『カボチャと柚子風呂 3』
湯につかったままの体が手繰り寄せられると、開いた足の間にエースの体が割り込んできた。
尻にあたるエースの性器は、既に固くなっている。
「挿れろよ」
挑みかかるようなきつい眼差しでサンジが言うと、エースは口元に笑みを浮かべて腰をぐい、と押し付けてきた。
「ぅ…んっっ……」
先端の部分が、尻の穴の周辺を押してくる。押しては引き、縁の襞を広げるかのようにグニグニと蠢くものに、サンジの体がぞくりと震えた。中に入れてもらおうと、サンジの体は待ち構えている。早く欲しいと、体の奥が渇望している。
「早くっ……」
なかなか挿入しようとしないエースに焦れたサンジは、鋭い眼差しで睨み付けた。
チャプン、と湯船が波打ち、エースが一気にサンジの中に突き入れた。
「あ、ああっ」
後頭部をぐい、と逸らしてサンジが声をあげる。
バスルームに声が反響し、ザプンと湯がバスタブから溢れ出た。
エースが体を揺さぶると、その度に乗り越した湯がザアザアと流れ出ていく。
朦朧とする頭の隅で、サンジは流れた湯のことを考えた。もったいない。ゼフに知られたら、もしかしなくても大目玉だ。
「ぁ……」
体の中に潜り込んだエースのペニスは、いつにも増して固かった。大きくて、質感や形がはっきりと感じ取れるほどだった。
「──…デけぇ」
はぁ、と喘ぎながらサンジが呟く。
潤んだ瞳でエースを見つめると、喉を鳴らしてサンジは笑った。
「もっと、奥まで来い」
煽っているなと、自分でもわかっていた。わかっていたが、止めることはできなかった。
体は、これまでにないほどエースを欲していた。
大きく開いたサンジの足の間で、エースは体を揺さぶった。
声を押し殺していると、息苦しくなって目の前が真っ暗になってくる。サンジは新鮮な空気を求めて息継ぎの要領で口を開けた。
「ぅあ……っ……」
掠れた声が口をついて出た。
「っあ……」
バスタブの縁に手をついて、エースに揺さぶられた。片足がゆらゆらと揺れ、気を抜くと溺れてしまいそうだった。もう片方の足をエースの腰に絡めたサンジの白い胸が大きく上下した。エースは、淡く色付いた部分に口付けた。
一際大きく湯船が跳ねると同時に、サンジの中にエースは熱いものを放った。
強く肉を打ちつけてサンジの奥へと注ぎ込むと、ビクビクと腹筋が痙攣しているのが感じられる。
「んっ……」
唇を噛み締めて声を抑えているサンジの唇に、エースは指で触れた。
不意に指先に痛みが走り、見ると、サンジに指を噛まれていた。痛みはあるが、まだ甘噛みの範疇だ。
「声は、聞かせてくれないのか?」
尋ねると、サンジは眉間に皺を寄せてエースを見つめ返した。
「ぅ……」
喉をひくつかせて、サンジは何か言いたそうにしている。どうせ口を開けば文句しか出てこないだろう。
エースは微かな笑みを口元に浮かべると、今にも爆ぜそうなサンジのペニスをきゅっ、と握り締めた。
「今日はだいぶん我慢できたな」
掠れた声で囁くと、エースはサンジの竿を激しく擦り上げた。水位の低くなった湯船が揺らぎ、擦り上げる湿った音がバスルームに響く。
「ああぁ……ひっ……」
サンジが体を捻ろうとすると、ザバ、と湯が跳ねた。
まだサンジの中に潜り込んだままのエースのペニスが、首をもたげて縋り付いてくる内壁を押し返そうとし始める。
「ムリ……も、ムリ…だ……」
はあ、と息をついて、サンジがようやっと口早に告げる。
「まだ大丈夫だ」
目尻にうっすらと浮かんだ涙を指で拭ってやると、エースはサンジの体を引き寄せた。
エースの上に乗り上げたサンジは、湯が跳ねるのも構わずに、腰を揺らした。
中に入り込んだエースの竿が、さらに固く張り詰めていく感覚に眩暈がしそうだった。
「んん……」
下からエースが突き上げてくるのに合わせて動くと、バシャバシャと湯が跳ねる。勃ち上がったペニスの先端をエースの腹に擦りつけると、サンジは大きく喘いだ。エースの指に締め付けられ、解放できないでいる熱がもどかしい。それ以上に苦しいのは、埋められたエースのペニスがいつもより張り詰めていて固いからだ。
抱き締めるようにしてエースの首に両腕を絡め、サンジからキスをした。合わせた唇の隙間から舌を差し込み、少しずつ唾液を流し込んでいく。
「……早く」
掠れた声で口早に呟くと、サンジはぐいぐいと腰を押し付ける。勃起したペニスをエースの腹になすりつけるような動きを繰り返しながら、濡れた瞳でもう一度、囁いた。
「エース、早く…──」
その瞬間、サンジの中で熱いものが弾けるような感覚があった。
ぐっと腹に力を入れてエースにしがみつくと、サンジは息を殺してうねりの鎮まるのを待った。
二度目の迸りが体の中を満たしていくのに合わせて、痙攣したようにサンジの腹筋がピクピク動いた。
「それ、すげぇ気持ちいい……」
掠れた甘い声が、サンジの耳元に吹き込まれる。
「っ……ぁあ!」
目をぎゅっと閉じて、サンジもまた、上り詰めた先にある何かを手に入れていた。
パシャ、とぬるくなった湯がサンジの頬にかかった。
気怠そうに目を開けると、目の前でエースが笑っていた。
「気が付いたか?」
尋ねられてサンジは、弱々しく頷く。頭がぼんやりとして、思考がうまくまとまらない。
「……気持ち、よかった」
掠れた声でそう告げると、エースの手がサンジの髪をくしゃりと撫でた。
「風邪ひかないように、ベッドで寝ような」
いったい今は、何時頃なのだろうか。
手を伸ばしてエースに掴まると、サンジはよろよろとバスタブの中から何とか立ち上がった。下半身の痺れは甘く、まだ中にエースの竿を銜え込んでいるかのような感覚が残っている。
「ベッドまで連れて行け」
意識がはっきりしてくると同時にのしかかってきた重怠い腰の感覚に憮然としつつもエースを睨み付け、サンジは言った。
こんなはずではないのにと、しきりと首を捻るサンジの体を抱き上げて、エースはバスルームを後にする。
バスルームを出る瞬間、エースの背中ごしに見た洗面台の鏡に映る自分の姿にサンジは顔をしかめた。自分と同じ男に抱き上げられて、じっと鏡の向こう側から見つめ返してくるのが、自分の知らない別の男に見えたのだ。
ぎゅっ、とエースにしがみつくとサンジは、甘えるように頬をすり寄せた。
「腰が痛い、早くベッドにおろせ」
グズグズとごねると、エースは笑ってサンジの髪に唇を寄せた。
「はいはい、只今」
ベッドの中に入ると、軽く唇を触れ合わせるだけのキスをした。
キスだけだった。
その夜のエースは、サンジに触れることはしなかった。
「ゆっくり休め」
労るように声をかけられ、サンジはムッとした。
ここからがいいところなのにと臍を噛みながら、ごそごそとして重怠い体の向きを変えた。エースに背を向けるような格好で寝たふりを決め込むと、すぐに部屋の灯りが落とされた。
エースがベッドに潜り込んでくると、柚子の香りがふわりとサンジの鼻に届いてきた。
「……ああ、いい香りだ」
隣りで、エースが小さく呟くのが聞こえてくる。
どうやら二人して、同じことを思っていたらしい。
身体の中の疼きが、甘い充足感となってサンジの体を満たしていく。
サンジは目を閉じると、小さく笑みを浮かべた。
END
(H20.1.27)
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