「舐めて」

「舐めて」
 そう言われて獄寺はドキリとした。
「ほら、早くしないと……零れちゃうよ」
 綱吉の手が、獄寺の頬に触れる。
「それとも獄寺君、舐めるの嫌?」
 尋ねられ、慌てて獄寺は首を横に振った。
「いえ、そんな!」
 じりじりと綱吉のほうへと顔を寄せていき……目の前に差し出されたものに獄寺は、パクリと食らいついていく。
 じわりと口の中に広がる熱くて甘いその味に、獄寺はゾクリと背筋を震わせた。
「おいしい?」
 綱吉が尋ねかけるのに、獄寺は目尻にうっすらと涙を滲ませてコクコクと頷く。
「んっ……おいひぃです、十代目のチョコバナナ」
 チョコの味が口の中に広がって、泣きそうなほど甘ったるい。
 輸入チョコを大量に購入したからと、ビアンキからお裾分けをもらったのはつい数日前のことだ。以来、毎日チョコを食べているが、いつまで経っても減る気配はない。ここ三日ほど、おやつにチョコ、食後のデザートにチョコとチョコづくしで過ごしているが、そろそろ飽きてしまいそうだ。
 綱吉が手にしたチョコバナナを食べながら獄寺は、「姉貴のやつ、覚えてろよ」と、思わずにはいられなかった。



(2013.10.28)



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