『Private Birthday』
Z×S ver.
「Happy Birthday!」
背後からサンジに声をかけられたと思ったら、あっという間に唇を奪われていた。
ゾロは、身をかわすこともできなかった。
柔らかな、肉厚の唇がしっとりとゾロの唇を塞いでいる。
ほんのりと甘い香りがしているのは、砂糖菓子でも作っていたからだろうか。
「ん……」
口をうっすらと開くと、するりとサンジの舌が入ってきた。
こんなところを誰かに見られたらどうするのだろう──考えながらもゾロは、唇を離そうとしない。舌と舌を絡め合い、互いの唾液を心ゆくまで交換し合う。
「どうせ皆、眠ってるから大丈夫だろ」
ゾロの心の内を見透かしたように、くちづけの合間にサンジが囁いた。
そうかもしれない。このところ、夜になるとは凪のない穏やかな天候が続いていた。骨休めとばかりに仲間たちは皆、この機を逃さずしっかりと睡眠を取っている。起きてくる者など、一人もいないだろう。
甲板の縁にもたれると、ゾロはサンジの背を抱いた。
肉付きの薄いサンジの身体は、骨ばっている。毎日のようにトレーニングをしているゾロと違い、そう筋肉質なわけでもなく。かと言って軟弱な体付きというわけでもないのだが、肉付きのいいゾロに比べると随分と痩せて見える。見劣りがすると誰が言ったわけでもないのに、サンジ自身もこの痩身を多少は気にしているようだ。
唇が離れると、サンジは深い溜息を吐いてゾロの胸に頭をすりつけた。
「クソめでてぇなぁ」
喉の奥でクスクスと笑いながら、サンジが言う。
甘い香りがするとゾロが思ったのは、どうやら菓子の香りではなく、酒のにおいのようだった。
「……酔ってんな、お前」
ゾロが尋ねる。
それには返さず、サンジはゾロの筋肉質な腰に腕を回した。
「喜べ。俺様が祝ってやる、って言ってんだ」
酔っているなと思ったのは、何もゾロだけではなかった。
サンジ自身、アルコールのおかげで自分が少しばかりいい気分になっているということに気付いていた。
アルコールは視界をほんの少しだけ狭めてくれる。いつもは周囲にある仲間たちの目や、ゾロの態度を気にしているようなところのあるサンジだったが、今夜は酔いのおかげで随分と気持ちが大きくなっていた。しつこいぐらいゾロに甘えたとしても、酔いのせいにして誤魔化してしまうことができるだろうと高をくくっている。
「なぁ、祝ってやるよ、クソ剣士サマ」
と、サンジはケラケラと笑いながらゾロのシャツの裾をたくし上げた。程良く筋肉がついて均整の取れた身体に唇を這わす。
「いいか、まな板の上の魚みたいにじっとしてるんだぞ。俺様が料理してやるからな」
やっぱり酔っているな、とゾロは微かな溜息を吐き、それから口元を歪めてにやりと笑う。
「おう。できるものならやってみろ、エロコック」
言い返した途端にゾロは、胸先にピリッと走る痛みを感じていた。
甲板に押し倒されたゾロは、サンジのしたいようにさせていた。
仰向けになってされるがままのゾロは、サンジの柔らかな髪を撫でてやる。月のない夜だからか、星々のあかりがやけに目に痛い。
ちゅ、と音を立てながら、サンジはゾロの胸を舐めている。
乳首のあたりへ入念に舌を這わせた後に、ゆっくりと下腹部へと向かっておりていく。繊細な指先で胸の大傷に軽く触れ、それから臍の脇にキスをした。
「気持ちいいだろ?」
ふと顔をあげてサンジが問いかける。
ゾロは頷き、にやりと笑った。
「もっとよくしてくれるんだろうな?」
その言葉にサンジは片方の眉をピクリと動かした。
「当然」
ややムッとした表情でサンジはそう言い放つと、ゆっくりとゾロのズボンのファスナーを下ろしにかかる。布越しではあったが、ゾロのペニスが固く勃ち上がりかけているのがわかった。
躊躇うことなくサンジは下着の中からそれを取り出した。緑色の陰毛をかきわけ、固くなったものを唇で優しく扱くとゾロが低く呻いた。
汗と、小便と、男のきついにおいがサンジの鼻をついた。むせかえるかのようだ。しかしサンジは躊躇うこともなくペニスを口に含むと、ゆっくりと舌を這わせた。苦い汁がゾロの先端から溢れてくる。精液は、サンジの口の中でピリッとした刺激臭を放っている。雄のにおいだなと、満足そうにサンジはそれを喉の奥へと流し込んでいく。
「全部飲んでやるよ、今日は」
息継ぎの合間に、掠れた声でサンジは告げた。
喉の奥で引きつるような笑い声をあげたゾロは、上体を起こすとサンジの髪を梳いてやった。星明かりに反射して、金髪の髪は柔らかな光を放っている。
「飲むのか?」
股間の頭に尋ねかけると、顔を上げてサンジは不思議そうにゾロを見つめた。
「文句あるか?」
と、サンジ。
それには何も返さず、ゾロはサンジの身体を引き寄せた。唇を吸い、片手で器用にサンジのズボンのファスナーを下ろしていく。
「んっ……ん……」
鼻にかかったサンジの声は、もっと、もっととキスをねだるように、甘く柔らかい。
肌とズボンのあいだにできた隙間へゾロは手を差し込み、サンジの尻を撫で回した。筋肉がついて引き締まった尻に、きゅっ、と力が入るのがわかる。そのまま乾いた指でサンジの尻の孔をくすぐった。力を抜こうとしているのか、ゾロの指の第一関節までは比較的すんなりと潜り込む。
「──…今日は……ぁっ……じっとしてるんじゃ、なかったのか?」
サンジの声は掠れていた。
ふん、と鼻を鳴らすとゾロは、ゆっくりとサンジの唇に舌をねじ込んだ。尻の孔に突き立てた指は、奥へと向かって蠢き始めていた。
to be continued
(H15.10.25)
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