『キマグレ』
ゾロの寝込みを襲うのはごくごく簡単なことだった。
格納庫で一升瓶を片手に昼寝中のゾロの手を、部屋の片隅に落ちていたロープで縛り上げるだけで充分だったのだから。
それほどサンジは煮詰まっていた。
これ以上は限界だというところまで、サンジの心は追い込まれてしまっていたのだ。
熟睡しているのか、それとも気付いていながらも寝入ったふりをしているのか、ゾロがなかなか目を覚まそうとしないのをいいことに、サンジはにやりと口の端に笑みを浮かべる。
甲板の気配をうかがってみるが、他のクルーたちは出払っていてしばらくは船に戻ってきそうにない。
ゾロのシャツに手をかけると、サンジは勢いよく胸の上へと捲り上げた。
鍛えられた腹筋と、厚い胸板。同じぐらいの身長とはいえ、ほっそりとした身体つきのサンジと違ってゾロの体格はがっしりとしていて、骨太だ。抱きしめられた時にサンジはいつも肩の力が抜けるような安心感を感じているということに、ゾロ自身は気付いているのだろうか。
うっすらと色づく乳首にサンジが唇を這わせたところで、ゾロが小さく身動ぎをした。
「んあ?」
面倒くさそうに片目を開けて、ゾロはちらりとサンジを見遣る。
「……何やってんだ、お前」
尋ねられ、サンジはすかさず返していた。
「セックスだよ。それぐらい、見りゃわかるだろう」
両手を拘束され、仰向けになったゾロの肌はじっとりと汗ばんでいた。
立ち上る男のにおいをサンジは鼻腔いっぱいに吸い込むと、思ったよりもさらりとしたゾロの汗を舌で舐め取る。ほのかな潮のかおりを含んだ、水のような汗だ。
「気持ちいいだろ? なぁ、どうなんだよ。言えよ、どんな感じか」
言いながらサンジは、上目遣いにゾロを見据える。
「こんなことをして楽しいか?」
ギロリ、とサンジを睨み付けるゾロの眼差しはしかし、どこか余裕のある楽しげなもので。
「率直に言って楽しいね、俺は。俺がどんなに恋い焦がれても、誰かさんはまったくの知らん顔、だからな」
と、ゾロの下腹部へと唇を這わせながら、サンジは返す。
そのままパクリとゾロのペニスを口に含むと、まだ柔らかいところを口で丁寧に愛撫していった。
「ぁっ……く……」
ゾロの腰が、押し付けるようにもぞもぞと蠢いている。快感を得られる箇所へとサンジの舌を導くかのように膝を立てる。サンジはするりとその間に身を滑り込ませ、ゾロのペニスに夢中でむしゃぶりついた。
口の中でゾロのペニスが硬さを増してくる。
サンジは繊細な動きで袋を揉みしだきながらも口での奉仕を与えた。頬を窄ませてゾロの竿を扱くと、先端から苦い汁が滲んでくる。
「やめろ……」
掠れたゾロの声は、まるで熱に浮かされているようだ。
サンジは上目遣いにちらりとゾロを見遣ると、そのまま舌先をゾロの割れ目に強く押し付けた。
苦くて青臭い精液を絞り取るかのように、割れ目に沿って舌でなぞる。それから再び、口全体で竿を扱いた。口に納まりきらない分は、指で揉み込むようにしてマッサージしていく。
「はっ……ぅぁ!」
ビクン、とゾロの身体が跳ねた。
「……んっ、ん…──」
割れ目の部分から精液が溢れてくる。口の中いっぱいに青臭いにおいが広がって、サンジは一瞬、むせ込みそうになった。
「飲むな、馬鹿が」
困ったようにゾロが言う。ゾロの竿はピクピクと脈打っており、まだ硬さを失ってはいない。
口の中に放出された精液をサンジは喉を大きく上下させながら飲み干してしまうと、顔を上げてにやりと笑った。
「男の精液は不味いな」
そう言うと、身を起こしてゾロの唇に噛みついていく。
キスをしようとすると、互いの歯がぶつかり合ってガチ、と音がした。
唇から唇へ、舌から舌へとゾロの放った精液が受け渡される。
「げっ……」
口の中に広がる自分の精液の味に顔をしかめたゾロが、サンジを睨み付けている。
「苦まずい」
独り言のようにゾロが呟くと、サンジは片方の眉をピクリと動かした。
「それがいいんだよ。なんたって、アンタの精液だからな」
「気持ちよかっただろ、なぁ?」
ゾロの胸にもたれかかりながら、サンジ。
「──…勝手に言ってろ」
サンジが尋ねるのにゾロは、怒ったのか、目を閉じて返す。
その瞬間、ゾロの唇に鋭い痛みが走った。ガリ、と音がして、ついで鉄のにおいが口の中に流れ込んでくる。
唇を噛まれたのだ、サンジに。
億劫そうに目を開けてゾロは、サンジを一睨みした。
それでもサンジは、何もなかったかのようにゾロの唇を吸った。
舌を差し込み、ゾロの口内を丁寧に舐め取る。ゾロの舌も同じようにサンジの舌を根本からきつく吸い上げ、口内へと侵入していく。
つい今し方、唇を噛まれたことを怒っているわけでもなく、サンジに合わせて愛撫を返してくる。
サンジは口吻の合間に胸の突起でゾロの胸をなぞった。互いの唇を角度を変えて吸う時に、身体を動かす。そうすると、サンジの勃起した乳首がゾロの乳首に触れ、奇妙な感覚を生み出した。
「勃ってるな」
と、嬉しそうにサンジが呟いた。
「お前もな」
ゾロは、小さく溜息を吐いた。
to be continued
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