「お疲れ様」
そう声をかけると綱吉は、ハンドルを握る獄寺の腕をやんわりと掴んだ。
「エネルギー充填させてくれる?」
さっと顔を寄せ、右腕兼恋人の唇を奪おうとしたところで、ぐい、と体が引っ張られるような感じがした。驚いて姿勢を直した綱吉は、シートベルトに今の行為を咎められたのだということに気づいた。
改めて獄寺の顔を見ると、彼はなんとも言えない複雑な表情をして、綱吉をじっと見つめている。
「充填できましたか、今ので」
不服そうに尋ねられ、綱吉は瞬時に自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。
「……いや、ぜんぜん」
シートベルトに咎められ、獄寺には不満がられ、モヤモヤとした気分が押し寄せてくる。
カチャカチャと音を立ててシートベルトを外すと綱吉は、鼻息も荒く言い放った。
「もう一回、いい?」
「あまり何回も聞かれると恥ずかしいので……」
最後のほうは口の中でボソボソと言いながらではあったが、獄寺はわずかに頷いた。
そっと目を閉じ、心持ち綱吉のほうへと顔を傾けてくる。
綱吉は今度こそと身を屈め、獄寺の唇に掠めるようなキスをした。
本音を言うと、もっとキスしたいと思っている。だが、車内の狭さが気になって、それどころではなかった。
「部屋……早く部屋に行こう、獄寺君」
(2013.10.17)
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