意識なんだろうな」
ふっと笑ったジョットの眼差しが愛しそうにこちらを見つめてくる。
悔しくて、腹立たしくて、それなのに嬉しくて。ついついぷい、とそっぽを向いてしまう天の邪鬼なGだった。
(2017.11.25)
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