『セックスよりも深く』



  ずるりと引き抜かれた指のかわりに、張りのある固いものがサンジの尻に押し当てられた。
  先走りでぬめるそれを、サンジは躊躇うこともなく身体の中へと飲み込んでいく。
「大丈夫か?」
  心配そうに尋ねたエースの額に、ゴツン、とサンジの額がぶつかってくる。
「いちいち訊くな、そんなこと」
  一気に根本まで飲み込んでしまうと、サンジははあ、と溜息を吐いた。繋がっている感覚に、眩暈がしそうだった。
「訊かなくていいから、動けよ」
  そう言うと、鼻先をエースの頬に寄せる。唇の端でエースの頬に軽く触れると、あやすように優しく体を揺さぶられた。
「っ……あ……」
  咄嗟にエースの肩口を掴むと、サンジは声を押し殺した。ぎゅっ、と閉じた口元に力を込めると、サンジの眉間に皺が寄る。そこへ唇を落としてエースは低く笑った。
「ん……やっ……それ、やめ……」
  余程力を入れているのだろう。サンジの中に潜り込んだエースのペニスがギリギリと締め付けられ、気を抜くとエースの意識まで持っていかれてしまいそうな感じがする。
「ん? 何が?」
  気付かないふりをして、エースは尋ねた。そっと体を揺さぶりながら片手をサンジの背中から脇腹へと這わせると、腹筋がひくついているのが感じられる。穏やかな抱き方をすると、サンジはいつも嫌がった。何が嫌なのかは、エースにもだいたいのところは見当がついていた。
「だ、から……」
  声が震えているのは、快楽をこらえようとしているからだ。無理に我慢することはないのにとエースは、そんなサンジを見て小さく笑った。
「ほら、掴まれ」
  サンジの腰を抱え直すと、エースはチュ、と額にキスをした。



「──もっと、キツくしろよ……」
  勢いよくサンジは、エースの耳朶に噛みついていく。
  耳の中に舌を差し込み、舐め回した。ピチャピチャと音を立てると、くすぐったいのか、エースは首をすぼめてゲラゲラ笑った。
「チェッ、ムードのない……」
  軽く舌打ちをすると、サンジはゆっくりと腰を動かし始める。飲み込んだエースのものをギリギリまで引きずり出すと、入り口の感じるところで先端の部分を堪能した。腰を動かすと、その度に先走りでぬめったサンジのペニスがエースの腹にあたった。
「ヌルヌルしてる……」
  ぽそりとエースが呟いた。
  腹についたサンジの精液を指で掬い取ると、エースはペロリと舌で舐め取る。
「……フレンチドレッシングみたいだな」
  エグみも青臭さも薄いからか、ドレッシングのように感じられる。もしかすると、サンジの精液だからそう思うだけなのだろうか。そんなことを考えながらサンジのペニスをまじまじと見つめていると、ぐい、と頬を引っ張られた。
「よそ見してんじゃねえ」
  拗ねたような目で、サンジが言った。
「ああ、ゴメン」
  すんなりと出てきた謝罪の言葉に、サンジは疑うような眼差しを向ける。
「拗ねるな。もっとキツくしてやるから」
  歯をむき出しにして、エースはニヤリと笑った。



  再びエースのものを根本まで飲み込むと、サンジはゆるゆると腰を押し付けた。
  物足りないのは、エースが動いてくれないからだ。
  赤い舌をちらりとひらめかせて、サンジはエースの首筋に舌を這わせる。
「痕、つけてぇ……」
  不意に呟くとサンジは、エースの胸元を強く吸い上げた。
「こら、やめろ」
  くすぐったそうにエースは笑った。笑いながらエースは、サンジの腰を両側からがしっと鷲掴みにし、激しく揺さぶった。
「あ、あぁ……」
  きゅう、と締め付けがきつくなり、サンジの中に戻り込んだエースの性器が内壁に喰い千切られそうになる。うねうねと蠢きながら内壁は、エースのペニスをさらに奥へと飲み込もうとした。
「エース……エース……」
  無意識のうちにサンジは、エースを締め付けていた。そこここの筋肉に力が入り、身体の中にあるエースのペニスを圧迫する。
  揺さぶられるたびにサンジの黄金色の髪が揺れ、汗の粒が滴り落ちた。
「ぁ……」
  掠れた悲鳴を上げると、サンジは足を大きく開いた。ソファの上では安定感が悪かったが、それをエースの腕力が補った。片腕でサンジの背中を支えると、反り返って今にも爆ぜてしまうそうなサンジのペニスにもう片方の手で触れていく。にちゃにちゃと湿った音を立てながら、サンジの先走りがエースの手で竿全体に塗り込められていく──



  小さな絶頂を迎えた後に、サンジはいっそう大きく体を揺さぶられた。
  飢えていたのは、お互い様だ。
  会えない間も、心の中では相手のことを求めていた。周囲にそうと気付かせない程度の演技は、二人とも身につけている。仲間の何人かは気付いていないはずだ。
  足りなかった水分を植物が取り込むかのように、サンジはエースを求めた。
  股間の湿った音が大きくなり、肉と肉とが激しくぶつかり合った。
  体の中に穿たれた竿の質感と、何度も中を擦り上げていく固さを感じて、サンジは気が済むまで声をあげた。
  ソファから半分ずり落ちるような体勢のまま、最後に大きくエースのペニスがサンジの奥を突き上げた瞬間、サンジは大きな安堵感を感じていた。
  ペニスが爆ぜる瞬間の固さと熱さに、サンジは息も絶え絶えになりながら、大きく喉を喘がせた。
  声は、すっかり枯れていた。



  ようやく呼吸が落ち着いてくると、エースの腕がサンジを引き寄せた。
「……暑苦しい」
  顔をしかめてサンジが呟く。
「後ろ、ベタベタになってるな」
  ニヤニヤと笑いながら、エースの指がサンジの尻の穴に触れてくる。まだ中にエースの竿が入っている。穴の縁をぐるりと指でなぞられ、サンジの全身が大きく震えた。
「バカ、触んなよ」
  口をつきだしてサンジが抗議すると、エースはその唇を軽くついばんだ。
「もっかい、ヤル?」
  尋ねかける声に、サンジは眉をひそめる。
「今は、いい」
  そう言いながらもサンジは腰を押し付け、エースの目を覗き込んでいく。悪戯っぽい笑みを口元に浮かべて、エースがどうするのかを見極めようと、楽しそうに眺めている。試されているのだと気付いたエースは、サンジの片足をぐい、と引き寄せ、肩に担ぎ上げた。
「今、しよう」
  ニヤリと笑ってエースは、サンジの唇を吸った。
「朝までしようぜ」
  クスクスと笑いながらサンジが言い、エースは同意の印にサンジの唇に深いキスをしたのだった。





END
(H20.1.3)



        

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