目が覚めると、一人だった。
夕べ、一緒に眠ったはずの人の姿は、どこにもない。
寂しいような、だけど少しホッとしたような気持ちになる。
しばらくぼんやりと天井を眺めていた獄寺だったが、そのうちにごそごそと枕元を探り、シガレットケースを取り出す。
寝タバコはやめるようにと再三、綱吉から注意を受けている。とは言うものの、いまだに獄寺はやめることができないでいるのだが。
アッシュトレーを引き寄せて、目覚めの一服を満喫する。深く息を吸い込むと、肺にニコチンが流れ込むような感じがして、ホッとする。目を閉じて煙草の香りに浸っていると、おもむろにドアが開いた。
「獄寺君、起きてる?」
声をかけられ慌てて煙草を隠そうとするが、そんな暇などないことは自分自身がいちばんよくわかっていることだ。
「あ、また寝タバコなんかして」
軽く睨みつけられ、獄寺は居心地の悪さを感じた。
「すんません、十代目」
「寝タバコはやめたほうがいいよ」
いつも言ってるだろう、と、近づいてきた綱吉の手が、獄寺の手から煙草を取り上げる。そうして取り上げた煙草をアッシュトレーの底で躊躇うことなくにじり潰す。
「ああっ!」
最後の一本だったのにとは口にこそしなかったが、綱吉には今の態度でバレたかもしれない。
「まったく。口の中がヤニ臭くなるからダメだって、あんなに言ってるのに」
言いながら綱吉はベッドの端に腰を下ろした。
「すんません」
しょぼくれて謝ると、綱吉の指が獄寺の頬を撫でてくる。
「いいよ、謝らなくても」
そのまま顔が近づいてきたかと思うと、チュッと音を立てて唇を吸われた。
「キスしてくれたら、許してあげる」
自分の唇を指さして、綱吉は嬉しそうにそう言った。
(2013.10.25)
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