昔々あるところにGという恐ろしくも美しい青年がいました。
人の心を持たないという噂の青年は誰に対しても冷たく、相手を傷付けるような言葉と態度で接することで有名でした。
ある日、Gの元にジョットと呼ばれる青年がやって来ました。ジョットは、噂されているGの人となりを確かめようとして青年の元を訪れたのでした。青年が、本当に噂通りの冷たい男なのかどうか、自分の目で見てみたいとジョットは思っていたのです。
噂の青年はなるほど、美しく冷たい表情をしていました。
感情がないのかと言えば、どうもそうではないらしい。どうやら青年は感情を表に出すのが苦手なようでした。
彼の感情に触れてみたい、冷たい横顔にやわらかな笑みが浮かぶところを見てみたい。そう思ったジョットは、来る日も来る日も青年の元を訪れました。晴れの日も、雨の日も。真夏の暑さにも、真冬の寒さにも屈することなく、ジョットは毎日のように青年の元を訪れます。
やがて青年の氷のように頑なだった心は少しずつ解れていき、いつしか、大輪の花のような艶やかな笑みをジョットに向けてくるようになったのです。
そうしてジョットは、青年の心を手に入れました。
昔話の締めくくりは、めでたし、めでたし。
ジョットはいつまでも青年と共に生涯を過ごしたということです──
(2017.12.26)
(2018.7.1加筆修正)
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