『Private Birthday 1』



  窓の下から賑やかな声が聞こえてくる。
  ベッドにどさりと転がったゾロは、短髪緑色の頭の下に筋肉質な腕を枕代わりに敷きこむと、じっと天井を見つめた。
  シーズンオフのホテルは閑散としており、今のところ、宿泊客は麦わら海賊団の一行のみとなっている。
  中庭で騒いでいるのはルフィたちだ。サンジの誕生日とかで、昨夕、一行がホテルに転がり込んでからずっと、馬鹿騒ぎを続けている。今もそうだ。
  連中がプールサイドに移動して一息ついたところで、ゾロはこっそりとホテルの部屋に戻ったのだ。
  皆と一緒になって馬鹿騒ぎをするのも楽しいが、時折、こうやって一人になりたくなることがある。
  その場の空気に溶け込むのが嫌なのではない。ただ、自分には合わないと思える時があるというだけだ。
  見上げた天井は、染み一つない。
  悪くはない場所だ。
  どうやって掛け合ったのかは知らないが、ともかく、一人に一部屋の贅沢を味わうことが出来るのは何とも嬉しい限りだった。
  目を閉じるといっそう表の声が大きく響いてくる。
  水の跳ねる音と、仲間たちの喚声。
  彼らと一緒にいるのが嫌なのではない。
  ただ、ごく稀に、一人の時間が欲しくなるというだけで。



  ドアの開く気配がした。
  片目をあけてドアのほうへと視線を向けると、頭から水を滴らせたサンジがこっそりと部屋に入ってくるところだった。頭のてっぺんから足の先まで、全身濡れ鼠だ。
「ひでぇ目にあったよ」
  ゾロの無言の問いかけに気づいたサンジが、ヘヘッと笑って言った。
「あいつらは?」
  と、ゾロ。
「さあ、まだ遊ぶ気なんじゃないか? ルフィのやつ、カナヅチのくせして俺をプールに突き落としやがった。腹いせに沈めてやったから、もうしばらくは皆で楽しくじゃれ合っているはずだ」
  と、サンジは濡れたシャツを脱ぎながらシャワールームへと足を向ける。
  サンジの裸の背は、あまり肉付きがいいとはいえない。骨と皮だけのような身体に筋肉がついているのはどうもギスギスしていて抱き心地が悪そうだ。実際、サンジと抱き合った時にあちこちの骨が当たって痛いのをゾロは知っている。それでも、こんなにも痩せているのに、サンジと抱き合うとしっくりとくるというのも不思議なものだ。
「暖めてやろうか?」
  ゾロが言った。
  驚いたようにサンジが顔をあげ、ゾロを見遣る。
「来いよ、暖めてやる」



  シャワールームで頭から軽く湯にあたり、バスタオルで身体を拭くのもそこそこに、サンジは部屋に戻ってきた。
  タオルで前を覆っただけのサンジはどこかしら切羽詰まったような表情をしており、ゾロは口元に柔らかな笑みを浮かべて腕をさしのべた。
「髪、濡れてるぞ……」
  水分を含んで重くなった金髪を指でつまみ、ゾロが言う。
「いいさ。どうせこれから汗をかくんだし」
  そう言うとサンジは、ゾロの唇を軽く甘噛みする。
  ベッドに乗り上げたサンジはキスをする傍らで腰を覆っていたバスタオルを床に落とし、ゾロのシャツの裾に手を差し込んだ。
「珍しいな、そっちから誘うなんて」
  と、サンジ。
  引きずりあげたシャツの中に頭をつっこんだサンジは、ゾロの筋肉質な腹をゆっくりと指の腹でなぞりあげた。臍の周囲には触れるか触れないかの微かなキスをした。たったそれだけのことなのに、サンジのペニスは勃起して、先走りの証をゾロの太股になすりつけている。
「誕生日だからな、お前の。たまにはこういうご褒美も欲しいだろう?」
  にやりと笑ってゾロが尋ねる。
「そりゃ、欲しいに決まっている」
  即座にサンジが返した。
  ゾロは、サンジの白く細い首に腕を回し、唇を合わせた。



  普段のゾロは自分からサンジを誘うようなことはしない。もともとゾロは淡泊な質なのか、あまり性欲には興味のなさそうな顔をしている。実際、セックスにしてもそうだ。しつこいのはいつもサンジのほうで、どうかするとゾロを困らせていることが多々ある。
  そんなゾロが、サンジを誘っている。
  好きにしていいのだぞと、全身でサンジを呼んでいる。
  誕生日だからと、ゾロは言った。サンジの誕生日だから何をしてもいいのだと、そういう意味に取れないでもない。
  ゾロの筋肉質な身体を抱きしめると、サンジは唇を貪る。息継ぎの合間に舌でちろちろとゾロの唇をなぞり、片手で胸の翳りをいじくった。
  すぐに二人して息が上がってきた。
  サンジの先走りの液にまみれたペニスがゾロの下腹部を圧迫し、なすりつけられている。
「挿れたいんだろう?」
  そう尋ねるゾロの瞳は穏やかで、静かで。
  サンジは言葉にならない呻きを喉の奥で発すると、ゾロの膝を割ってその奥へと高ぶりを押し当てた。
  形ばかりの前戯でゾロの後孔を湿らせる。サンジのペニスが割れ目を求めて皮膚の上を滑り、ゾロの後ろはドロリとした精液にまみれた。女のように自ら濡れることのない深い孔が、サンジを、今か今かと待ち構えている。
「早く、中へ……挿れてぇ」
  掠れて欲情した声で口早に呟くと、サンジは腰をぐいぐいと押しつけていった。



  ベッドの上に仰向けになったゾロは、大きく股を開いた格好のまま、じっとサンジを見つめている。
  勃起したサンジのものが、溢れだした精液でてらてらと光っている。いやらしくポタポタと涎を垂らすサンジのペニスは、ゾロの中に入りたがって、さらに先走りを溢れさせた。
「挿れろよ」
  促すように、ゾロが言う。
  サンジはゾロの太股を抱えると、内側のやわらかな肉を軽く吸った。
「……ん…っ……」
  触れてもいないのに、ゾロのペニスがゆらゆらと頼りなく揺らいだ。
「はっ……ぁ……」
  サンジのペニスが襞を掻き分け、中へと押し入ってくる。先走りの液が溢れてぐちゅり、と音を立てる。
  勃ちあがったゾロのペニスからも先走りの液が零れている。サンジは親指の腹で亀頭の部分を強くなでた。ビロードのように滑らかな部分を強く押すと、割れ目の部分にじんわりと乳白色の精液が滲む。それを潤滑剤として割れ目の周囲に擦り込むようにしてやると、ゾロの腰が引けて締め付けが強くなる。
「……あっ!」
  不意に、窓から差し込んでくる陽の光に包まれて、ゾロの身体が大きくしなった。
  サンジの手には、ゾロの放った精液が青臭いにおいと共にべったりとついていた。






END
(H16.3.23)



SZ ROOM