「十代目、デザートのプリンっス」
そう言うと獄寺は、冷蔵庫から涼しげなガラスの器に盛り付けたプリンを取り出し、綱吉の前へとそっと置く。
「これ、って……」
コンビニやスーパーで見かけるようなごく一般的な小さなプリンではなく、丼鉢ほどの大きさのプリンにホイップクリームと季節の果物をあしらった、ボリューム満点の手作りプリンのように思われる。
「デザート、だよね?」
大きいな、と綱吉は思った。
夕食はたっぷりのパスタだった。スープとサラダ、パンもあった。お腹がはち切れそうだとたった今、話していたばかりだ。
「はい、デザートっス」
にこにこと満面の笑みを浮かべて獄寺が返す。
無理……綱吉は口の中で呟いた。
無理だろ、この大きさ。お腹が苦しいんだけど。そう口の中で小さく呟きながらも綱吉は愛想笑いを浮かべて獄寺を見つめる。
「ちょっと……食べすぎたのかな、お腹が大きいかな、なんて……」
ははっ、と乾いた笑いを綱吉が溢した途端に獄寺の顔が残念そうに沈んだ表情にかわった。
それにしても、いったいいつの間にこんなに腕を上げたのだろう。
同居を始めた頃には料理なんてまだまだ初心者で、綱吉とどっこいどっこいだったのに。
「あ、あのっ、嫌だとかそんなんじゃなくて、単にお腹が苦しいから……」
「後で、お腹が空いたら一緒に食べませんか?」
不意に獄寺が告げた。
少しはにかむような、照れくさそうなその様子に、こちらまで恥ずかしくなってしまいそうだ。
「う…うん」
頷いて、綱吉は「じゃあ、後で一緒に食べよう」と返した。
(2020.8.17)
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