布団の中の温もりが嬉しくて、獄寺はもぞ、と身動ぎをする。あたたかい。
隣で眠る人の様子をこっそりとうかがうと、綱吉はまだ熟睡しているようだった。
「じゅ……綱吉さん……」
小さな声で囁いてみるが、綱吉はそんな獄寺に気付きもせずにぐっすり寝入っている。
「好きです」
今度はもう少し大きな声で告げる。
綱吉の癖のある髪にそっと触れる。猫の毛を思わす柔らかさに、獄寺の口元に微かな笑みが浮かぶ。
この人のこんな無防備な姿を目にする日がくるとは思わなかった。いつもいつも、自分だけが彼に焦がれているのだと思い込んでいた。
きっと、自分のこの想いが報われることはないだろうと 思っていた。
じっと綱吉を眺めているうちに獄寺の脳裏に昨夜のあれやこれやがよみがえってくる。
三ヶ月ぶりにキスされたこと。拗ねてぐずる自分を羽交い締めにして、熱っぽく「好きだ」と告げた綱吉に乱暴にされたこと。それでも触れられることが嬉しくて自分からもっともっとと求めてしまったこと。最後には自分から綱吉を受け入れ、感じまくって潮を吹くまで何度も達したこと。
思い返せば恥ずかしくてたまらないあれこれが頭の中に広がっていき、居たたまれなくなってしまう。
何もかも初めてだったというのに、だ。
「あー……」
どうしよう、と獄寺は口の中で呟いた。
「やべぇ……」
肌を合わせる前と後では、好きの度合いが変わるだなんて思ってもいなかった。こんなに……よりいっそう好きになるだなんて、考えもしなかった。
そろそろと体の向きを変え、獄寺がベッドから抜け出そうとした拍子にぐい、と腰に腕がまわされた。綱吉の腕だ。
「こんな朝早くからどこに行くんだ、隼人」
しかもハイパー化している。いったいいつの間に、と思わずにいられない。
「あ、や、その……お、おはようございます、十代目。十代目に挨拶をと思いまして……」
苦し紛れに言い訳をすると、背後から肩口にちゅ、とキスを落とされる。
「おはよう、隼人」
肩の皮膚に歯を当てたまま綱吉が鷹揚に返してくる。
獄寺は小さく身体を震わせた。こんなことをされたら、また、綱吉に抱かれたくなってしまうではないか。
「あ、の……」
言いかけた言葉はしかし、するりと腹を撫でて這い上がった指先が乳首をつまみ上げた瞬間、止まってしまった。
「……っ」
ひくん、と体が大きく跳ね、知らず知らずのうちに綱吉のほうへと尻を押し付けてしまう。
「また、したくなった?」
尋ねながらも綱吉の手は獄寺の乳首をくにゅくにゅと押し潰し、愛撫している。
「や、あの……」
綱吉ともう一度抱き合いたい。当然だ。
獄寺は口の中にこみあげてきた唾を音を立てて飲み込んだ。
(2019.11.10)
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