ようやく手に入れたと、二十四歳の綱吉は口元に笑みを浮かべる。
  やっと、十四歳の獄寺を手に入れた。
  十四歳の綱吉は、二十四歳の獄寺に連れられて、部屋を出ていった。今、この部屋にいるのは自分と、十四歳の獄寺の二人だけだ。
  抱きしめた体はほっそりとして華奢な体格をしていた。
  もちろん、二十四歳の獄寺にしてもほっそりとしているが、あちらは成人した男の体格をしている。二十四歳の獄寺がどう頑張ってみたところで、若さでは十四歳の獄寺に勝てるわけがなかった。
  十四歳だからこそのしなやかさや初々しさ、青臭さ、成長期のアンバランスさを、目の前の獄寺は持っていた。
「……隼人」
  耳元に囁きかけると、若い体に微かな震えが走る。その様子が愛しくて、綱吉は獄寺を強く抱きしめる。
「声が聞きたいんだ、隼人。もっといい声で啼いてくれる？」
  弱々しく首を左右に振ると獄寺は、淡い緑色の瞳でを潤ませて、綱吉を見つめる。
「十代目……」
  掠れ気味の小さな声に、綱吉の背筋がゾクゾクとする。
  二十四歳の獄寺ではないのだと思うと、それだけで体の奥底がカッと熱くたかぶりだす。
  背後から抱きしめると、獄寺は腕の中から逃げ出そうとする。
  あまりにも弱々しい抵抗に、嬉しくなって綱吉は白い背中に舌を這わせた。



  最後まではしないと言った手前、あまり強引なことはできないと綱吉は思った。
  ベッドの上に四つん這いになった白い体は羞恥と快感に震えている。
  愛しい気持ちと、自分のものにしてしまいたい気持ちとがこみあげてくるのを感じて綱吉は、獄寺の白い肌になんどもくちづけた。
  この体を、自分のものにしてしまいたかった。
  もちろん、二十四歳の獄寺が自分の恋人だということは理解している。
  しかし、あちらの獄寺では駄目なのだ。彼に対して綱吉は、負い目を持っている。負い目のないまっさらな獄寺が欲しい。
  押し殺した息をなんども吐き出し自分を戒めようとしたが、できなかった。とうとう綱吉はサイドボードの引き出しへと手を伸ばした。
  引き出しの中に無造作に並ぶ玩具をいくつか手に取り、また元に戻した。最後に手にしたのは大小のパールが交互に並ぶ透明なディルドだった。色も形状もあっさりとしたシンプルな作りだが、十四歳の獄寺にはこれぐらいでちょうどいいだろうと思われた。
  四つん這いになった獄寺の尻の狭間に唇を押しつけ、舌で窄まりをくすぐった。
  すぐに襞が押し寄せてきて、綱吉の舌を体内へ飲み込もうと蠢き出す。
「すごいね、ここ」
  そう言って綱吉は、獄寺の太股の付け根にキスをした。
「ん、あ……」
  カクカクと揺らぐ体に、綱吉の吐く息が自然と荒くなっていく。
  さっき獄寺に使ったゼリーをディルドに塗りたくり、そっと窄まりの周囲をなぞってみる。
「あ、あ……」
  快感をやり過ごすことに集中しているからか、獄寺はまだ、ディルドの存在には気付いていないようだ。綱吉はペロリと自身の唇を舌で湿らせると、ゆっくりとディルドを窄まりの中心へと滑らせていく。



  クチュ、と音がして、獄寺が大きく喘いだ。
「や……あぁっ？」
  尻を綱吉のほうへ突き出すようにして、獄寺の上体が大きく揺れた。
  グチュグチュと音を立てながら、ディルドが飲み込まれていく。小刻みに揺らしたり、出したり抜いたりを繰り返しながら、少しずつ深くディルドを埋め込むようにする。獄寺の四肢がブルブルと震えているのは、異物感を感じているからだろうか。
「や……十代目、やめっ……」
  今にも泣き出しそうなみっともない声だったが、その声に綱吉の下腹が熱く疼いた。
「可愛い声だね、隼人」
  そう言うとゆっくりとディルドを中へ押し込む。
「や、入れ……十代目、しないって……ぅ、あ……」
  ゼリーに含まれる媚薬成分のおかげか、獄寺は痛みを感じていないようだ。それとも、元々こういうことに抵抗の少ない体質なのだろうか。
「挿れてないよ」
  と、綱吉は手にしたディルドをくい、と動かす。窄まりの隙間から中が見えそうなくらいにディルドを反らすと、獄寺も背をしならせて甘い声をあげる。
「可愛いね」
  チュ、と音を立てて獄寺の尻にキスをした。
  あいているほうの手を獄寺の前へ回すと、張り詰めたペニスが可哀想なほどの量の先走りを溢れさせていた。
「出せばいいのに、強情だな」
  呆れたように、しかし優しく呟いて、綱吉はまたディルドを奥へと押し込む。
  獄寺の華奢な体が大きくしなり、上体がベッドに沈み込んだ。
「やめ……」
  やめてくれと言いながらも獄寺の窄まりは、ディルドをくわえこんだまま離そうとしない。ズルリ、と引き抜こうとすると、ディルドを追いかけるかのように腰が突き出されてくる。
「でも、やめて欲しくないんだろ？」
  体は、もっと、もっとと欲しがっているはずだ。貪欲で、素直な体だと綱吉は思った。
  それになによりも、この体は若くて瑞々しい。
  もっといい声で啼いてくれるはずだと、綱吉は口元に柔らかな笑みを浮かべる。
  綱吉が時間をかけてゆっくりとディルドを引き抜いていくと、獄寺の口から細く甲高い悲鳴が洩れた。ペニスがビクビクと震え、それに合わせるかのように白い腹筋も小刻みに波打った。



「あ、ぅ……」
  綱吉は、獄寺が息を整える暇も与えなかった。
  ディルドから解放された獄寺がベッドに沈み込むと、すぐさまその体を背後から抱き起こす。腰が砕けてぐずぐずとへたりこんでしまいそうになるのを、自分の胸の中に寄りかからせた。
「気持ちよかったのに、イけなかった？」
  投げ出した白い足の間で、獄寺の若いペニスが揺らいでいた。竿の根本までべっとりと白濁した先走りに濡れて、百合の芯のような青臭いにおいがしている。
「じゅ…代目……」
  弱々しく身じろぐと獄寺は、綱吉から逃れようとする。
「こんなになっているのに、まだ十四歳の俺に操立て？」
  いい加減にやめればいいのにと綱吉は思う。自分も自分だ。いい歳をして、こんな子どもを抱こうだなんてどうかしている。そして強情を張る十四歳の獄寺も、さっさと降参して自分のものになってしまえばいいのにと思わずにいられない。
「強情だな」
  ポソリと綱吉は呟いた。
  たらたらと溢れる先走りを指の腹で掬い取ると、獄寺の目の前に持っていく。
「ほら、こんなになってるのに」
  そう言うと親指と人差指とをなすりつけてニチャニチャと音を立てる。指を離すと、先走りが粘っこい糸を引いていた。
「ほら、ね？」
  その指を綱吉は、獄寺の口元へと持っていく。
  顔を背けようとするの獄寺の態度が可愛らしくて、口にぐい、と指を突っ込んだ。舌の上を指でなぞり、先走りをなすりつける。
「ん、ぐっ……ぅ」
  苦かったのだろうか？　それとも、嫌だったのだろうか？
  うつむいた獄寺の顔を背後から覗き込むことは難しかった。
  綱吉はしばらく獄寺の口の中の感触を楽しんでから指を抜き取った。指の股にまで唾液が絡みつき、てのひらから手首へと、伝い落ちていく。
  てらてらと光る唾液の筋を、綱吉はペロリと舐め取った。
  甘い味がしているような気がした。



  最後まではしないと宣言したものの、これ以上は耐えられないと綱吉は思った。
  獄寺の膝の裏に手を差し込み、ぐい、と投げ出したままだった足を体のほうへと引き寄せた。足をＭ字に開かせたまま、腰を浮かせるように尻を持ち上げる。
「いい子だね、隼人」
  耳元に囁きかけると、くすぐったそうに獄寺は首を竦めた。
  約束を破ることになるなと思いながらも綱吉は、すぐにその考えを改めた。自分は、目の前にいるこの十四歳の獄寺を抱きたいと思っていた。当初の目的を果たすことができるのなら、本望だ。
「隼人……君が、欲しい──」
  肩口に唇を押しつけると綱吉は、媚薬のせいでほとんど抵抗する力の残っていない獄寺の体を抱きしめた。
  挿入の瞬間にも獄寺は、気付かなかった。
  いや、気付いていたのかもしれない。ただ、痛みは感じなかったようだ。押し込まれる異物に、獄寺の内壁はしっとりと縋りついてきた。きゅっと締め付け、綱吉を離そうとしない。
「すごいね。食いちぎられそうだ」
  根本までペニスを入れてしまうと、綱吉は溜息をついた。
  獄寺の白い下腹が、ふっくらと膨れている部分がある。綱吉の性器がそこに入っているのだ。
  ゆっくりと揺さぶってやると、獄寺は啜り泣いた。
  気持ちいいのだろうか？　それとも、嫌なのだろうか？　なにも言わないから、綱吉には獄寺の気持ちがわからない。
「いい？」
  耳元に尋ねかけるが、獄寺はただただ首を横に振るばかりだ。
  綱吉は、獄寺の腕を掴んだ。
「自分で動いてみて？」
  ゆっくりでいいよと綱吉が言うのに、獄寺は素直に従った。
  ゆるゆると遠慮がちに腰を揺らしながら、最初は綱吉の胸にもたれかかるようにしていた。そのうちに綱吉が下からの突き上げを少し加えてやると、獄寺の体は面白いように弾みだした。
  背を弓なりにして、一心不乱に腰を振っている。
  白い肌の上に汗の粒が浮き上がっては、こぼれ落ちていく。
  綺麗だと綱吉は思った。未成熟な獄寺の体の青臭さに、目眩がしそうだ。
  獄寺が腰を上下させるたびに、グチュ、グチュ、と湿った音が部屋に響く。途切れ途切れの喘ぎ声が初々しい。
「十代目……十、代目……」
  譫言のように獄寺が呟く。
  下から何度も突き上げてやると、獄寺はいっそう激しく腰を揺らした。
  締め付けが強くなり、綱吉の腹の底では煮えたぎる熱が解放される瞬間を目がけて体の一点に集まってきている。
  最後にひときわ大きく突き上げると綱吉は、獄寺の体をぎゅっと抱きしめた。
「隼人…──！」
  そのまま、獄寺を腕の中に閉じこめたまま、ぐいぐいと体を突き上げる。
「あ、ああぁ……！」
  首を大きく左右に振りながらも獄寺は、綱吉の迸りを体の奥に受け止めた。