「キスの味」

  ネクタイをぐい、と引っ張られた途端にジョットはたたらを踏んだ。
  よろけたところをGの腕がぐい、と首にしがみついてきて、口のなかいっぱいに煙草の香りが広がる。
  思わず噎せこんで身を離すと、ことの張本人は涼しい顔をしてニヤニヤと笑っていた。
  ファーストキスだったのにと、ぼんやりとジョットは思う。それでも何故だか腹は立たない。どうしてだろう。
  幼い頃から共に育ってきた仲だからだろうか、Gに何をされようとも本気で怒ることは一度としてなかったように思う。きっと、この男になら裏切られたとしても自分は赦すことができるだろう。それほどまでに自分は、彼にすべてを委ね切っている。
「……G」
  声をかけるとジョットは、今度は自分のほうから男の顎をくい、と持ち上げ、唇を寄せていく。
  煙草とアマレットのふくよかな香りが口の中に広がり、それと同時にジョットはこの上ない幸福感に包まれていた。



(2017.12.26)
(2018.1.25改稿)



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