蒸し暑い夜の空気を肌に纏わりつかせて、オレたちは川沿いの道を歩いていく。
たくさんの人が川の上流、花火大会の会場へと向かっていくのに紛れてオレは、獄寺くんの隣を歩いている。
不意にドーン、と鈍い音がして、紺碧の夜空に鮮やかな大輪の花が咲く。
少しゆっくりしすぎたのか、花火大会が始まってしまったらしい。
「綺麗っスね」
隣に立つ獄寺くんが少し掠れる声で呟く。
向こうのほうの夜空に、色とりどりの大輪の花火が浮かんでは消え、浮かんでは消え、パチパチと爆ぜるな微か音を残して流れていくのがぼんやりと見えている。
生暖かい風に紛れて漂ってきた火薬のにおいに目を眇める獄寺くんの横顔に、何故だかオレはムッとなる。花火に、獄寺くんをとられてしまうような気がしたから。
「……うん。綺麗だね」
そう返してオレは、獄寺くんの手をぎゅっと握りしめた。
(2017.8.9)
(2017.12.3改稿)
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