焦れったくなるほどゆっくりと綱吉の顔が近づいてきて、獄寺の唇に、唇で触れた。
「ん……」
クチュリ、と湿った音がする。
獄寺は手を伸ばして、綱吉のシャツを掴んだ。
ぐい、と襟元を引く手に力を入れると、綱吉のシャツがするりと脱げ落ちた。
中学生の頃と比べると、綱吉の体は筋肉もついて、そこそこ均整のとれた体つきになった。あの頃はただただひ弱だった綱吉だが、少しは強くなっただろうか? 肉体的にも、精神的にも、成長しただろうか?
息継ぎの合間に獄寺の顔を盗み見ると、目元が淡い朱色に色づいていた。
「……灯り、消しませんか?」
はぁ、と息を吐き出して、獄寺が言う。
「ダメだよ。俺は全部見たいんだから、灯りはこのままで」
さりげなく押しの強さを全面に出して、綱吉は笑う。
その素直そうな真っ直ぐな笑みに、獄寺はそれ以上は言い返すことができない。
「じゃあ……いいっス」
恥ずかしそうに俯いた獄寺の顎先を指でくい、とすくいあげて、綱吉はまた、笑う。
明日のこの時間には、獄寺は日本にはいない。綱吉の与えた任務を遂行するため、獄寺は再び海外へと出かけていくことになっている。今度は、どこの国だっただろうか。
「獄寺君がいない間、君のにおいを忘れないようにしたいんだ」
そう言って綱吉は、獄寺の白い首筋に鼻先を埋めた。
深く獄寺の体臭を吸い込むと、綱吉の鼻の奥がツンとなった。コロンの香りに、微かな煙草のにおいが入り交じった、獄寺のにおい。しばらくはこのにおいともお別れなのかと思うと、残念でならない。せっかく気持ちが通じ合ったばかりだというのに、こんなふうにして離れなければならないとは。
「俺も……あなたのにおい、忘れないようにします」
そう言うと獄寺は、綱吉の体にしがみついた。
綱吉がそっと獄寺の肩を押す。綱吉の意図を正しく感じ取った獄寺は、ベッドに上体を預けた。
「十代目……」
掠れた声で、呼ばれる。
獄寺の白い肌は、よく見るとあちこちに小さな傷跡が残っている。綱吉の盾となり、槍となり戦う獄寺の体には、生傷が絶えない。傷のひとつひとつを指先で丁寧になぞり、さらに唇で触れていく。
白い体がビクビクと震えるのが、綱吉には愛しく思えた。
「明日からの任務、無茶はしないように」
綱吉の声も、いつの間にか掠れていた。
「……はい」
頷く獄寺の腹を指先で優しくなぞりあげると、白い喉が大きく上下した。
「声、出してもいいよ」
君の声を聞きたいと綱吉が真面目な顔で告げると、獄寺はほんのりと首筋を薄桃色に染めた。 電気を消さずにいてよかったと、綱吉は頭の隅で考える。獄寺の頼みを聞いていたら、今頃はこの行為ももっと先に進んでいたかもしれない。
しかし、それでは駄目なのだ。
互いの行動のひとつひとつを、目に焼き付けておきたいと、綱吉は思っていた。
離れている期間があまりにも長すぎる。次に獄寺が日本に戻ってくるのは、半年近く先になる。
それまでの間、獄寺のことを忘れないようにしたいと綱吉は思っていた。
抱きしめた瞬間のふわりと漂う煙草とコロンの香りや、時折見せる弱々しい声の調子や、濡れたようなエメラルドの瞳や、唇。次に会う時まで自分は、ひとつ残らず覚えていられるだろうか?
「……十代目」
弱々しい獄寺の声に、綱吉は柔らかな笑みで返した。
大切な時間だから、急ぎたくはない。
白い腹に唇を落とすと綱吉は、ごそごそと獄寺の下肢をまさぐった。
シーツの上で獄寺は、大きく体を捩った。
恥ずかしいのは自分だけではないと言い聞かせながらも、どうにも綱吉を直視することができない。
獄寺の足を大きく左右に開いた綱吉は、その中心で勃ちあがったものに唇を寄せた。
先端をペロリとひと舐めして、綱吉は笑う。
「じゅ……十代目……」
掠れた声が、困ったように告げる。
「灯り……やっぱり、消してください」
節くれ立った両手で顔を覆い、獄寺は言った。
綱吉は喉の奥で微かに笑い声をあげると、獄寺の性器をきゅっと握りしめた。
「ダメだって言っただろう?」
そう言うと亀頭に唇を押し当て、きつく割れ目を吸い上げる。
「あ……っ……!」
獄寺の太股が震えた。もどかしげにシーツを蹴りあげ、腰を突き出すようにしてもぞもぞと体を動かし、与えられる快感から逃れようとする。
「キモチいい?」
と、綱吉の手が、握りしめた竿を上下して扱き始める。
チュ、チュ、と音を立てて先端を吸い上げられると、それだけで獄寺の腹筋がヒクヒクとひくついた。
「十代…目……」
泣いているのかと思うような、弱々しく掠れた獄寺の声に、綱吉は顔を上げる。
首筋から耳たぶまでを真っ赤に染めた獄寺は、時折、しゃくりあげている。それでも、態度でも言葉でもはっきりと綱吉を拒絶しようとすることはない。
綱吉は獄寺の竿と片方の玉袋をきゅっと片手で鷲掴みにした。そうしておいて、もう片方の玉袋を口に含むと、丁寧に舌で転がす。
「ぃ……ぁ、あ……」
獄寺の割れ目がピクンとひくついて、先走りが滲み出てくる。
尚も熱心に綱吉が玉袋をねぶっていると、そのうちに先走りがたらたらと竿を伝い落ちてきた。
滴り落ちる先走りを指ですくいとると綱吉は、それを獄寺の尻になすりつけた。
「──十代目」
獄寺の声は、微かに震えている。
「無理強いはしない。約束するよ」
宥めるように優しく告げると、綱吉はそっと指を突き立てる。
先走りのぬるりとした感触と共に指が、獄寺の中に入ってくる。
「っ……」
獄寺の節くれ立った白い指の隙間から、唇を噛み締める様が見えた。色っぽいと、綱吉は思う。何故こうも、艶めいた仕草をするのだろうか、この男は。
「そんなに力いっぱい噛み締めたら、唇が切れるよ」
綱吉の言葉に、獄寺の指が反応してピクリと動いた。
不意に綱吉の胸の内に、獄寺に対する愛しさがこみあげてくる。
目の前の男が必死になって自分を受け入れようとしているのだと思うと、嬉しくてたまらない。
「部屋……暗く、して…くだ、さ……」
控えめな抵抗が、いつもの獄寺らしくなくて、綱吉は喉の奥で笑った。
「灯りがついてようが、ついてまいが、関係ない。俺は、獄寺君を見ていたい。今、この場で、俺に抱かれている獄寺君を見ていたいんだ」
そう言って綱吉は、獄寺の中に差し込んだ指で中をぐりぐりと掻き混ぜた。
グチュグチュと湿った音がするのは、潤滑油がわりの先走りの立てる音だ。
中指で内壁をなぞるようにしてぐい、と一点を押す。
「あ……」
唇から声が洩れる。獄寺の声は掠れて弱々しいが、拒絶の言葉を口にすることはない。
頑なだなと思いながら綱吉は、一点をぐりぐりと指の腹で擦った。
「ねえ、獄寺君。ここ? ここが、いいんだ?」
尋ねながら、前立腺のあたりをもう少し強い力で押してやる。
途端に、獄寺の膝がカクカクと笑う。
「あ、あああ……」
噛み締めていた唇を綻ばせ、獄寺は苦しそうに声をあげた。
獄寺の肌の白さに、綱吉は目を細める。
じっとりと汗ばんだ獄寺の肌は、淡く緋色に染まっている。
不意に、この肌に所有の印を残したいと綱吉は思った。
ぐい、と太股を押し上げ、内側の柔らかい肉に唇を押しつける。
「ん、ぁ……」
嫌とは言わないところが、何とも可愛らしい。綱吉は血が滲むほどきつく吸い上げ、白い肌を鬱血させた。これは、自分のものだ。肌に残された朱色の刻印に唇を押し当て、綱吉はその痕をペロリと舐めた。
いつの間にか息の上がっていた獄寺が、体を捩った。綱吉から逃げ出すようにして、四つん這いになってベッドの端へ移動しようとする。
「逃がさないよ」
そう言って綱吉は、獄寺の腰に腕を絡めた。空いている方の手で先走りでぐっしょりと濡れた性器を扱きながら、双丘にくちづける。
手の中に握りしめたものを擦ると、そのたびにぐちゅぐちゅと卑猥な音がした。
獄寺が息を飲み込む音が聞こえてくるようだと、綱吉は思った。
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