グチュッ、グチュッ、と湿った音が部屋の中に響いている。
リズミカルな響きは淫猥で、少しでも気を抜くと、頭の中が真っ白になりそうだ。恥ずかしさと、気持ちいいのと、それから少しばかりの後ろめたさが入り交じった思いを抱え込んだまま、綱吉はそっと息を吐き出した。
「ああ……」
声を洩らすといっそう恥ずかしさが募る。
目をぎゅっとつぶったまま、綱吉は必死になって手を動かした。獄寺の性器が硬く張り詰めていく。先端を指の腹でなぞると、先走りがヌルリと滲んで綱吉の指先を濡らした。
「はっ、あ……ぁ」
手の中で硬くなった竿を撫で回しながら綱吉は、獄寺の手を感じている。
滑るように獄寺の手が綱吉の肌の上を這い回り、胸の先や脇腹など、敏感なところをなぞり上げる。竿を掴んだ手が綱吉の手の動きを真似て、先端をぐりぐりとてのひらで押し潰すように撫でてくる。執拗になぞられると、割れ目の部分に新たな先走りが込み上げてきて、ますます湿った淫猥な音があたりに響き渡る。
「あ……んんっ!」
ピクン、と足を突っぱねて快感をやり過ごそうとすると、首筋にチュ、とくちづけが降りてくる。
「気持ちいいんですね、十代目」
確かめるように尋ねられ、綱吉はコクコクと首を縦に振った。キュッと唇を噛み締め、空いているほうの手で獄寺の腕にしがみつく。
「もっと……声、出してください、十代目。あなたの声が聞きたいんです」
ねだるように耳元で囁かれ、綱吉はビクビクと体を震わせた。
獄寺の声が耳の中に吹き込まれると、それだけで体がカッと熱を孕み始める。ジワリとした焦燥感のようなものを感じるのは、獄寺の愛撫が今ひとつ物足りなく思えるからだ。
「もっと……」
たどたどしい口調で、綱吉が呟き返す。
「もっと、触って……」
体を捩り、背後の獄寺の肩口に唇で触れた。チュ、と軽い音を立てて触れるだけだったが、それでも綱吉は満足だった。
舌を突き出し、ペロリと肌を舐める。舌を這わせると、それだけで獄寺の肩の筋肉がピクリと蠢く。動いた筋肉の追いかけるように、さらに舌を這わせる。
「……十代目」
獄寺の声が耳元に響き、いつの間にか胸から滑り落ちていた手が、するりと尻を撫でてくる。
体が震えるのは気持ちがいいからだ。
獄寺の腕にしがみついたまま綱吉は、甘えるように鼻を鳴らした。
クニュッ、と後孔に獄寺の指が押し当てられ、窄まった襞の隙間をなぞられる。
もう何度も触れられているというのに、いつまで経っても獄寺に触れられるのは恥ずかしい。
「ん……ちょ、待っ……」
言いかけてしがみつく手に力を入れると、獄寺が耳たぶをパクリと甘噛みしてくる。
ゾワリと快感が背筋を駆け抜け、後ろに潜りもうとしていた獄寺の指を無意識のうちに締めつけていた。
「十代目、力抜いてください」
熱っぽい声で獄寺が囁きかける。
襞を掻き分け、指先だけが綱吉の中に潜り込んだまま、獄寺は困ったように綱吉のうなじにくちづけを繰り返す。
「ふ、ぁ……」
ビクビクと背筋に痺れるような快感が走り、綱吉は咄嗟にしがみついていた獄寺の腕に爪を立てていた。
はっ、はっ、と息を荒げて、綱吉は獄寺の腕にしがみついている。
「気持ちいいんでしょう、十代目?」
嬉しそうな獄寺の声が、綱吉の耳たぶを掠めていく。
綱吉はブルッと体を震わせた。指の先で後ろを撫でられただけでイッてしまっただなんて、悔しくてたまらない。
綱吉の放ったものでヌルヌルになった獄寺の手が、くたりと力を失った綱吉のものを優しく扱いている。労るように優しく扱かれ、またしても綱吉の性器はムズムズと頭をもたげ始めようとしている。
「ちがっ……」
言いかけたものの途中で唇を噛み締め、綱吉は首を横に振った。
本当は、気持ちよかったのだ。どうにも我慢できないぐらい気持ちがよくて、獄寺にもっと触って欲しいと思ってしまった。体の奥まで突き入れて、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜて欲しい……そんなふうに思ってしまったのだ。
「違わないと思いますよ。だって十代目のココ、ヒクヒクしてますから」
そう言って獄寺は、綱吉の窄まった部分を指の腹で押し開くようにしてなぞった。
「や……っ、ぁ……」
ジワリと快感が押し寄せてきて、綱吉の体の中で激しく駆け回っている。
窄まりをクニクニと弄る獄寺の指に尻を押し付けるような格好をして、綱吉は啜り泣く。 「ダメ……ちゃんと、シテ……」
口走った言葉の意味を、頭の隅に残る微かな理性が理解している。ああ……と低く呻いて綱吉は、獄寺の腕の中でぐるんと体の向きを変えた。
パジャマを着たままの獄寺の胸に頬をすり寄せ、しがみついていく。それから手探りで獄寺のパジャマをまさぐると、夢中でボタンをひとつひとつ外していく。早く、獄寺の体温を、そしてにおいを直に感じたい。ボタンを外したパジャマを大きく左右に広げると綱吉は、獄寺の裸の胸に唇を寄せた。
チュ、と音を立てて肌を吸い上げる。白い肌には程良く筋肉がついており、今はほんのりとボディーソープのにおいがしているばかりだ。
「獄寺君……」
夢中で名前を呼ぶと、ぐい、と肩を押されてベッドに体が押し付けられた。のしかかってくる獄寺の体重を心地よく感じながら綱吉は、男の体に腕を回す。
「……抱いて、獄寺君」
躊躇いながら囁きかけると、獄寺の唇が恭しく綱吉の額に触れてくる。
「もちろんです、十代目」
低い声で返されて、綱吉はホッと安堵の息をついた。
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