夕べはやりすぎたと、朝になってから綱吉に謝られた。
謝られても、謝られなくても、自分はとっくに許している。
元々、綱吉のことが好きで好きで、たまらなかったのだ。これしきのことで綱吉を嫌いになるはずがない。
「今日はもう、無茶なことはしないから」
夕方を過ぎて、先に上がるよと声をかけてきた綱吉にそう耳打ちをされて獄寺は、微かに頷いた。あまり期待はしていなかったが。
前の晩に散々無茶なことをされた挙げ句、明け方近くまで眠らせてもらえなかった。そんな状態で朝から慌ただしく任務についたわけだが、いろいろと弊害があったのだ。綱吉には口が裂けても言えないことだが。
任務中にやらかした数々のミスに加えて、報告書の作成に手間取った獄寺は、フラフラの状態で真夜中近くになってようやく部屋に戻ってくることができた。
先に部屋に戻っていた綱吉は、寝室でのんびりと読書中だった。
「……ただいま戻りました」
ぐったりとした様子で獄寺が声をかけると、綱吉は頁を繰る手を止め、顔を上げた。
「おかえり、獄寺君。疲れてるみたいだけど、大丈夫?」
疲れの原因の九割は綱吉だ。だが、獄寺にそれを指摘するだけの度胸はない。
「はあ……まあ、色々とありまして」
いや、言おうと思えば言えるのだ。だが、一度でも口にしてしまえば綱吉が気にするだろう。それを考えると迂闊に事実を正直に告げるようなことは獄寺にはできなかった。
「大丈夫? シャワー、一緒に浴びてあげようか?」
親切で言ってくれているのだろうことはわかったが、昨夜の暴挙がふと頭の隅を掠めていく。
「ありがとうございます。でも、大丈夫っスよ、十代目」
そう告げると獄寺は、そそくさと一人でバスルームへと足を向けた。
昨日のようなことはしばらくはご免だった。あれでは、体がいくつあっても足りないだろう。
部屋に戻ると照明は落とされ薄暗くなっていた。
綱吉はベッドに転がって、先に眠っているのだろうか。
そうであってくれたらいいのにとほんの少しだけ思いながら残された灯りを消してベッドに潜り込むと、すぐに綱吉の腕が体を抱きしめてくる。
「起きてらしたんですか」
しばらくごそごそとして獄寺は、横臥したまま綱吉の胸に背中を押しつける格好を取る。 背中から回された腕に手をかけて獄寺が指を絡めると、首筋に綱吉の吐息がかかった。
「昨日みたいなことはしないから、ちょっとだけシてもいい?」
ちょっとだけでもガッツリでも、今夜は勘弁してほしいのが獄寺の本音だが、綱吉にお願いされたら聞かないわけにはいかないだろう。
「……ちょっとだけなら」
掠れた声で獄寺が返すと、すぐにパジャマの裾から綱吉の手が潜り込んでくる。
脇腹をなぞり、少しだけ上へ這い進んで乳首に触れてきた。指先でコロコロと先端の部分を転がされると、獄寺の下腹にゆっくりと熱が集まりだす。
「ん……」
拳を作って口元に当てた。手の甲を押し当て、歯を立てる。そうしておけば、くぐもった声をあげることはあっても、昨日のようなあからさまな声をあげることはないだろう。
「今日は、ゆっくりするから」
言いながら綱吉は、もう一方の手をそろりそろりとパジャマ下に潜り込ませていく。下着に触れたところで、上からなぞろうか直接触ろうか、一瞬考える間があったように獄寺には思えた。下着のゴムを指先で弄びながら、綱吉は乳首を何度も転がしてくる。
「っ……ぁ」
もぞ、と腰を動かすと、背後の綱吉に尻を押しつける格好になった。
「……気持ちいい?」
耳元にねっとりとした囁きが吹き込まれ、獄寺はコクコクと頷いた。
「もっとしてもいい?」
どちらの手のことを言っているのだろうと、焦れる頭で獄寺はぼんやりと考える。
「下……触って、ください……」
先を促すと、下着の上から綱吉の指が触れてきた。獄寺の性器を指でカリカリと引っ掻いたり、てのひらでなぞったりしてくる。
「ん……っ、く……」
腰から爪先にかけて、快感の波が走り抜けていく。早々と獄寺の性器は硬くなりかけていたがが、先走りが滲むほどではない。まだ、足りない。もう少し力を入れて触れてくれたなら、もっと気持ちよくなることができるのに。もぞもぞと尻を揺らして、綱吉の腰に押しつけていく。そのうちに、綱吉の足が獄寺の足の間に割り込んできた。
「ぁ……触って……」
乳首に触れる綱吉の手をぎゅっと握りしめて、獄寺が上擦った声で訴える。
「どこに?」
尻に当たっているのは、綱吉の高ぶりだ。もう硬くなって、大きくなり始めているのが感じられる。
「う……後ろ、を……触ってください……」
ただ撫でられるだけでは、満足できない。焦らすような綱吉の手の動きだけでは、獄寺が満足できるほどの快感を与えてはくれない。もっと直接的に、触れて欲しい。
言いながら綱吉の太股に自らの太股をすり寄せる。
綱吉の手が、今度は遠慮なく下着の上から獄寺の性器を布ごと包み込み、大きく手をスライドさせてきた。半勃ちの状態だった獄寺のペニスが、ひとなぞりごとに硬く張り詰めていく。
「ん、ぁ……」
胸と前とを弄られて、獄寺の性器が完全に上を向いた。下着の中で形を変え、ゴムの隙間からちょろりと先端を覗かせている。
「もう、濡れてるの?」
からかうように綱吉の指が先端をぐりぐりと苛めてくる。
大きな手から逃れようと体を反らそうとするが、背後の綱吉の体に阻まれて、獄寺は逃げることができない。
「やっ……」
グチュ、グチュ、と湿った音がして、快感を堪えて獄寺が奥歯を噛みしめようとした瞬間、綱吉の手の中に白濁を放ってしまう。
ビクン、と腰が跳ねて、同時に獄寺は拳を当てた唇の端から嬌声を洩らしていた。
獄寺の放った白濁をてのひらで受け止めた綱吉は、その手を下着の中へと潜り込ませてきた。
クチュ、と湿った音を立てて獄寺の窄まった部分に、綱吉の指が一本、突き立てられる。獄寺自身の白濁で湿っているからだろうか、指はすんなりと中に潜り込んでくる。
「んっ……」
クチクチと音を立てて入り口の浅いところを擦られた。執拗に指が内側を行き来し、敏感な部分を引っ掻いてくる。もどかしくなって腰を揺らすと、クスッと笑った綱吉の吐息が肩口にかかった。 「我慢できない?」
尋ねられ、獄寺はコクコクと頷いた。
焦れったくて、中がムズムズする。もっと奥に触れて欲しいのに、綱吉の指は意地悪く肝心のところには触れようとはしてくれない。
「中に……」
シーツに顔を押しつけ、獄寺は弱々しく囁いた。
「中に、挿れてください……」
「無理はさせられないからね、今日は指だけ」
言いながら綱吉は、指を引きずり出そうとする。襞の入り口に指を引っかけて、指の先だけで中をくりくりと擦られ、獄寺は体を捩った。
「んんっ、……もっ、や」
綱吉の太股を自分の太股でぐっと挟み込み、尻を動かす。綱吉の指が心持ち奥にめり込んでくるが、またしても引き抜かれそうになり、獄寺は咄嗟にその手を自分の手で掴んでいた。
「中に、ちゃんと挿れてください。十代目の……その、大きなのを……」
「指じゃなくて?」
尋ねられ、獄寺は素直に頷いた。
「十代目の、大きいのを……中に、挿れてください……」
羞恥を堪えながら獄寺が告げると、綱吉の手が引き抜かれた。すぐに獄寺の下着が半分だけずり下ろされ、手探りで綱吉の性器が尻に宛われる。
「ゆっくり挿れるから」
そう言い置いて、綱吉の腰が押し進められる。
いつの間にか硬く張り詰めていた綱吉の性器が、ぬぷっ、と窄まりの中に突き立てられ、奥へと押し込まれていく。
ゆっくりと、ゆっくりと……。
獄寺は小さく身震いをした。
硬くて張りのあるものに中が満たされていく満足感のようなものが、綱吉によって与えられる痛みと共に体の中に広がっていく。
「あ……ぁ」
奥近くまでねじ込まれ、体がピタリと密着した。
絡ませた足が少し痛かったが、それぐらいは構わない。綱吉に動いて欲しくて腰を揺らすと、ズン、と奥を擦られる。ひと突きひと突きはそう激しいものではなかったが、ゆるゆると腰が動くと、そのたびに重い衝撃が一拍遅れてやってくる。
「ん、く……」
知らず知らずのうちに獄寺の中が、綱吉の竿を締めつける。
しかしまだ、足りない。
もっと、と獄寺は尻をさらに綱吉のほうへと押しつけた。
射精させてもらえないままに腰を揺さぶられ、奥を擦られ続けた。
もっと奥のほうを突いてほしいのに、二人とも横臥した状態だからか、あまり深いところまでは届かないようで、獄寺はもどかしい思いをした。
「じゅ……十代目……」
体を捻って綱吉に尻を押しつけ、獄寺は自分から腰を揺らした。自分でもその動きが、どれだけ卑猥な動きかはわかっている。それでも足りないのだ、快感が。
「……昨日の今日だし、獄寺君に無理させられないからね」
涼しい声で綱吉が告げる。
だから、あまり深いところまでは抉れない。この程度の快楽しか与えられないのだと綱吉は暗に言い含めようとする。
「も、いい……から……いいですから、もっと……」
先走りでドロドロになった獄寺の性器がシーツに擦れて、体が小刻みに震えている。それなのに綱吉は、前に触れてもくれないのだ。
「奥……突いて……い、から……無茶苦茶にしていい、から……!」
啜り泣きながら獄寺は訴えた。もどかしくて、体がどうにかなってしまいそうだ。
「じゃあ……獄寺君が動けばいいよ」
そう告げるが早いか綱吉は、獄寺の体を抱えるようにして起き上がった。
急に姿勢がかわったことで、綱吉の竿が今までとは異なる角度で当たった。後ろに綱吉のものを飲み込んだまま座らされ、獄寺は前のめりに倒れそうになる。
「ほら、膝に掴まって」
両の膝を立て膝にして座った綱吉は、よろめく獄寺の体を受け止める。
「しがみついててもいいから、自分で動いてごらん」
言いながら綱吉は、枕元のスイッチを操作して灯りをつけた。途端に獄寺の背後から仄暗い灯りがさしてくる。
「や……灯りは、消してください」
後ろからきっと、綱吉は獄寺の痴態をじっくりと眺めるのだろう。
尻に銜えこんだ肉棒が襞の隙間を出たり入ったりするところを見られるのだと思うと、恥ずかしくてたまらない。そんな獄寺の気持ちに、どうして綱吉は気づいてくれないのだろうか。
「大丈夫だよ。暗くて、獄寺君のシルエットしか見えないから」
綱吉の手が、そっと獄寺の腰のラインをなぞってくる。
「ほら、動いて」
促すように腰に添えた手が、獄寺の体を優しく揺さぶった。
「あ、あ、あ……」
綱吉の膝に上体を預け、しがみついた獄寺は、ゆっくりと腰を動かした。襞を押し広げ、抜け出ていく綱吉の竿が内壁を擦り上げる。しかしまだ、奥には届かない。
「上手だよ、獄寺君」
綱吉の囁きが聞こえてくる。
奥のいいところに綱吉の竿が擦れるように腰を捩ると、尻をなぞられた。尻たぶをつかみ、揉みしだき、時々は窄まったきわどいところまで指でなぞってくる。
「ひ、んっ……」
獄寺は腰を動かし続けた。
硬く張り詰めた前が辛くて、しがみついた綱吉の太股にいつの間にか自分の性器をなすりつけていた。腰を動かし、中を抉られる瞬間に前のめりになると、先端の裏側がちょうど綱吉の太股に擦れて得も言われぬような快感が体の中を駆け抜けていく。
だらしなく口を半開きにして甘い声をあげながら獄寺は、力の入りきらない爪先で何度もシーツを蹴った。
いくら照明が薄暗いからと言っても、きっと後ろから綱吉は見ているはずだ。見られているのだ、この格好を。この痴態を。
「や、も……もう、終わらせて……くださ、い……」
呂律が回らないながらも何とかそう懇願すると、綱吉の両手が、獄寺の尻をぐい、と押し上げた。ズルズルと抜けそうになる竿を獄寺の後ろがぎゅうっ、と締めつけると、今度は腰を掴んで引きずり下ろしてくる。
ずん、といちばん深いところを下から何度も突き上げられ、獄寺は反射的に背を大きく反り返らせた。すがりついた綱吉の太股に、自身の先走りでドロドロになった性器が挟まれ、擦られる。
「駄目……」
うわごとのように口走りながら獄寺は、綱吉の太股に白濁を飛び散らした。
と、同時に爪先がピンと伸びてシーツを大きく蹴った。
「……っ」
体を大きく揺さぶられ、深いところを散々抉られながら獄寺は、意識が朦朧としていくのを感じていた。
しがみついた指先に力を入れようとすると、綱吉の膝に爪が引っかかった。そのまま爪を立てた瞬間、獄寺の腹の中になまあたたかいものが二度、三度と渡って放たれる。
「ん……ん、く……」
ブルッと身を震わせたところで獄寺の力が尽きた。綱吉の膝の上にくずおれると、結合した部分からドロリと中のものが溢れ出すのが感じられた。
(2014.8.18)
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