年下の恋人2

  男の竿が、ズブズブと体の中に潜り込んでくる。
  喉の奥で掠れた声を上げるとサンジは、上を向いてだらしなく口を開けた。
  この二年ですっかり逞しくなった恋人の肩をしっかりと掴んで、少しずつ腰を落としていく。
  引き裂くような痛みに顔をしかめることもなく、サンジは満足そうに声を上げた。
  口の端からたらりと涎が零れると、ウソップがそのつど指や唇で拭い取ってくる。時々、チュ、チュ、とキスをしてくれるのも嬉しい。
「ん、ぁ……」
  ゾクゾクと背中が快感に震えた。
  意識して尻の筋肉をきゅっと締めると、中に潜り込んだ男の竿を内壁でみっちりと包み込もうとするのが感じられる。張りのある、長くて太い竿が気持ちいい。この熱い塊で、最奥に届きそうなところまで容赦なく突き上げて、めちゃくちゃにしてほしい。
「どうした? 動けよ」
  挑発するようにウソップの唇をペロリと舐めてやると、腹の中の竿がさらに硬さを増す。
「ぁ……っ」
  ブルッと体を震わせて、サンジは尻を揺らした。
  中で竿が擦れて気持ちいい。うなじにかかる男の吐息も、汗のにおいも……それに、自身の股間で硬く張りつめた性器がダラダラと先走りを零すその青臭いにおいまでもが、気持ちよかった。
  目の前の男に自分は今、抱かれている。これが現実なのだと、実感することができる。
「……サン、ジ」
  苦しそうに眉間に皺を寄せて、ウソップが掠れた声で名前を呼ぶ。
「あっ……」
  ウソップは片手でサンジの前を扱きながら、もう片方の手で尻を掴んできた。サンジが腰を動かすのに合わせて、力を加えてくる。
「あ、あ……」
  やめろ、とは言えなかった。
  ゆっくりと竿を飲み込み、ズルズルと引き抜いていく作業には思ったよりも力が必要だった。サンジは恋人の肩にしがみついて腰を動かしたが、しがみついた手は汗で滑り、なかなか思うように体が動かない。焦れたように男の体に縋り付いていくと、耳元に熱い吐息がかかった。
「気持ちいぃ……」
  甘えるように囁かれ、サンジは思わず中に潜り込んだ男の竿を締め付けていた。
「ん……ぁ」
  奥深くまでもぐりこんだ竿の先端が、サンジのいいところを何度も掠めていく。もっとピンポイントに狙ってほしいのに、そこを突き上げることはなかなかしてくれない。
  焦れて腰を揺らしても、ちょっと位置をずらしてくるだけで、決定的なものはもらえない。
「早、く……」
  もっと突いてほしい。激しく、強く。
  何よりもサンジが欲しているのは、男の熱い迸りだ。
  腹の中をたっぷりと濡らしてほしかった。精液でドロドロにして、中も、できることなら外も汚してほしかった。
「いいけど、大丈夫か?」
  気遣うようにウソップが尋ねる。
  欲望に従い体を繋げるばかりでなく、相手を気遣う彼の優しさを、サンジは気に入っている。自分がこんなにも欲張って彼を欲しがっているというのに、この男はどうしてこうも理性的な一面を見せつけることができるのだろう。
「大、丈夫……だ」
  甘い吐息を零しながらサンジは返した。



  ウソップの手を借りて、なんとか腰を動かした。
  下から突き上げてくる竿の硬さに恍惚としながらサンジは、達した。
  そのすぐ後にウソップの白濁がサンジの腹の中を汚した。ドロリとした精液が腹の中にたっぷりと注がれ、結合部からだらだらと納まりきらなかった分が溢れても、サンジは腰を揺らしていた。
  自分の意思ではピストン運動を止めることができないほど、快楽を追うことに夢中になっていた。
  そのことに気付いたのか、ウソップは荒い息のままサンジの体を抱きしめた。一瞬、互いの汗のにおいが混ざり合い、サンジはブルッと体を震わせた。
「あ、あぁ……」
  男の体にしがみついたままサンジは精を吐き出してしまうと、二度、三度と小さく痙攣した。
  腹の中の竿からできるだけ搾り取ろうとするように、内壁をひくひくと窄めるようなこともした。
「……大丈夫か?」
  さっき聞かれた言葉だが、またもやウソップは尋ねかけてきた。
  そんなに心配するほどのことではないだろうと、サンジは苦笑する。
  自分は女ではなくて、男だ。セックスでの負担は受け手の自分のほうがはるかに大きいが、ここまで心配してもらうほどのものでもない。
「大丈夫だ、って言ってるだろ」
  興醒めだ。せっかくのムードがぶち壊しだろうとムッした表情のまま、ウソップの胸のあたりを押し返す。
  動いた途端に、サンジの中に潜り込んでいた竿から力が抜けてふにゃりと萎れていく。後孔からポタリと滴る白濁に、サンジは慌てて尻の穴を締める。
「このっ、馬鹿……」
  言っても詮無いことだとわかっていても、言わずにはいられない。
「わっ、すげー……ベタベタ……」
  後孔から溢れだしたもので、ウソップの太腿はあっという間にドロドロになった。前を広げただけだったから、着ていたものに白濁がべったりとついてしまった。
「これは……洗うのが大変そうだな」
  しみじみと呟いてサンジは、そろそろとウソップの上から体を退けた。
「ひでぇよ、サンジ」
  顔をしかめ、今にも泣きそうな声でウソップが訴えてくる。
「何言ってんだよ。てめぇがいきなり……」
  言いかけてサンジは、ふと口を噤む。
  これ以上を口にするのは、酷だろう。言いかけた言葉を飲み込むとサンジは、俯いてプツブツと文句を並べ立てているウソップの両頬に手をやった。
  軽くチュ、と合わせるだけのキスをして、さっと身を躱す。
「機嫌直せよ。それと、続き……そこのソファでしようぜ」
  水槽の前に置かれたソファを顎で示してサンジは、さっさと移動する。
  歩きながらシャツを床へと脱ぎ捨て、全裸になる。
  もたもたと後をついてくる年下の恋人が可愛くて、サンジはたまらず忍び笑いを洩らした。
  だから自分は、この恋人が好きなのだ。愛している。我儘で、臆病で、それでいて可愛くて、たまに頼りになるこの男のことがサンジは、気に入っている。
  ソファの背もたれに上体を預け、獣のポーズを取るとサンジはちらりと背後を見遣った。



  恋人は、顔を真っ赤にしてサンジの全身を凝視していた。
  精液でドロドロになったズボンもそのままに、呆けたようにソファのところまでやってくる。
「ほら、お前も脱げよ」
  流し見てそう囁くと、「そうだな」とウソップは服を脱ぎ始める。こういう、従順なところも初心で可愛く思える。
  シャツを床に落とすとウソップは、サンジの腰に手をかけた。この二年でしっかり筋肉のついたウソップの体は日焼けして浅黒い色をしている。二年前のことを考えると、随分と苦労したはずだ、この男も。
「後ろからでいいか?」
  神妙そうな顔つきで尋ねられ、サンジはこくこくと頷いた。
「い……から、早く」
  思わず声が裏返ってしまった。
  そんなことにもウソップは気付いていないのか、慎重な手つきでサンジの後孔をまさぐると、ペニスの先端を押し当ててくる。
  じゅん、とサンジの腹の底が収縮した。
  ひくついて、熱い塊に穿たれるのを待ち構えている。
「クソッ……早くしろ」
  尻を揺らして自ら先端を飲み込もうとすると、ぐっ、と強い力で押し入ってくる。
「あっ、あ……ぁ……」
  内壁が収縮を繰り返すと、残滓が中から溢れてきて結合部をドロドロに濡らした。ウソップの動きに合わせて腰を揺らすと、グチュグチュと湿った音がやけに大きくあたりに響いた。
「ん、ぁ……」
  熱くて、硬くて、たまらない。
  先端で中を掻き回され、擦りあげられてサンジは肩で大きく息をした。酸素が足りないのは、内臓がせり上がってくるような感じがしているからだろうか。
「もっと……」
  ソファの背もたれにしがみついて、サンジは小さく叫んだ。
  もっともっと、きつく突いてほしい。中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて、これ以上ないぐらい気持ちよくしてほしい。
  リズミカルに腰を打ち付けられ、嬌声を上げながらサンジはふと水槽のガラスに映る自分たちの姿に気付いた。
  だらしなく口を半開きにして、腰を振っている男は自分だ。汗と精液にまみれて、嬉しそうに善がっている。背後の男は、気持ちよさそうに目を閉じている。筋肉のついた体は逞しく、一突きひとつきが深くて力強い。眉間に皺を寄せて、片手でサンジの腰を掴み、もう片方の手はサンジの体のあちこちをさまよっている。
「っ……」
  はあっ、と息を吐き出すとウソップは、さらにサンジの深いところを突き上げてきた。
  突き上げる力も、スピードも上がった。グチュグチュという淫猥な音がサンジの耳の中いっぱいに響いてくる。
「あ、あ……」
  最奥を突いたウソップは不意に動きを止めると、サンジの背中に覆いかぶさってきた。奥のほうをぐりぐりと擦りあげられ、サンジが四肢を突っぱねて快感をこらえようとしたところで、腹の中にあたたかいものが広がっていくのが感じられた。
「好きだ……サンジ、好きだ……」
  掠れた声がサンジの耳たぶを掠めて、荒い息へとかわっていく。
  サンジも同じように呼吸を乱していた。
  体を繋げたままでゆっくりと腰を揺らしながら二人は、ソファに崩れ込んだ。
  背中からぎゅっと体を抱きしめてくる恋人が愛しくて、サンジは小さく呟いた。
「……愛してる」
  ウソップに今の声は、聞こえただろうか?
  聞こえていても、聞こえていなくてもどちらでもいいとサンジは思った。
  どちらにしても疲れきっていて今は、眠りたかった。
  ソファの上で体の向きをかえるとサンジは、恋人の体を抱きしめた。
「ちょっと休憩な」
  そう断ると、目を閉じる。
  それよりも先にウソップは、ぐったりとして鼾をかき始めていた。
  こういうところが慣れてなさそうな感じがして、可愛く思える。
  だから年下の恋人がいいのだと思いながらサンジも、ゆっくりと意識を手放していった。



(H26.10.26)



        


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