夜も更けて表の通りの喧騒が引いてきた頃に、誰かが訪ねてきた。
怪訝に思いながらもジョットがドアを開けると、不機嫌そうな様子のGが立ち尽くしている。 「どうかしたのか?」
声をかけながらジョットは、顔馴染みの男を家の中へと招き入れる。いつもなら合鍵を使って勝手に上がり込んでいるはずの男が珍しいこともあるものだと思っていると、ぎこちない動きで腕にしがみついてくる。
どこか悪いところでも、とGの顔を覗き込もうとした途端、男の顔が耳元に寄せられた。
「……トリックオアトリート」
掠れる声が耳の中に吹き込まれ、その途端、ジョットの腹の奥底でカッ、と熱が渦巻く。
普段のストイックな様子から一変した色香に、たまらないなと口の中でジョットは呟く。
腕にしがみついたGはさらに身を伸ばしてジョットの肩を抱き締めて、首筋に唇を押し当ててくる。
「トリックオアトリート?」
再び尋ねられ、ジョットは躊躇うことなく返した。
「スイーツを」
甘い甘い、時間が欲しい。二人だけの、濃厚な時間が。そんな願いを込めてジョットは、情人の瞳を覗き込む。
「……馬鹿か」
拗ねたようなGの呟きが聞こえたかと思うと、首筋にチクリと痛みを感じる。
甘咬みされた皮膚が、熱っぽく感じられる。
ジョットは口元に淡い笑みを浮かべると、Gの腰へと腕を回し、引き寄せた。
(2018.10.31)
(2018.11.6加筆)
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