『Private Birthday』
Z×S ver.




「ぅあっ……」
  サンジの背中が大きく捩れた。
  後ろから差し込まれた指が深々と奥に潜り込み、内側を掻き混ぜている。
「……じっとするのは、今度まで取っておくことにした」
  荒い息でゾロはそう告げると、くい、と鉤のように指を曲げた。内壁を軽く引っ掻き、外側へと圧迫しながら指を抜き出そうとする。
「ぁ……抜くな……」
  下肢にきゅっ、と力を込めてサンジが内側の異物を締め付けると、ゾロは低く喉を鳴らした。まるで、獣が獲物に飛びかかる瞬間のような眼差しで腕の中のサンジを見下ろしている。
  ゾロの視線に気付いたサンジは、チッ、と舌打ちをすると、ゾロの唇に自分の唇を押し付けた。
  料理してやろうと思っていた相手に、自分は今まさに料理されるのだとサンジは思った。そう思った途端、背筋がゾクゾクとしてくる。自分はこの男に喰らわれるのだ。肉も骨も喰らい尽くされ、心までも粉々に咀嚼され、反芻され、最後には取り込まれてしまうのだろうか? 目の前の、この男に?
  舌を絡め、唾液を流し込む。ゾロの舌が未練たらしくサンジの口から引き抜かれると同時に、唾液の筋がピン、と糸を張った。
  と、同時に、サンジは後孔の圧迫が不意に大きくうねり、強引に出ていくのを感じた。
「あ、ああぁ……!」
  声を出してからしまったと思う。いくら甲板には二人だけしかいないとはいえ、今のは大きすぎたかもしれない。もしかしたら耳敏い誰かが今の声を聞きつけているかもしれない。そう思うと急に決まりが悪くなり、サンジはぎゅっとゾロにしがみついていった。
「はや…く……かわりのモンを挿れてくれ……」
  きつく目を閉じて、サンジかねだる。
  すぐさまゾロはサンジの腰を引き寄せ、自分の身体に密着させた。


  指で軽く慣らしただけの部分に、ゾロのペニスが押し付けられた。
  すでに先端が濡れてヌルヌルとなっているのを、サンジは何度か尻になすりつけられる。気持ち悪いと思うよりも先に、早くそれを飲み込んで体内に納めたいと思ってしまう。サンジは、ゾロが襞を巻き込みながら中へと侵入してくるのに合わせて深く息を吸い込む。
  悲鳴のような喘ぎが洩れた。
  甲高く、細い声だが、間違いなく男の声だ。サンジがほっとしたことに、その声をあげはじめた途端、ゾロが深く口付けてきてくれた。
  新鮮な空気を求めて唇を外すと、身体の奥深くに埋められたゾロのペニスがドクン、と質量を増すのが感じられた。
「あ、っつ……」
  ゾロの腕にしがみついた指に力を込めると、サンジの指先に筋肉の動きが伝わってくる。そのまま手をスライドさせると肘の内側を辿り、手首をなぞりあげてからゾロの指を掴んだ。
「熱いな」
  と、サンジが掠れた声で囁く。
「そりゃ、お前の中が熱いんだよ」
  にやりと笑ってゾロが返す。
「じっとしてねぇでお前も動け」
  そう言うなりゾロは、サンジの腰を片手で思い切り揺さぶった。
「……ひっ、あぁ……っ!」
  絡めた指に力を込める。
  繋がっている。一つになったと思える、ほんのわずかな瞬間のことだった。



  潮の薫りに混じって、つんとして青臭い精液のにおいが鼻をつく。
  ゾロは、手の中に放たれたサンジの精液をペロリとなめた。それは、百合の芯のようなにおいにもどこか似ていないでもない。
  ゾロの胸にもたれかかるサンジは、うとうととしているようだ。
「おい、寝るなら服着ろよ」
  声をかけると、ぎゅっ、と手を握り返された。繋いだ手は、まだ指を絡め合ったままだ。ゾロが手をはなそうとすると、サンジがしがみついてきてはなしてくれないのだ。
  眠いのなら手をはなして眠ればいいのにと思いながらも、ゾロはその手を優しく握り返した。
「俺が……ちゃんと、祝ってやるからな……」
  眠いのだろう、ぼそぼそと口の中でサンジは呟いている。
「ふん。途中で寝ちまいやがって。ありがたいんだか、ありがたくないんだか。まったく、お前って奴はよくわからん奴だな」
  ポン、ポン、とサンジの背中をさすってやると、あっという間に眠りについたようだ。穏やかな規則正しい吐息が、ゾロの裸の胸にかかっている。
「誰かが起きてきたらどうするんだ、おい」
  眉間に皺を寄せ、ゾロは傍らの衣服を手繰り寄せた。
  つくづく妙な奴だと思わずにはいられない。
  こんなところに誰かがやってきたら、いったいどうするのだろうか。シャツを脱いで上半身裸になっただけのゾロはともかく、サンジの下半身は下着すらも着けていない状態だ。二人がここで何をしていたのかわからずとも、普通でないことぐらい、誰の目にも明らかだ。
「……ったく。仕方ない奴だな。まな板の上の魚みたいにじっとしてろ、って言ったのはお前なのにな」
  誰にともなくぼそりと呟くと、ゾロはサンジの身支度を整えてやる。上衣はともかく、ズボンだけははかせておかなければと思ってのことだ。
「ま、気持ちだけは受け取っておくぜ、ありがたくな」



  見上げると星が瞬いていた。
  凪のない、穏やかな夜のこと。
  深い紺碧の空を見つめていると、生まれてきた日のことが脳裏に蘇ってきそうなほどに澄んだ夜空の下で。
「Happy Birthday」
  低く、ゾロは呟いた。
  また一つ歳が増える。
  こんなものかな、と、心の中で小さく笑った。
  頭上の星が、微かに瞬いて頷いたように見えた。
  朝は、もうすぐそこまでやってきていた。






END
(H15.10.27)



ZS ROOM