勢いよく獄寺は身を起こした。
体の中を駆け巡る熱に浮かされるようにして獄寺は、ほとんど乱れていない綱吉の浴衣に手をかける。
「獄寺君?」
有無を言わさずぐい、と浴衣を左右に大きく開くと獄寺は、綱吉の鎖骨のあたりに唇を這わせた。ねっとりと舌で舐めあげながら、帯に触れた。
「十代目も脱いでください」
言いながら獄寺は、綱吉の帯を解こうと手を動かす。なかなか解けないのは、指が震えているからだ。寒いわけでもないのに緊張して、微かに指先が震えている。一向に帯は解けない。
「ね、俺も獄寺君の浴衣、脱がしていい?」
綱吉が尋ねる。
眉間に皺を寄せたまま獄寺は、ちらりと綱吉を見た。
「それよりも先に、こっち手伝ってくださいよ、十代目」
拗ねたように告げる獄寺の額に軽くキスをして、綱吉は自分の帯を解き始める。
シュル、と衣擦れの音がして、綱吉の帯が解けた。すかさず獄寺は、綱吉の浴衣を剥ぎ取って布団の上に投げ出す。その合間に綱吉は、獄寺の帯を解いていた。二人分の帯と浴衣が布団の上に投げ出され、二人の周囲で弧を描いている。まるで波打つ水面のような様子に、獄寺は小さく微笑んだ。
向き合ったまま、どちらからともなく顔を寄せ合い、唇を合わせた。
チュ、と音を立ててなんども唇を合わせる。綱吉の手は、獄寺の肩に軽くかかっているだけだ。獄寺は、自分の手のやり場に困った。しばらく体のあちこちを彷徨った挙げ句、綱吉の腕に掴まるような位置に落ち着いた。収まりはよくないが、しかたがない。
キスを返そうとすると、するりと唇が離れていく。
獄寺の体がふるりと震えた。
ゆっくりと、綱吉の体に唇を這わせる。
首筋、胸、腹、へその脇を通って生い茂る陰毛に鼻先を突っ込み、勃ち上がったペニスを口に含んだ。
青臭くて、微かに苦い味が獄寺の口の中に広がっていく。
とうていおいしいとは思えないえぐみのある味に、獄寺は眉間の皺を深くする。
「無理しなくていいよ、獄寺君」
やさしい手つきで髪を梳く綱吉が、静かに告げる。
わかっていると、獄寺はちらりと上目遣いに綱吉を見遣る。
綱吉は熱心に獄寺を見つめていた。榛色の瞳は、少しオレンジがかっている。炎の色だと獄寺は思う。あたたかな色だ。
「……俺が、したいんです」
唇を離し、獄寺はうつむきがちに言った。見られているのだと思うと、恥ずかしくてたまらない。なんどもしていることとは言え、こんなふうに普段と違うシチュエーションで見られていると、体の底に熱い塊が集まってくるような感じがする。
「どう、したいの?」
綱吉の指が、するりと獄寺の顎先をなぞる。くい、と顎を引き上げられ、心持ち顔をあげると唇を奪われた。深く唇を合わせたかと思うと、そのまま綱吉の唇が歯列を割って侵入してくる。
「ん、ぅ……」
流れ込んでくる綱吉の唾液は甘かった。
「んんっ!」
甘えるように獄寺は鼻にかかった声をあげた。それから、綱吉の胸にのしかかるようにして体重をかけていく。肩口にしがみついて自分から唇をさらに深く合わせると、喉の奥で綱吉が笑ったように感じられた。
綱吉は、獄寺を胸に抱き込んだままドサリと布団に倒れ込んだ。
しばらくは獄寺の銀髪をやさしいリズムで梳いていたが、先に気まずさを感じた獄寺がもぞもぞと身を動かすと、髪にキスをされた。
「続き、待ってるんだけど?」
そう言って綱吉は、獄寺の手を取った。
指先に、綱吉の吐息がかかる。獄寺はわずかに手を引こうとするが、綱吉の手の力は強かった。
「あ……」
綱吉の唇が指先に触れると、ドキドキした。体の中の熱が、どこからかじわりと沸き上がってきて獄寺を満たしていく。
「っ、ぅ……」
はあ、と息を吐き出すと、自分ひとりが興奮しているようで、獄寺はわけもなく恥ずかしかった。
布団の上で仰向けになった綱吉の腹に乗り上げると、獄寺はまたキスをした。
息があがるまで熱心にキスをして、綱吉の舌を吸い上げ、唾液を交わし合う。唇に触れる綱吉の歯が、こそばゆい。触れるか触れないかの位置で唇を触れ合わせ、互いの吐息を感じた。
目眩がしそうなほど甘い行為に、獄寺は一人で興奮している。
「……十代目」
唇を離し、獄寺は尻の下にある綱吉の高ぶりを感じた。
先ほどからお互いに、相手が音を上げるのを待っている。
「ね、そろそろ挿れてもいい頃だと思うよ、獄寺君」
そう言って綱吉は、獄寺の性器へと手を伸ばす。先端に滲む先走りを人差し指で掬い上げるとそのまま口へと持っていき、ペロリと舐めた。
「甘いよ」
悪戯っぽく笑う綱吉の目は、じっと獄寺を見つめている。
「あ……」
喉がカラカラで、獄寺はなにも言い返すことができない。
「自分で挿れられる?」
尋ねられ、獄寺は小さく頷いた。それぐらい、できない獄寺ではない。綱吉のためならどんなことでもできると獄寺は思っていた。実際、綱吉に言われればどんなことでも獄寺はするだろう。綱吉はニコリと笑うと獄寺の手を取った。
「掴まって」
そう言って綱吉は、獄寺が腰を浮かすのを助けようとする。
従順に獄寺は、心持ち尻を持ち上げた。後ろ手に綱吉の性器を掴むと、軽く扱いた。いつの間にか先走りの滲んでいた綱吉のペニスはすぐにぬめりを帯び、竿の根本までドロドロになった。
獄寺はゆっくりと腰をおろしていく。
「痛かったらやめてもいいよ」
先に綱吉が声をかける。獄寺は「はい」と素直に返事をしたものの、やめるつもりなど毛頭ない。これまでだって、なんどもしてきた。今日だけできないということはないだろう。
グチ、と湿った音がした。
獄寺の尻にあたる硬い感触が、窄まりをこじ開けるかのようにして体の中へと潜り込んでくる。
「あ…あ……」
だらしなく口を開けて声をあげると、獄寺の口の端からたられと涎が零れ落ちる。
「なに、もう感じてんの?」
綱吉が言った。
獄寺は弱々しく首を横に振ると、淡いグリーンの瞳で綱吉を見下ろした。
「ち、が……」
グチュ、グチュ、と湿った音がしている。ピリッとした痛みに獄寺は顔をしかめた。
相変わらず綱吉の手は、やわやわと獄寺の太股を這いずり回っている。直接、触れてくれないもどかしさに、息が早くなり、腰が揺れる。
「や、あぁ……っ!」
自然と獄寺の尻に力が入り、窄まりがキュッと綱吉の性器を締め付けた。
痛みをやりすごすために上体を低くして獄寺は、綱吉の胸にもたれるような姿勢を取る。こうすればあまり痛みを感じないことを、これまでの経験から獄寺は学んでいた。痛くないポイントのようなものがあるのだ。同時にそのポイントが、獄寺の快感ポイントにも繋がっている。
「大丈夫?」
尋ねながらも綱吉は、獄寺の太股を撫でている。肌をなぞり、這い上がるてのひらの感触に獄寺の腕に鳥肌が立つ。
「んん、んっ……」
うずくまるような格好のまま、獄寺は緩慢な動きで腰を揺らす。体の中に潜り込んだ綱吉の性器が、獄寺の内壁を圧迫していた。その形までもはっきりと確かめられるほどピタリと埋め込まれているというのに、痺れるような痛みの向こうには快感が潜んでいる。
「腰、揺れてるよ、獄寺君」
そう言うと綱吉は、獄寺の性器に手を伸ばす。掠めるようにして先端に触れたかと思うとさっと手を引っ込め、獄寺の表情をうかがっている。
「あ……」
触って欲しいと獄寺は思った。直接、自分の性器に触れて欲しい、と。
「もっと?」
尋ねる綱吉の瞳は、悪戯っぽく輝いている。
「もっと……」
と、獄寺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「もっと、触ってください」
そろそろと身を起こすと獄寺は、股の間で勃起しているものが綱吉にはっきりと見えるように、立て膝にして足を開いた。
「ここを、触ってください」
グチグチとはしたない音を立てるほど、触られたい。見せつけるようにゆっくりと獄寺は唇をねぶる。思わせぶりに指先を舐め、ピチャリと水音を立てた。
綱吉の目は、獄寺の瞳に釘付けになったままだ──。
とうとう綱吉の手が獄寺のペニスに触れた。その瞬間、獄寺の体がビクン、と震える。
てのひらで先端を包み込むと、綱吉は弧を描くようにして手全体を動かした。ゆるゆるとした動きに獄寺は、焦れったいようなもどかしいような気持ちを感じた。
知らず知らずのうちに腰が揺らぎ、綱吉の性器を締め付ける。締め付けたところから微かな痛みの入り交じった快感が、獄寺の体の中にじわりじわりと広がり始める。いいや、それ以前から、快感ならとっくに感じている。綱吉に触られるとそれだけで、獄寺の体の中には熱が生まれる。痺れるような小さな熱の塊が少しずつ獄寺の体に広がっていき、いつも最後にはものすごいスピードで駆け巡っている。綱吉の体にしがみついて声をあげると、いっそう気持ちよくなる。どんどん、どんどん気持ちよくなって、急に深いところへと突き落とされる。浮遊感というか、この落ちていく感覚が恐いような、気持ちいいような感じがして獄寺はいつも戸惑ってしまう。
布団の上に波紋のように広がっているのは、脱ぎ捨てた二人の浴衣と帯だ。綱吉は寝そべったまま悠然と獄寺を見つめている。
上体を起こした獄寺は自分の下で仰向けに寝そべる綱吉を見下ろすと、柔らかな笑みを口元に浮かべた。
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