夜も昼も 1

  暗がりの中、ベッドの上で四つん這いになった男の体が猫のようにしなる。
  蝋燭くの焔に照らし出される白い肢体に思わずGは息を飲んだ。
「駄目か?」
  小さく首を傾げて男が尋ねかけてくる。
  うかがうように見つめる視線を感じて、ドキリとした。
  蝋燭だけでは心許ない。もっと灯りが欲しいとGは思う。
「いいや、駄目なわけがねえだろ」
  そう返すと、安心したのか男は柔らかな笑みを浮かべ、頭を下げる。
  Gの勃起したものに顔を寄せ、再び行為に没頭する。どこかしら謙虚にも見える熱心さがくすぐったくて、Gは口許だけで小さく笑った。
  手を伸ばせば触れることの出来る肩から背中にかけてのラインをじっくりと目で追う。
  うっすらとついた筋肉が隆起するたびに、蝋燭の焔が形を変えて影を投げかけてくる。
  夏の夜の暑さと、濃厚な汗のにおいに頭がクラクラしそうになる。
  おずおずとではあるが、同じ男のものを口に含んでは丁寧に舌を這わせていくのは、幼馴染みであり仲間であり、恋人でもあるジョットだ。
  金茶の髪が焔に照らされ、時折、キラキラと光って見える。
  クチュ、と湿り気を帯びた音を立てながら、ジョットは執拗にGの性器を舐め回している。
「ん、ん、ぅ……」
  ぎこちなく頭を上下させると彼は、Gのものを口で扱く。舌を絡めて竿をねぶり、吸い上げ、歯を当てては悪戯っぽい笑みでGを見つめてくる。
「なあ……」
  イキたいと、Gは思った。
  ジョットの口の中に放って、或いは彼の中深くに身を沈め、果てたい、と。
  ペロリと唇をねぶって湿らせるとGは、自らの股間に顔を押し付けてくるジョットの髪の中に、指をさしこんだ。
「……駄目だ」
  かすれた声でジョットが口早に告げる。
「これは、オレのだ。それにお前は怪我をしている。今日はじっとしていろ」
  そう言うが早いか、再びGのペニスを口に含む。喉の奥に当たりそうなほど深くくわえこむと、激しく頭を上下させ、唇で性器を扱き始める。
「ジョット……!」
  は、と息が洩れた。
  グチュ、とはしたない水音を立てながら、ジョットは口淫を続けている。
  目眩がしそうだとGは思う。
  艶めかしい白い裸体、淫猥な動きをする舌や唇、それに時折耳に聞こえてくる喘ぎ声。
「ジョット」
  声をかけると、彼はいっそう熱心にGのペニスをしゃぶりだした。竿にたっぷりと唾液を絡めると、側面を舌でなぞっていく。
  淫乱なはずのその姿はしかし、清楚にも見える。
「……ジョット」
  声をかけるとジョットはようやく顔を上げた。



  白い裸体がGの目の前にあった。
  怪我さえ負っていなければ、この腕で恋人を抱きしめることができるのにとGは歯痒く思う。
  右肩から二の腕にかけてに巻かれた白い包帯に動きを遮られ、もどかしくてならない。
「おとなしくしてろと言っただろう」
  ちらりと見上げる金茶の瞳の艶めかしさに、Gはゴクリと唾を飲み込む。
  色っぽい。
  手を伸ばして男の肩を引き寄せると、噛みつくような鋭いキスをされた。前歯がぶつかり合ってカチ、と音がする。
「そのままじっとしていろ」
  挑むように告げるとジョットは、Gの太股を跨いだ。
  見せつけるようにGの目の前で指をひらひらと蠢かしてから、自分の口に入れた。チュパ、と音を立てて指に唾液を絡めていく。人差し指と中指に伝う唾液が蝋燭の炎を受けててらてらと光っている。
  濡れた指でジョットは自らの喉元をなぞり下りた。指が真っ直ぐに体のラインを撫で下ろし、ペニスへと辿りつく。
「んっっ……」
  鼻にかかった声をあげるとジョットは、自分で自分の性器を弄り始めた。
「あ、ぁ……」
  ペロリと舌で唇を湿らせてると、Gに流し目を送ってくる。怪我をしていないほうのGの肩をしっかと掴むと、もう片手で自分の性器を握りしめる。ジョットが手を動かすごとにグチュ、グチュ、と濡れた音がして、その音にGはたまらなく興奮する。
「手伝わせろ」
  そう言うとGは、ジョットの唇を奪った。唇を合わせると、強引に口の中へと舌をねじ込んでいく。歯列の裏側をねっとりとねぶり、上顎の奥、少し窪んだところをざり、と舐める。
「んんっ!」
  跳ねそうになるジョットの体を押さえつけようとしたが、右肩は包帯に固定されていて思うように動かなかった。仕方なく右手はジョットの腰のあたりに添えたまま、左手を尻へと這わせた。
「な、もっぺんさっきみたいに自分でシて見せてくれよ」
  見ててやるからと耳元に囁きかけると、ジョットは一瞬、恥じらうように目を逸らした。



  唇を貪りながら、尻を揉みしだく。
  ジョットの肌はきめが細かく、なめらかだった。汗が噴き出し、肌を伝い落ちていくと、それだけで色めいて見える。
  自分と同じ男だというのにこの目の前の恋人は、どうしてこうも色っぽいのだろうか。
「ん、あ……」
  腰が揺れるのは、自分で自分の前を弄りながら、後ろへも指を挿入しているからだ。
  自分にはなかなか触れさせないくせに、とGは憤る。
  目の前で体をくねらせ、うっすらと唇を開けてこちらへと視線を向けてくる男が、憎らしくも思える。
「な、俺にも……触らせろ」
  上擦った声でGが囁く。
  クチュクチュと音を立てるジョットの前は、既に先走りだけでドロドロになっていた。
  触りたかった。自身のてのひらで、ジョットの熱とヒクヒクと震える感触を確かめたい。
  尻に回した手を滑らせ、窄まった部分へと指を這わせる。窄まりの中心に出入りしているのは、ジョットの指だ。
  襞の縁に指を引っかけると、Gはそっと指を滑らせる。そろそろと襞を押しては指を引っ込め、解すような動きをしてみせる。
「ん、は……っ」
  はっ、はっ、と荒い息がGの頬にかかる。だらしなく半開きにしたジョットの口の奥にちらりと覗く赤い舌がエロティックでたまらない。
「あっ……挿、れ……」
  腰を落とし気味にしたジョットは、Gのペニスに太股を押しつけた。ジョットの股の間に潜り込んだGの性器にぐいぐいと尻をなすりつけようとする。
「なにが欲しい?」
  顔を覗き込んで「ん?」と尋ねかける。
「……し、ろ……後ろ……」
  うわごとのように呟きながらジョットは、自分の後ろを弄る手を激しく動かした。グチュ、グチュ、と湿った水音がGの耳にまで届いてくる。
「もっと……」
  腰を揺らめかせ、ジョットは口走る。
  額を伝い落ちる汗が、キラリと光って見える。
「こうか?」
  Gは襞の隙間から指を中へと侵入させた。
  すでに二本目が挿入されているジョットの中は、狭かった。Gの指を合わせると、都合三本が入ったことになる。
「く、ぅ……」
  内壁を押しやり、Gが指を動かすと、ジョットの体が固くこわばった。
「ああっ……あ、あ……」
  Gの太股を跨いだ姿勢のままで、それでもジョットは体をこわばらせて手だけを必死になって動かしている。
「イ……イクっ……」
  ヒッ、とジョットの喉から声が洩れた。
  たらたらと溢れる先走りを自らの竿に塗り込めながら、ジョットは腰を揺らしている。
  突き立てた指を中で折り曲げ、ぐいぐいと内壁を押してやる。ジョットの窄まりが痛いほどにGの指を締めつけてくる。食いちぎられそうだと思い、Gは微かに笑った。
「イけよ、ジョット」
  耳元に囁きかけると、大きく首を左右に振ってジョットは唇を噛み締める。
「んん……っ」
「こらえんなよ」
  言うが早いかGは、ジョットの喉元に唇を押し当てた。そのまま唇を滑らせ、胸の尖りを口に含む。
「ん、ふ……ぁ!」
  ぷっくらとなった部分を吸い上げ、口の中で転がす。たっぷりと突起に唾液をなすりつけ、唇で挟んで扱く。クチュ、と湿った音を立ててやると、ジョットは背を弓なりに反らして甘ったるい声をあげた。
  それから間もなくしてビクビクとジョットの腹筋が震えたかと思うと、ペニスの先端から白濁した生暖かいものが飛び散り、二人の腹を汚していく。
  目の前にいる恋人はなんと淫乱で、艶めかしいのだろうか。
  Gはチュ、と乳首にキスをすると、ジョットの後ろから指を引き抜いた。
「はっ……ん」
  ジョットも、自分の後ろから指を抜き、Gのほうへともたれかかってくる。
「まだ足りねーだろ?」
  意地悪く声をひそめて耳元に尋ねかけると、ジョットはコクリと頷いた。
  これしきのことで足りるわけがないとGは思っていた。
  ちらりと見たジョットの前は、たった今、精を放ったばかりだというのにまだヒクついている。
「G……」
  ふと顔を上げたジョットが、微かに笑った。
  どこかうっとりとするように自分を見つめる瞳が、蝋燭の光のようにオレンジ色に光っている。
「お前が、欲しい」
  ストレートに告げられると、悪い気はしない。Gは嬉しそうにジョットの体を自分のほうへと引き寄せた。



1         
(2011.8.7)


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