『懲りない二人 1』
「クリスマスだぁ……?」
キッチンの片隅で剣呑そうに、ゾロは声をあげた。
「べっ……別に、嫌ならしなくてもいいんだぜ」
手際よく洗い物を片付けながら、サンジが返す。
夕食の後、しばらくはそれぞれが自分の好きなことをしてこのラウンジで過ごしていたが、そのうちに一人、二人と部屋へ去っていた。一度は男部屋に戻ったゾロだったが、就寝前の一杯をひっかけに部屋から出てきていた。
目の前の酒瓶をギロリ、と睨み付けるとゾロは腕組みをした。
眉間に深い皺を刻んだままゾロはしばらく何事か考えていたようだったが、唐突に口を開いた。
「ま、たまには、な。単なる祭りとしてなら、してもいいけどな。クリスマス」
ふう、と面倒くさそうな溜息を吐きながらゾロは言った。宗教的意味合いでのクリスマスは嫌だが、酒盛りとしてのクリスマスならやる気満々なのは、何もゾロに限ったことではない。ゴーイング・メリー号のクルー全員の意見でもあることは、サンジもよく知っている。
「じゃ、決まりだな。連中との酒盛りが終わったら、格納庫で仕切り直しといこうじゃないか」
サンジが言うと、ゾロは気のない声で返した。
「──ああ、そうだな」
二十四日はチョッパーの誕生日とクリスマスイブとをまとめて祝った。
ちょうどうまい具合に前日から船は港に入港していた。おかげで皆、チョッパーの誕生日プレゼントを買いそびれることもなく、また食材の心配をする必要もなく、馬鹿騒ぎは夜半まで続けられた。
食べて、飲んで、騒いで、また食べて。
さんざん騒ぎまくったクルーたちがそれぞれ女部屋のベッドや男部屋の床の上やハンモックに身体を何とか押し込んでうとうとと夢を見始める頃を見計らって、サンジとゾロはこっそりとメリー号を後にした。
船外の空気は低く、吐く息が白い。
体温の高いゾロはともくかくとして、かなりの厚着をしていたサンジは震えながら足早に街を横切る。
港からは少し離れた高台への坂を上がると、前日、買い出しにでかけた時に予約を入れておいた宿へと向かって歩いていく。
坂を上がるとすぐに洒落た白い石膏像の並んだ門の宿が見えてきた。
サンジは黙って指さした。寒くて、歯の根が合わなくなりそうだった。
「あれか?」
と、ゾロが尋ねかけるのに軽く頷くと、サンジは足を速めた。
部屋に案内されるとサンジは安心したのか、一言、あくびを洩らしながら言った。
「……やっぱり建物の中はあたたかいな」
ゾロは何も言わずに部屋の照明を落とし気味にし、サンジの背後からそっと腕を回していった。
「俺は別に格納庫でもよかったんだぜ?」
耳元でゾロが低く囁くと、こそばゆいのか、サンジはわずかに首を竦めて返した。
「冗談。せっかく陸に着いたんだから、ベッドのあるところで……」
言いながらもゾロの唇が、耳の後ろのあたりからうなじにかけて降りてくるのを感じている。
「なんだ、もう始めるのかよ」
喉の奥で笑いながら、サンジは言った。
「時間がもったいねぇからな」
と、ゾロ。
肩口ごと抱きしめてくるゾロの腕に手を添わせ、サンジはそっと力を込めた。
「そうだな。そんなに時間があるわけでもねぇしな」
シャワーも浴びずに、二人はベッドの上で抱き合った。
余裕がないのは自分だけではないと言い聞かせながらサンジは、ゾロのものを口に含む。
ゆっくりと舌を絡ませ、前歯でやわやわと甘噛みしてやると、ゾロの喉の奥から苦しげな声が洩れた。
「……は……ぁ……」
掠れて上擦ったゾロの声が、サンジの身体を熱くさせる。
唇を窄めて竿の部分を上下に辿ると、ゾロは確実に硬さを増していく。先端の割れ目からトロリと乳白色の液が溢れてくるとサンジは、大事そうに口の中で味わい、飲み込んだ。
「おい、もういいぞ」
ゾロが言った。
顔を上げたサンジはだらしなく口の端から涎を垂らしていた。唇の端についているのは、ゾロの精液混じりの涎だ。
「ほら、来いよ」
言われて、サンジはゾロの腰に跨った。自分のものに指を這わせると、既に溢れ出していた精液を指先に絡め取り、後孔への潤滑油として塗り込めていく。
「あっ、ぁ……」
勃ち上がり、精液でてらてらと光るサンジのものにゾロが手を伸ばす。竿の部分をぎゅっ、と握り締めると、そのまま手を上下に動かす。サンジの身体がゆらゆらと頼りなく揺らぎ、ゾロの肩にしがみついてきた。
体内に潜り込んでくる異物感に、サンジは眉をひそめた。
内臓を圧迫するほどの質量に、軽い吐き気を覚える。
それでも逃げ出さずにいられるのは、相手がゾロだからだ。
ゾロだからこそ、サンジは自分と同じ男に犯されることを許しているのだ。彼だからこそ。自分と同じぐらい強いと思う男だからこそ、こうして蹂躙されることを受け入れることが出来るのだ。
「あ……っは、ぁ……」
自ら進んで腰を落とすと、内壁を擦り上げるゾロの先端がサンジの敏感な部分を強く圧迫した。
「…ひっ……」
背が大きくしなり、後孔がぴくぴくとゾロを締め付ける。
「気持ちいいか?」
尋ねられ、サンジは何度も首を縦に振った。
「クソッ……キモチよすぎ……」
うわごとのように何度も言うと、ゾロの唇がサンジの唇を軽く塞ぎにかかった。
くちゅり、と結合部から、湿った音が響いてくる。
部屋にある暖炉は消えかかっていたが、二人の身体からは汗が滴り落ちてきていた。
To be continued
(H15.12.24)
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